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Ken Gilleo氏
米ET Trends社CEO
[2007年04月号]
* * * *
Semiconductor International(以下SI):ご自身を未来派と表現されている。Arthur C. Clarke氏はかつて「将来は思い描いていたものとは違う」と言っているが、ご自身の予想についてどう思うか?
Gilleo:自分が関わっている業界にとらわれるだけではなく、先見の明が必要だ。今では積層パッケージングとその未来について語られている。2001年を振り返ると、私は「No Place to Go But Up(積層以外に道はない)」というタイトルの論文を書いた。当時は、これがフットプリントの面からSiが制限を受けたときの高密度化の方法だと気付くほど、想像をはたらかせていたわけではない。興味深いのは、プリント回路であれその他の構造であれ、実現が難しい垂直メタル配線を推進する必要性について私が考察していたことだ。今では米Intel社と米IBM社がSiフォトニクスの分野で多くのブレークスルーを達成したので、10年以内に、レーザーでの積層貫通ビアを心配しなくてもすむようになるのではと想像できる。
SI:半導体ナノテクの取り組みをどう見ているか?
Gilleo:ナノテクの考えは今のところよいと思う。しかし、多くの学者が大げさに騒ぎ立ててきたため、真のナノテクとは何かについて一般的な困惑がある。今日の半導体はナノスケールだが、私にとってそれはナノテクではない。カーボンナノチューブ(CNT)を利用し始め、量子効果など全く異なる現象が起き始めたら、それはナノテクの領域になるだろう。
SI:半導体業界がナノ分野でやっていないことは何かあるか?
Gilleo:これまでも現在もかなりのリソースがつぎこまれており、研究者はブレークスルーを達成している。しかし、時にはいつもより正直に言うのもいいだろう。現在行われていることの多くは、実のところ、ナノテクの傘の下の化学初級編だ。化学者は何世代もナノの世界で研究をしてきたので、何がナノで何がそうでないのか理解できる。しかし、私は、ナノテク領域への再設備投資費を無駄にせず、トランジスタではなく配線の手ごわい問題を本当に解決し始めるようなCNTトランジスタやその他のシステムを採用したすばらしい取り組みを期待したい。
SI:取り組みの多くの部分が方法の開発ではなくCMOSの延命を図る方向に向かったのが問題か?
Gilleo:物事を限界まで追求するのは賢明なことだ。昔のディスクドライブ業界を思い出す。当時、将来の記憶密度増大のために何らかの代替物が必要だと考えられていたが、実際は、高密度化が現実のものとなりディスクドライブも未だ存在する。そして同じことがSiにもいえるのだ。障害があるたびに液浸リソグラフィや新規材料のような新しい方法を誰かが見つける。
SI:しかし基本的限界に達しようとしている。
Gilleo:そうだ。それはおそらく10~15年先だろう。また、Si以外の何かに移行することによって、今日の我々が実現できるものよりも格段に向上した性能を手にすることができるのも明らかだ。しかし、私はそれをナノテクではなく、何か「分子エレクトロニクス」的なものと呼ぶ。
SI:どんなものでもそれが何と呼ばれようと実体は変わらない?
Gilleo:(笑いながら)その通り。しかし、ナノチューブはただの有機分子で、多くの炭素の形の一つにすぎない。今後、何かSiに勝ることをしていかなければならないだろう。私はこれを「ノン・シリコン・エレクトロニクス」と呼びたい。
SI:ナノチューブでブレークスルーが達成されてきた。
Gilleo:確かにそうだ。IBMグループ、大学、その他の研究者は、CNTによってトランジスタになりうる優れた半導体が作れることを証明した。しかし、これが最終版になるのか、もっとよい構造があるのかはまだ分かっていない。
SI:ナノテクは将来性があるが、量子効果に対処しながら、基本的な障害にぶち当たってしまうかもしれない。
Gilleo:その通りだ。もっとよく分かってくるにつれて、それら基本的な障害のいくつかは、Siのときの障害ほど深刻なものではないと気付くだろう。例えば、ナノチューブでは、これまでになく高密度化になったときに熱はそれほど大きな問題ではなくなると予想される。また、従来のパッケージングで大きな問題といえば腐食だった。配線にメタルが組み込まれており、多くのことがうまくいかなくなる可能性がある。パッケージングの目的の一つは化学反応が起きるのを防ぐことだ。CNTあるいは分子エレクトロニクスと考えられる構造においては、こうした湿度に対する問題が生じないだろう。
SI:トレンドとして見ているのは分子エレクトロニクスだけか?
Gilleo:確かに重要なものの一つだ。しかし、シリコンバレーやその他半導体の現場では、Siの問題を解決すべく相当な努力が払われていると思う。32nmノード以降で起こると予想されているものの中には、回避策が出てくるものがあるかもしれない。20年後も、我々はSiを使い続けてうまくやっているかもしれない。
SI:それでも、限界はある。
Gilleo:そうだ。ただ、また昔のディスクドライブの例を用いると、当時は光学式記憶装置が磁気のものすべてに取って代わり、磁気記憶装置技術の限界にぶち当たっていると思われていた。しかし、突然、IBMが磁気抵抗現象に基づく根本的なブレークスルーを達成し、その後、Seagate社が垂直記録に取り組み始めた。この業界は、かつて絶対的限界と思われていたところより2桁ほど大きい記憶高密度を成し遂げた。私は、ある程度、同じことがSiにも起きるだろうと信じている。「破壊的な」技術や科学が登場するまでそれは分からない。
SI:小から大への移行といえば、450mmウェーハの問題をどう見るか?
Gilleo:それが今後起きるとは思わないし、すぐ起きる必要もないと思う。1社(あるいは1国)のみが新しいファブを建設することは可能かもしれない。MEMSの研究をやっているところを見てみると、4インチや6インチウェーハで十分満足しているし、しばらくは大きいサイズに移る必要はない。逆に古いファブを使うことができる。もし、大きいサイズに移行すれば、コスト効率が下がる可能性もあり、経済モデルは崩壊するかもしれない。一度大型化へと突き進むと、それはすべてに影響することになり、現在のコストレベルはこの種の拡大が極めて難しい局面にある。
SI:では物事は大から小への流れになるのか?
Gilleo:そうではない。しかし、小さいウェーハサイズが存続することは可能であると思う。例えば、小規模ビールメーカーや鉄鋼所も適切な規模を維持しながらうまくいっている。GaNを使っているところに300mmウェーハは必要ないし、小サイズで効率的に生産できる多くの興味深いデバイスがある。Siは現在のままで存在し続け、うまくやっていける可能性がある。我々にはどのサイズの分子エレクトロニクスが必要になるか分からない。ウェーハ自体が時代遅れになる可能性もある。
SI:オフショアリング(海外への外注)は悪影響をもたらしていると思うか?
Gilleo:オフショアリングは研究開発を変えた。今は設計者と製造者がつながっていない。我々はいくつかのケースで、オフショアリングでの研究開発を選んだ。しかし、海外にも優れた人材はいるが、我々とは考え方ややり方が違うし、経験の少ない人も多い。中国が一例だ。中国で研究開発を行うとすると、現地では誰に頼るのか?困ったときに誰が助けてくれるのか?この業界で20年の経験を有する人がいるのか?答えはノーだ。国内では上級エンジニアが賄えない。いつかはそんな状況も変わるだろう。しかし、今は知識や教育が相当不足しているのが現状だ。これは非効率であり、分かりきったことをやり直すことにつながる。加えて、中国社会は我々の社会ほど開放的でなく、イノベーションに慣れていない。米国では私のような古株がいて20年前はどうだったかと尋ねることができる。古いことは必ずしも「時代遅れの技術」ではない。プリント回路、CRT、無線などは全て1世紀前からある技術だ。
SI:他に懸念は?
Gilleo:物事がますます速いペースで起きているということだけだ。時には、このことによって開発が混乱しているように見えるが、それは正しくないかもしれない。これからも開発スピードは落ちないだろうし、まばたきの間ほども立ち止まれば敗者となるだろう。我々は物事の流れについていき敏感であり続けなければならない。
(聞き手:Alexander E. Braun)
Gilleo:自分が関わっている業界にとらわれるだけではなく、先見の明が必要だ。今では積層パッケージングとその未来について語られている。2001年を振り返ると、私は「No Place to Go But Up(積層以外に道はない)」というタイトルの論文を書いた。当時は、これがフットプリントの面からSiが制限を受けたときの高密度化の方法だと気付くほど、想像をはたらかせていたわけではない。興味深いのは、プリント回路であれその他の構造であれ、実現が難しい垂直メタル配線を推進する必要性について私が考察していたことだ。今では米Intel社と米IBM社がSiフォトニクスの分野で多くのブレークスルーを達成したので、10年以内に、レーザーでの積層貫通ビアを心配しなくてもすむようになるのではと想像できる。
SI:半導体ナノテクの取り組みをどう見ているか?
Gilleo:ナノテクの考えは今のところよいと思う。しかし、多くの学者が大げさに騒ぎ立ててきたため、真のナノテクとは何かについて一般的な困惑がある。今日の半導体はナノスケールだが、私にとってそれはナノテクではない。カーボンナノチューブ(CNT)を利用し始め、量子効果など全く異なる現象が起き始めたら、それはナノテクの領域になるだろう。
SI:半導体業界がナノ分野でやっていないことは何かあるか?
Gilleo:これまでも現在もかなりのリソースがつぎこまれており、研究者はブレークスルーを達成している。しかし、時にはいつもより正直に言うのもいいだろう。現在行われていることの多くは、実のところ、ナノテクの傘の下の化学初級編だ。化学者は何世代もナノの世界で研究をしてきたので、何がナノで何がそうでないのか理解できる。しかし、私は、ナノテク領域への再設備投資費を無駄にせず、トランジスタではなく配線の手ごわい問題を本当に解決し始めるようなCNTトランジスタやその他のシステムを採用したすばらしい取り組みを期待したい。
SI:取り組みの多くの部分が方法の開発ではなくCMOSの延命を図る方向に向かったのが問題か?
Gilleo:物事を限界まで追求するのは賢明なことだ。昔のディスクドライブ業界を思い出す。当時、将来の記憶密度増大のために何らかの代替物が必要だと考えられていたが、実際は、高密度化が現実のものとなりディスクドライブも未だ存在する。そして同じことがSiにもいえるのだ。障害があるたびに液浸リソグラフィや新規材料のような新しい方法を誰かが見つける。
SI:しかし基本的限界に達しようとしている。
Gilleo:そうだ。それはおそらく10~15年先だろう。また、Si以外の何かに移行することによって、今日の我々が実現できるものよりも格段に向上した性能を手にすることができるのも明らかだ。しかし、私はそれをナノテクではなく、何か「分子エレクトロニクス」的なものと呼ぶ。
SI:どんなものでもそれが何と呼ばれようと実体は変わらない?
Gilleo:(笑いながら)その通り。しかし、ナノチューブはただの有機分子で、多くの炭素の形の一つにすぎない。今後、何かSiに勝ることをしていかなければならないだろう。私はこれを「ノン・シリコン・エレクトロニクス」と呼びたい。
SI:ナノチューブでブレークスルーが達成されてきた。
Gilleo:確かにそうだ。IBMグループ、大学、その他の研究者は、CNTによってトランジスタになりうる優れた半導体が作れることを証明した。しかし、これが最終版になるのか、もっとよい構造があるのかはまだ分かっていない。
SI:ナノテクは将来性があるが、量子効果に対処しながら、基本的な障害にぶち当たってしまうかもしれない。
Gilleo:その通りだ。もっとよく分かってくるにつれて、それら基本的な障害のいくつかは、Siのときの障害ほど深刻なものではないと気付くだろう。例えば、ナノチューブでは、これまでになく高密度化になったときに熱はそれほど大きな問題ではなくなると予想される。また、従来のパッケージングで大きな問題といえば腐食だった。配線にメタルが組み込まれており、多くのことがうまくいかなくなる可能性がある。パッケージングの目的の一つは化学反応が起きるのを防ぐことだ。CNTあるいは分子エレクトロニクスと考えられる構造においては、こうした湿度に対する問題が生じないだろう。
SI:トレンドとして見ているのは分子エレクトロニクスだけか?
Gilleo:確かに重要なものの一つだ。しかし、シリコンバレーやその他半導体の現場では、Siの問題を解決すべく相当な努力が払われていると思う。32nmノード以降で起こると予想されているものの中には、回避策が出てくるものがあるかもしれない。20年後も、我々はSiを使い続けてうまくやっているかもしれない。
SI:それでも、限界はある。
Gilleo:そうだ。ただ、また昔のディスクドライブの例を用いると、当時は光学式記憶装置が磁気のものすべてに取って代わり、磁気記憶装置技術の限界にぶち当たっていると思われていた。しかし、突然、IBMが磁気抵抗現象に基づく根本的なブレークスルーを達成し、その後、Seagate社が垂直記録に取り組み始めた。この業界は、かつて絶対的限界と思われていたところより2桁ほど大きい記憶高密度を成し遂げた。私は、ある程度、同じことがSiにも起きるだろうと信じている。「破壊的な」技術や科学が登場するまでそれは分からない。
SI:小から大への移行といえば、450mmウェーハの問題をどう見るか?
Gilleo:それが今後起きるとは思わないし、すぐ起きる必要もないと思う。1社(あるいは1国)のみが新しいファブを建設することは可能かもしれない。MEMSの研究をやっているところを見てみると、4インチや6インチウェーハで十分満足しているし、しばらくは大きいサイズに移る必要はない。逆に古いファブを使うことができる。もし、大きいサイズに移行すれば、コスト効率が下がる可能性もあり、経済モデルは崩壊するかもしれない。一度大型化へと突き進むと、それはすべてに影響することになり、現在のコストレベルはこの種の拡大が極めて難しい局面にある。
SI:では物事は大から小への流れになるのか?
Gilleo:そうではない。しかし、小さいウェーハサイズが存続することは可能であると思う。例えば、小規模ビールメーカーや鉄鋼所も適切な規模を維持しながらうまくいっている。GaNを使っているところに300mmウェーハは必要ないし、小サイズで効率的に生産できる多くの興味深いデバイスがある。Siは現在のままで存在し続け、うまくやっていける可能性がある。我々にはどのサイズの分子エレクトロニクスが必要になるか分からない。ウェーハ自体が時代遅れになる可能性もある。
SI:オフショアリング(海外への外注)は悪影響をもたらしていると思うか?
Gilleo:オフショアリングは研究開発を変えた。今は設計者と製造者がつながっていない。我々はいくつかのケースで、オフショアリングでの研究開発を選んだ。しかし、海外にも優れた人材はいるが、我々とは考え方ややり方が違うし、経験の少ない人も多い。中国が一例だ。中国で研究開発を行うとすると、現地では誰に頼るのか?困ったときに誰が助けてくれるのか?この業界で20年の経験を有する人がいるのか?答えはノーだ。国内では上級エンジニアが賄えない。いつかはそんな状況も変わるだろう。しかし、今は知識や教育が相当不足しているのが現状だ。これは非効率であり、分かりきったことをやり直すことにつながる。加えて、中国社会は我々の社会ほど開放的でなく、イノベーションに慣れていない。米国では私のような古株がいて20年前はどうだったかと尋ねることができる。古いことは必ずしも「時代遅れの技術」ではない。プリント回路、CRT、無線などは全て1世紀前からある技術だ。
SI:他に懸念は?
Gilleo:物事がますます速いペースで起きているということだけだ。時には、このことによって開発が混乱しているように見えるが、それは正しくないかもしれない。これからも開発スピードは落ちないだろうし、まばたきの間ほども立ち止まれば敗者となるだろう。我々は物事の流れについていき敏感であり続けなければならない。
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