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Special Interview
川西 剛 氏
TEK コンサルティング 代表
[2007年04月号]
* * * *
Semiconductor International日本版(SIJ):今年もファインテックが開催される。
川西剛:今年のファインテック・ジャパンで注目すべきは、スーパーハイビジョンに関する日本放送協会(NHK)放送技術研究所 所長谷岡 健吉氏の講演だ。同氏は、「スーパーハイビジョン~究極の高臨場感TV放送システムの実現を目指して~」と題し基調講演を行う。スーパーハイビジョンTVが普及するのは、それこそ来るべき東京オリンピック(2016年招致を計画)の頃の先の話。しかし、そういう技術が日本に、そしてNHKにあるということが重要だ。スーパーハイビジョンは夢だ。これが本当に実現すれば、また再びFPD産業が盛り上がる。その頃にはSEDも市場にでてくるかもしれない。放送から変えると、それを受けるディスプレイ、そして撮るカメラも変わらなければいけない。ファインテックのような場所は、10年後の夢も語り合える場にしたい。
SIJ:そこまでの映像技術が民生製品に必要になるのか?
川西:今のハイビジョンTVも同様のアイデアであった。しかし、一度ハイビジョンの映像を見てしまうともう後戻りできない。
SIJ:日本の技術は世界標準になれない場合もあった。
川西:スーパーハイビジョンなど、次世代の技術はまだどこも手を付けてない。そして、どこにもできない。
SIJ:スーパーハイビジョンが次世代の標準規格になる?
川西:デファクトスタンダードとなる。NHKが技術で先行している。
SIJ:足下のFPD市場は?
川西:大型FPD TVは日本メーカーが強い。台湾・韓国メーカーは利益を出すのに苦慮しているのではないか。大型FPD TVは、TVとのマッチングで日本企業が勝っている。ただし、携帯電話の液晶ディスプレイ(LCD)や20型までのTVなどの市場は大変厳しい。
SIJ:有機ELディスプレイ(OLED)の動向は?
川西:材料が見つかれば成功できる。あとは寿命の問題が残されている。仮に完成したとしても今のLCDの勢いに勝てるだろうか。これはSEDも同様だ。いかに市場にマッチングするかが鍵を握る。同様にして私はプラズマディスプレイ(PDP) TVにも悲観的だ。量販店では50型LCD TVがずらっと並んでいる。50型以上は日本の居間には置けないであろう。
SIJ:ではPDP TVは難しい。
川西:PDPはTVだけ。TVとして売るしか方法はない。TVをつくっているメーカーが有利だ。これができるのは現状、松下電器産業だけであろう。そうすると競争相手がいない。競争のおかげで産業は伸びる。LCDが良い例だ。ただし、大型TVの競争は終わった。1つ目の理由はマザーガラス基板だ。第8世代基板を採用した工場ができるのはシャープだけではないか。次に画質が問われる時代となった。安い液晶と安いチューナで良いTVが出来るわけではない。画像処理技術が重要な付加価値となる。LCD TVでは、TVのセットメーカーの力が問われる。
SIJ:一方で半導体産業では日本メーカーの衰微が指摘されている。
川西:日本の半導体が弱くなったといちがいに考えてはいけない。NECは日本の半導体の雄であった。しかし、マネージメントに失敗し没落した。日立製作所も同様だ。ルネサス テクノロジはキラー製品を有していない。市場とマッチングした製品があるかが重要だ。さらに、強烈なリーダーシップ、信念があれば日本のSoCメーカー連合という強くなるための業界再編も可能だ。
SIJ:米Intel社のプロセッサ、韓国Samsung Electronics社のメモリーに対して、日本の半導体メーカーは世界に遅れをとっている。
川西:例えばSamsungは日本市場に対して5500億円の半導体およびLCDを販売しているが、一方で日本からは材料・設備で1兆円以上の製品がSamsungに対して輸出されている。Samsungのおかげで日本の設備・材料は伸びているともいえよう。日本だけで考えるのはバランスが悪い。日本だけが栄えるというシナリオはない。補完関係で世界市場は成り立っている。
SIJ:市場で勝つ秘訣は?
川西:市場で勝てる製品、そしてキラープロダクトがあるかどうかだ。例えばIntelはマイクロプロセッサがあったから成功した。そしてSamsungはDRAM。東芝の場合はNAND型フラッシュメモリーだ。キラープロダクトを持つことが重要だ。
SIJ:どうやって、キラープロダクトを得るのか。
川西:これらの製品は、苦労して製品化にこぎ着け、その後実を結ぶ。NAND型フラッシュメモリーは、当初はHDDの置き換えを狙い、失敗している。18年前に携帯型音楽プレイヤーやカメラ付き携帯電話を誰が予測できたか。今では携帯機器に大容量のNAND型フラッシュメモリーが搭載される。
SIJ:今どうするべきなのか?
川西:今から10年後のことを考えなければいけない。但し、失敗例もある。東芝、IBM、ソニーのプロセッサ「CELL」プロジェクトがそれだ。5年間、多くの人材を投与し、ゲーム機「PLAYSTATION 3」を目標に製品化を進めた。Intelのプロセッサよりはるかに性能が良いプロセッサができた。しかし、このゲーム機はコストを度外視し売らざるを得なくなっている。市場がそのような高い性能を求めてはいなかった。
SIJ:日本企業に求められているのは?
川西:「ビジネスモデル」。一番良い例が半導体ファウンドリ台湾TSMC社であろう。その他で言えば、例えばプリンターとそのインクのビジネス、これもビジネスモデルがうまく機能している。これは技術というより、考え方なのであろう。次にリーダーだ。エルピーダ社長の坂本氏を見ていると思う。リーダーは大事だ。そして、グローバルな考え方。日本は技術立国であるとともに、輸出立国でもある。
SIJ:今日本の半導体メーカーがやるべきことは?
川西:イノベーションに比重を戻すことだ。大事なのは技術、売れる技術の創出だ。そして、例えばNAND型フラッシュメモリーもあと10年ぐらいで市場は一段落する。それまでに今から10年後以降の「何か」を見つけなければいけない。
SIJ:半導体・FPD製造技術のイノベーションとして、例えばマザーガラスの大型化やウェーハの大口径化が検討されている。
川西:マザーガラスやウェーハの大型化はもう終わり。第8世代ガラス基板、300mmウェーハ以上の大型化は実現しない。製造ラインで考えれば、むしろ枚葉製造の方向に進む。
SIJ:注目している技術は?
川西:メモリーもディスプレイもイノベーションが止まってしまいそうな状況だ。新しいメモリー技術や新しいディスプレイ技術に注目している。
また、家庭におけるマルチメディアも注目される。さまざまな製品や技術の「組み合わせ」が進んでいる。組み合わせや応用の時代が今年ぐらいからやっと本格的に始まる。2010年までは組み合わせ応用、「コンバージェンス」の時代だ。これにより半導体・FPDが発展していく。
(聞き手:高橋 潤)
川西剛:今年のファインテック・ジャパンで注目すべきは、スーパーハイビジョンに関する日本放送協会(NHK)放送技術研究所 所長谷岡 健吉氏の講演だ。同氏は、「スーパーハイビジョン~究極の高臨場感TV放送システムの実現を目指して~」と題し基調講演を行う。スーパーハイビジョンTVが普及するのは、それこそ来るべき東京オリンピック(2016年招致を計画)の頃の先の話。しかし、そういう技術が日本に、そしてNHKにあるということが重要だ。スーパーハイビジョンは夢だ。これが本当に実現すれば、また再びFPD産業が盛り上がる。その頃にはSEDも市場にでてくるかもしれない。放送から変えると、それを受けるディスプレイ、そして撮るカメラも変わらなければいけない。ファインテックのような場所は、10年後の夢も語り合える場にしたい。
SIJ:そこまでの映像技術が民生製品に必要になるのか?
川西:今のハイビジョンTVも同様のアイデアであった。しかし、一度ハイビジョンの映像を見てしまうともう後戻りできない。
SIJ:日本の技術は世界標準になれない場合もあった。
川西:スーパーハイビジョンなど、次世代の技術はまだどこも手を付けてない。そして、どこにもできない。
SIJ:スーパーハイビジョンが次世代の標準規格になる?
川西:デファクトスタンダードとなる。NHKが技術で先行している。
SIJ:足下のFPD市場は?
川西:大型FPD TVは日本メーカーが強い。台湾・韓国メーカーは利益を出すのに苦慮しているのではないか。大型FPD TVは、TVとのマッチングで日本企業が勝っている。ただし、携帯電話の液晶ディスプレイ(LCD)や20型までのTVなどの市場は大変厳しい。
SIJ:有機ELディスプレイ(OLED)の動向は?
川西:材料が見つかれば成功できる。あとは寿命の問題が残されている。仮に完成したとしても今のLCDの勢いに勝てるだろうか。これはSEDも同様だ。いかに市場にマッチングするかが鍵を握る。同様にして私はプラズマディスプレイ(PDP) TVにも悲観的だ。量販店では50型LCD TVがずらっと並んでいる。50型以上は日本の居間には置けないであろう。
SIJ:ではPDP TVは難しい。
川西:PDPはTVだけ。TVとして売るしか方法はない。TVをつくっているメーカーが有利だ。これができるのは現状、松下電器産業だけであろう。そうすると競争相手がいない。競争のおかげで産業は伸びる。LCDが良い例だ。ただし、大型TVの競争は終わった。1つ目の理由はマザーガラス基板だ。第8世代基板を採用した工場ができるのはシャープだけではないか。次に画質が問われる時代となった。安い液晶と安いチューナで良いTVが出来るわけではない。画像処理技術が重要な付加価値となる。LCD TVでは、TVのセットメーカーの力が問われる。
SIJ:一方で半導体産業では日本メーカーの衰微が指摘されている。
川西:日本の半導体が弱くなったといちがいに考えてはいけない。NECは日本の半導体の雄であった。しかし、マネージメントに失敗し没落した。日立製作所も同様だ。ルネサス テクノロジはキラー製品を有していない。市場とマッチングした製品があるかが重要だ。さらに、強烈なリーダーシップ、信念があれば日本のSoCメーカー連合という強くなるための業界再編も可能だ。
SIJ:米Intel社のプロセッサ、韓国Samsung Electronics社のメモリーに対して、日本の半導体メーカーは世界に遅れをとっている。
川西:例えばSamsungは日本市場に対して5500億円の半導体およびLCDを販売しているが、一方で日本からは材料・設備で1兆円以上の製品がSamsungに対して輸出されている。Samsungのおかげで日本の設備・材料は伸びているともいえよう。日本だけで考えるのはバランスが悪い。日本だけが栄えるというシナリオはない。補完関係で世界市場は成り立っている。
SIJ:市場で勝つ秘訣は?
川西:市場で勝てる製品、そしてキラープロダクトがあるかどうかだ。例えばIntelはマイクロプロセッサがあったから成功した。そしてSamsungはDRAM。東芝の場合はNAND型フラッシュメモリーだ。キラープロダクトを持つことが重要だ。
SIJ:どうやって、キラープロダクトを得るのか。
川西:これらの製品は、苦労して製品化にこぎ着け、その後実を結ぶ。NAND型フラッシュメモリーは、当初はHDDの置き換えを狙い、失敗している。18年前に携帯型音楽プレイヤーやカメラ付き携帯電話を誰が予測できたか。今では携帯機器に大容量のNAND型フラッシュメモリーが搭載される。
SIJ:今どうするべきなのか?
川西:今から10年後のことを考えなければいけない。但し、失敗例もある。東芝、IBM、ソニーのプロセッサ「CELL」プロジェクトがそれだ。5年間、多くの人材を投与し、ゲーム機「PLAYSTATION 3」を目標に製品化を進めた。Intelのプロセッサよりはるかに性能が良いプロセッサができた。しかし、このゲーム機はコストを度外視し売らざるを得なくなっている。市場がそのような高い性能を求めてはいなかった。
SIJ:日本企業に求められているのは?
川西:「ビジネスモデル」。一番良い例が半導体ファウンドリ台湾TSMC社であろう。その他で言えば、例えばプリンターとそのインクのビジネス、これもビジネスモデルがうまく機能している。これは技術というより、考え方なのであろう。次にリーダーだ。エルピーダ社長の坂本氏を見ていると思う。リーダーは大事だ。そして、グローバルな考え方。日本は技術立国であるとともに、輸出立国でもある。
SIJ:今日本の半導体メーカーがやるべきことは?
川西:イノベーションに比重を戻すことだ。大事なのは技術、売れる技術の創出だ。そして、例えばNAND型フラッシュメモリーもあと10年ぐらいで市場は一段落する。それまでに今から10年後以降の「何か」を見つけなければいけない。
SIJ:半導体・FPD製造技術のイノベーションとして、例えばマザーガラスの大型化やウェーハの大口径化が検討されている。
川西:マザーガラスやウェーハの大型化はもう終わり。第8世代ガラス基板、300mmウェーハ以上の大型化は実現しない。製造ラインで考えれば、むしろ枚葉製造の方向に進む。
SIJ:注目している技術は?
川西:メモリーもディスプレイもイノベーションが止まってしまいそうな状況だ。新しいメモリー技術や新しいディスプレイ技術に注目している。
また、家庭におけるマルチメディアも注目される。さまざまな製品や技術の「組み合わせ」が進んでいる。組み合わせや応用の時代が今年ぐらいからやっと本格的に始まる。2010年までは組み合わせ応用、「コンバージェンス」の時代だ。これにより半導体・FPDが発展していく。
(聞き手:高橋 潤)
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