FPD Technology Watch

FPD Market Trend

2007年のFPD市場を展望する
-FPD産業の動向は、2006年同様フラットTVに注目-

李 根秀
アイサプライ・ジャパン
主席アナリスト
www.isuppli.co.jp

[2007年04月号]

フラットパネルディスプレイ(FPD)業界では、主役がPCから家電へと移りつつあり、2007年からさまざまな変化が起こるだろう。活躍の場が家電へと移ることは、大型化と画質向上によってアプリケーションと産業の規模拡大へと繋がる。2007年はこうした期待が実際に市場で確認されるだろう。しかし、ダイナミックな市場の動向とは裏腹に、各国、各メーカーのシェアは混迷の様相を示しており、予断を許さない状況が続いている。特に、家電王国、日本のメーカーは神通力を失い、海外メーカーの台頭に頭を悩ませる状況となっている。ここでは、今後のFPDとフラット TV市場の行方を占うとともに産業で起きている変化を分析する。


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DGレシオから占う2007年のデジタル家電景気

 1月のDGレシオ・受注・販売(図1)はそれぞれ1.10(12月1.10)、1.35(12月1.41)、1.37(12月1.42)となった。DGレシオは12月の1.10(1.10速報値)から横ばいとなった。セットの在庫調整は進んでおり、2月の受注環境には一部で改善の兆しがみえてきた。こうした状況から、1月から2月が、エレクトロニクス景気の大底になる可能性が出てきた。DGレシオがフラットになったことで、「底打ち」との期待が膨らむ。今後は4月以降に緩やかな回復が期待される。しかし、日系企業からのコメントは依然として悲観的なものが多く、海外との温度差があるようにみえる。


図1 「DGレシオ」は「DATA GARAGEレシオ」の略称で、BBレシオ同様、ハイテク市況の先行指標となる受注/出荷レシオを調査、算出し、市況の変化と近未来のハイテク景気を予想する指標。データは毎月、世界の大手 半導体/電子部品/製造装置材料 メーカー 35社以上から聞き取り調査により集計される。DGレシオは、現在、世界の半導体市場の40%以上をカバーする


フラットTV市場を牽引する五輪とデジタル放送の状況

 予測シナリオを考えると、デジタル家電市場に大きな影響を与えるドライバは、オリンピックやワールドカップなどの世界的イベントである。特に北京五輪は大きなイベントとして注目され、フラットTV、DVDレコーダなどの新規商品の需要が旺盛となることが期待される。

 こうしたイベントをサポートするため、また通信との融合やサービスの向上を目指して放送は世界的にデジタルフォーマットに向かって進んでいる。そして、このような大きな波がTVの新規需要を強力に推進するエンジンとなる。将来のTV市場を予測する場合、デジタル放送の計画や普及のシナリオに依存する割合が大きくなっており、こうした分析をしっかりと行なうことが必要である。

 その為、まず先進国のデジタル放送の概要について国別にまとめ、内容を動向の予測に反映した。

 米国でのデジタル放送の行方は、「Powell Plan」にかかってきた。米FCC(連邦通信委員会)は「Powell Plan」(テレビ受信機にデジタルチューナの内蔵を強制するスケジュール)を前倒しすることを決定した。オリジナルのスケジュールは3段階あって、まず、第1段階として2005年7月1日までに25~36型のテレビの50%以上(出荷ベース)デジタルチューナを内蔵させ、第2段階として今年(2006年)7月1日までに25~36型テレビの装着率を100%に、また、最終段階として2007年7月1日には全ての13型以上のテレビにデジタルチューナ内蔵が義務付けられた(表1)。

 家電王国、日本のデジタル放送は1996年のCSデジタル放送の開始から始まり、2000年12月からBSデジタル放送が、2002年春には110度CSデジタル放送が始まった。そして、2003年末からは地上デジタル放送が開始となった。また、2006年4月には、携帯・移動体向けの1セグメント部分受信サービス「ワンセグ」が開始された。地上アナログ放送終了は当初の予定より1年先送りされたが、総務省の情報通信審議会・情報通信政策部会は,2011年に地上アナログ放送を円滑に終了させるためにIPインフラや衛星など,あらゆる伝送路を活用して地上デジタル放送の普及を図る方針を打ち出している(表2)。

 欧州では現在、イギリス、フランス、イタリアなど、9カ国で地上デジタルテレビ放送を実施している。デジタル放送の普及スピードは日米より遅れているが、多チャンネルテレビ放送が中心的なサービスで、地上放送でも複数のチャンネルをパッケージにした有料放送や、イタリアのようにPPV(ペイパービュー)方式による独自なサービスが目立つ。これに限らず、欧州では先進的でユーザオリエンテッドのパイロット実験やサービス計画が多く存在している。また、地上デジタルテレビ放送が本格的に開始されたフランスでは、ヨーロッパで初めて地上放送にHDTVを導入しており、内容的には日米に引けを取らない(表3)。


表1 米国
(出典:データガレージ)
 

表2 日本
(出典:データガレージ)
 

表3 欧州
(出典:データガレージ)


フラット TV市場を展望する

図2 世界のテレビ需要予測
(出典:isuppli)
 

図3 世界のLCD TV需要予測
(出典:isuppli)
 

図4 世界のLCD TV予測(台数、単価、金額)
(出典:isuppli)
 

図5 世界のPDP TV需要予測
(出典:isuppli)
 

図6 世界のPDP TV予測 (台数、単価、金額)
(出典:isuppli)

 アイサプライでは、価格はともかく、強い成長を続けるBRICsとデジタル放送の影響が先進国で出始めるために、世界のTV出荷台数は2008年までは強い調子で成長が続くと予想している。しかし、その内部は、フラットTVが強い成長を示し、CRTはその反動もあり出荷が落ち込んでいくという劇的な変化が起こるだろう(図2)。

 今後のフラット TV市場を牽引するのはLCD TVであることは図から明らかであるが、地域別には、欧州と中国とアジア他でのTV需要が伸びると予想した。特にこれまでにはなかった中国他などのBRICsの市場が大きくなることは、北京五輪・南アフリカのワールドカップなど、民生機器市場をドライブしてきたイベントが新興国で開催されることを勘案すると、可能性が高いと思われる。

 アイサプライでは2006年のLCD TVの市場は約4000万台に達したとみている。2007年以降も成長のペースは衰えず、6000万台を突破、2009年には1億台を突破すると予想している(図3図4)。

 ただし、単価に関しては若干悲観的である。2006年は誰もが予想できなかった大きな単価下落が発生したが、今後も下げ止まりななく、平均では、2010年に$700まで下落すると予想される。そして、金額が台数と比例して伸びるのは2007年までで、その後は台数に大きく水を開けられると考えられる。

 一方、PDP TVもLCD TVと共に有力なFPD TV候補のひとつで、LCD TVとの技術的相違は放電を利用した自己発光型という点である。PDP TVの歴史は1970年代まで遡り、世界中の家電メーカーがCRT TVの代替と目論み開発に参加してきた。その理由は、PDP TVがCRT TVと同じ自己発行という点で、残像が出ないなど動画性能には優れ、視野角も広く取れる点にほかならない。現在はLCD TVがFPD TVの主流となっているが、数年前までPDP TVの優勢が続いていた。LCD TVの性能向上によりPDP TVの主戦場は40型以上の大型リビングTVに移っていったが、PDP TVの輝度は他方式に比べて高く、大型リビングTV市場ではユーザの好評を得ている。PDP TVもまたインチ1万円を実現しハイエンドユーザーを中心に浸透を始めている。

 2006年はLCD TV程ではなかったが、約800万台以上の市場規模となった。主戦場の大型リビングTV市場はハイエンド中心のためにLCD TV程のポテンシャルはないが、AVのニュートレンド、ホームシアターもユーザを拡大しつつある(図5)。

 そして、市場でLCD TVと戦うPDP TVも単価に関してはLCD TV同様に期待が持てない。勢いでは2005年、2006年ほどではないが、単価下落に歯止めがかからずに2010年では1000ドルを割り込んでしまうだろう。この結果、台数と金額は2008年以降にバランスを崩し、金額は2008年をピークに下落傾向を示すと予想される(図6)。

日本メーカーの
フラット TV戦略を分析する

図7 世界のLCD TV マーケットシェア 2006/Q3
(出典:isuppli)

 これまで、フラット TV市場は右肩上がりで、順調に拡大すると説明してきたが、家電メーカーが置かれた状況を考えると、手放しで喜べる状況ではない。予想を超えるTVの価格下落はメーカー利益を削ぎ落とし、繁忙の影で企業の体力を蝕んでいる。特に、アイサプライでもデジタル家電のお膝元、日本の状況について大きな関心を寄せている。

 アイサプライの調査によると、2006年Q3の世界のLCD TV マーケットシェア(図7) は1位のシャープから4位のソニーまで、シェア10%強とほぼ横並びの状況である。しかし、日本メーカーは2社しかなく、海外勢では蘭Philips社と韓国Samsung社が肩を並べている。日本メーカーでは、部品、セットともに西高東低が進んでおり、LCD TVを作り上げてきた屈指のLCD企業シャープも西日本を代表するエレクトロニクスメーカーであるが、世界の競争にあっては、優位性はない。米国では瞬間的にSamsungのシェアがトップになるなど、日本メーカーにとっては既に波乱の時代を迎えている。今や韓国ブランドは日本に並ぶイメージを作り上げており、今後は巨額の利益や投資を背景に日本を追い抜く可能性も出てきた。

 また、韓国ブランド以外でもメーカー数が急激に増え、どの市場でも、有名ブランドに価格先行メーカーが食いついていた。一方で、日本ブランドの一躍を担う松下はLCD TVでは自前の玉がなく苦戦、PDP TV一本釣りで勝負に臨むが、市場では既に30型代は古戦場、PDPは50型まで後退している。2006年よりフラット TVのキーワードは「フルHD」となっているが、PDP陣営は50型まで戦線を後退させ、「フルHD」との融合で新たな付加価値戦略に出るしか手はなさそうだ。

 こうした状況を延長して分析すると、2007年以降のTV市場はパワーゲームになる可能性が高まった。五輪に向けてLCD、PFDTVのシェア争いは熾烈になるだろう。日本メーカーでは、シャープ、ソニー、松下の3強メーカーが主軸で推移するだろう。そして、米国でもユーザを引き込む武器が価格下落に終始する流れが生まれており、メーカーの利益は危機的な状況となるだろう。

 各メーカーとも価格競争力、売れ筋サイズの予想を含む商品マーケティング力が揃わないとすぐに在庫増などのしっぺ返しが待っており、各社の利益を圧迫しかねず、2007年はシェアの競争とともに各社の利益構造にも目が話せない状況となるだろう。



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