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450mm
ウェーハへの期待、しぼむ

[2007年08月号]

450mmウェーハへの移行によるメリットが期待できるにもかかわらず、業界の大多数はすでに実証済みの300mm技術の維持を望んでいるようにみえる。


By Alexander E. Braun
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 液浸および極端紫外線露光技術(EUV)リソグラフィを除いて、300mmウェーハから450mmウェーハに移行するのに必要と考えられるプロセス技術についての業界の見解は明らかに二分化している。今、この移行の良い点と悪い点を評価することが有益であろう。

 一般的に450mm移行に関する製造装置メーカーの見解は注意深く、そしてネガティブなものだ。今回は匿名を条件に取材に応じてもらったメーカーが多い。以下にそれらの意見をまとめる。

 取材した数社は、大型化を進めるよりも300mmの成熟度を上げる「300 Prime」の方がより重要だという意見であった。300Pの主要な目的は300mmプロセスの生産性を改善することであり、生産性の向上を提供することで450mmへの橋渡しに役立つと考えている。

 取材に対応して頂いた人の中で、プロセス装置で450mmは技術的に不可能であると考える人はいなかったが、開発に投資する上での人的資源に限界があるとの指摘があった。「一つのことから焦点を移行すると、その他のコストに波及してくる。業界全体で利益を共有できる一貫した優先度を設定すべき」という指摘があった。それゆえに450mmのハードルは、次世代装置の開発費の増加、そして製造装置の潜在的な普及率からくるペイバックが少ないという懸念であり、主に経済的な理由による。また、450mmウェーハ基板が十分な量で供給されるかの懸念についても指摘があった。半導体メーカーは現状の歩留まりが満足できるレベルにある限り利益の観点から大口径のウェーハへの移行は短期的にはないというのが業界の総意だ。


 半導体メーカー数社は、2012年までに450mmウェーハの量産が始まるという国際半導体技術ロードマップ(ITRS:International Technology Roadmap for Semiconductor)の展望に強く異議を唱えている。取材に応じた1社は、「ITRSのこの予想は無責任」と表明した。同氏は、見てる限りにおいて、どこも実現させるための装置を開発していないから、その時期までに450mmの量産が始まらないことは明白だと述べている。「ITRSはこの点を再検討すべき」と述べ、「混乱をさけるためも、また肝心なのは300mmの成熟度を上げることに集中すべきである」と語った。

 この業界は今まで約3年のサイクルで主な技術のイノベーションを実現しており、450mmへの移行の延期が技術のイノベーションの遅れを招くかもしれないと、業界関係者は指摘した。歴史的にみると、ウェーハの大口径化は装置およびプロセス技術を改善するためにコンソーシアムや半導体メーカー内部、学会などで最初に議論されている。「そこで何が起きたかというと、ウェーハ口径の移行が新しく開発された技術を導入するのに良いタイミングとなったこと」だという。工場や製造ラインがゼロから構築されるタイミングであり、技術の変更および導入に良い機会を提供する。

 しかしながら現在、製造装置メーカーの多くの意見として、ウェーハ口径移行の問題には、生産性のイノベーションと装置の大型化に伴うコスト増があるという意見が広がっている。300Pの目標でもあるウェーハ大型化と生産性の改善は、別々に検討することが好ましく、ウェーハ大型化のコストを支払うことなしに生産性向上に向けたイノベーションを生むことが重要だ。そうすれば、製造ラインの機敏さ、そして柔軟性を向上させることができ、サイクルタイムの低減に効果をあげる最高の機会となる。

 では、300mmが最終的なウェーハ寸法の限界となるのであろうか?これは難しい問題だ。いくつかの半導体メーカーは、32/22nmプロセスの成熟度が上がるまでは、ウェーハの大型化が大きな利点を生むことはないと考えているようだ。「22nmで起きることは不明確であり、それは確実にまだ先。その時点で正しいウェーハの寸法は1000mmかもしれない。また我々は今とは異なる製造プロセスを採用しているかもしれない。しかし、我々が現在知っている製造技術からは、450mmに対する強いモチベーションは見出せない」。

 この意見は筋違いではない。多くの装置メーカーはまだ200mmから300mmへの移行に絡み利益を上げており、且つこの移行はとても大きな経済的な不況により複雑化してしまっている。今だれもこの流れにのって450mm推進に動くメーカーはないだろう。


いろいろな意見

誰もが同意している点は、450mmの重大な障害が装置の開発と開発費の分担にあることだ
米Intel社Technology and Manu-facturing Group, Equipment Tech-nology Strategyのディレクター

 大手半導体メーカー数社はこれらの意見に賛同していない。早くに移行が進まないならば、Si 1cm2あたりのコストが上がると警告する。このテーマに対しての取材に同意した3人の業界キーマンに話を聞いた。始めに米Intel社Technology and Manufacturing Group, Equipment Technology StrategyディレクターであるPeter Silverman氏の登場だ。

Semiconductor International(SI):なぜ450mmに移行するのか?

Silverman:ウェーハの大口径化とトランジスタの微細化はムーアの法則では不可欠であり、またこれにより40年もの間我々は成長を維持してきた。ウェーハのスケーリングなくして、我々が経験した単位面積あたり30%のコストの低減はなしえなかった。そして単位面積あたりのウェーハのダイコストは増加もしくは後退の局面に向かうであろう。コストは450mmに移行することにより低減が促進される。

SI:装置サプライヤーはこの移行に懸念を抱いている。

Silverman:製造装置メーカーは少々短絡的な観点で話している。もし我々が300mmを残し、キャパシティの需要があがるなら、さらに300mm工場が建設され、量産においては450mmを使用した場合と同じような結果になると主張している。これは成熟している業界で、我々が非常に弾力に富む市場を持っている事実を無視している。もしダイコストが上昇したら、成長は減速する。よって450mm移行は装置サプライヤーにとって最悪よりはむしろ良い話だ。

SI:開発の負荷はどうですか?

Silverman:誰もが賛同している点は、450mmへの重大な障害が装置の開発と開発費の分担であること。圧倒的に大きな金額ではないのだが、それは大きな投資である。最大のリスクは、もし経済の神様が低迷期に入ることを企んだら、300mmで起きた同じようなことが450mmでも起きることである。業界が200mmから300mmへ転換する用意ができたとき、我々は大きな減退期に入り、それはサプライヤーにさらに事態を困難にさせた。装置メーカーはこれが繰り返されることを恐れており、我々はこのリスクを分担する方法を協議しなければならない。我々はこの転換期に向けて一緒に作業をしなければならない。そして適度な短期間で成し遂げなければならない。もしSi 1cm2あたりのコストを注意深く見たならば、2010年までに以前よりコストが高くなっていることを目にするであろう。我々は早急にこれに留意しなければならない。

SI:450mmはまだ学習中なのでは?

Silverman:450mmウェーハを加工および作業する上での懸念はある。ウェーハを製造することに関しては、ウェーハのサプライヤーは十分な確信を持っており、すでに400mmのウェーハで実証している。

 装置側は特に簡単だ。200mmから300mmへの転換は非自動化から完全自動化の工場に変える必要性があった。これはウェーハをFOUPカセットに入れるという大きな変更を伴う、真のパラダイムの転換であった。300mmから450mmへの移行はただ単にスケーリングのみである。多くの搬送・自動化技術の基本構想、300mm移行時の主要なハードルであった特にソフトウェアが再利用できる。技術的な観点から言うと、そこには懸念材料は何もない。

SI:450mm工場は法外に費用がかかるのでは?

Silverman:ひとつの450mm工場は同じキャパシティを有す2つの300mm工場よりコストがかからない。莫大な出費であることは真実であるが、この業界は巨額な金を扱うのが常だ。キャパシティにもよるが、ひとつの450mm工場で50億ドルから60億ドルの費用が必要だ。いったん工場がフル操業されたら、コストは大きな問題とはならない。

SI:450mmの移行は市場競争を減らしてしまうでは?

Silverman:より大きく、さらに高価な450mmの工場は半導体メーカーの合併を加速し、競争力とイノベーションの低下を招き、業界が過去40年ものあいだに経験したシナジーの低下を招くという論争がある。これは正当な論争ではない。現在でも最先端を走る企業は多くないが、市場競争がゆっくりしているわけではない。


いくつかの変更とアップデートが効率性を改善する上で必要ではあるが、工場内レイアウトの一体化の観点からすると、450mmへの移行は200mmから300mmの移行に比べて、理論的には簡単である
米International Sematech Manu-facturing Initiative (ISMI)
450mm Transitionプログラムマネージャ
Tom Abell氏

 International Sematech Manufacturing Initiative(ISMI)で450mmTransition Program のマネージャであるTom Abell氏はSilverman氏の意見に賛同する。

SI:450mmへの移行で重要なのは?

Abell:根本的な推進者は経済的な要因だ。プロセスされたSiの単位面積あたりのコストは、ムーアの法則を維持しながらコストの低減と性能の改善を維持している。ウェーハ寸法の移行は根本的なコストを低減する方向を示し、コストは徐々に追いついてくる。それはウェーハ寸法の移行に対する基本的な前提であり、技術がコスト増となる反作用として、単位面積あたりのコストを低減するための方策である。

SI:現在のインフラを微調整して歩留まりを最大化しないのはなぜ?

Abell:現存するインフラでいくつかの可能性を確実にすることもできるが、いくつかの場合、設計上の制約条件が10年以上前に決定されものによって固定されてしまっている。現在我々が直面しているのは不必要な条件の結果であり、どのように経済展望もしくはビジネスが変わるかということを理解していない。問題のいくつかには自由度があるが、簡単には変えられない。現有のインフラで一定の割合の改善は可能であるかもしれない。これらの固定化した制限の中にどれぐらいの可能性があるのかを300Pは検討しているところだ。現有の工場の中で小規模な変更は多くを得ることができなく、抜本的な変更こそが利益をもたらす。現有インフラで各々の状況下での装備の改良を試みるより、結局のところ、ウェーハ寸法の移行を進め、完全にインフラを変更する方が良い結果を生むようになるかもしれない。

SI:450mmの移行に伴うエンジニアリングは過酷か?

Abell:誰も移行に伴うエンジニアリングの困難度について見間違いはしていない。より長いウェーハ端からくる問題、もしくはSiに対する技術的な挑戦からくる問題があるが、200mmから300mmへの移行時に学んだものとそう変わりはない。これらは今まで解決してきたような、単にエンジニアリングへの挑戦である。

SI:価格に対しては?

Abell:最も重要な質問はこれらの問題を解決するためのコストはいくらかである。確かに高価ではあるが、エンジニアリングによる開発が必要となるであろう。たとえばウェーハのベベル(斜面)端のような大多数の問題はすでに300mmで取り組まれている。

SI:標準化はまだ定義されていないのでは?

Abell:いつ検討しなければならないか、何が450mmに対する標準として必要なのか、これらは少なくとも今は初期段階であり、最初はウェーハの直径と厚みから決めていくものであろう。その他の技術的な問題、たとえばコンタミネーションなどは、もうそれだけでプロセスに関連しており、直径には関係していない。大きなサイズは、紛れもなくいくつかの問題を悪化させるであろうが、300mmで作業してきたような同様のアプローチと解決策を450mmに適用することができない理由は見当たらない。我々は300mmで莫大な学習カーブを体験し、そしてかなりの量のモデリング作業によって、ウェーハに必要なバルクSiの量を最低化する最適化された厚みを決定することができた。我々はできる限りコンピューターによるモデリングを使用し、そして追求するための作業可能な道を実現している。

SI:Siの供給に対する懸念は?

Abell:太陽電池のマーケットで急増が起きていると誰かが言っていたが、200mmから移行したとき300mmであったようなことは、450mmではないであろう。太陽電池に対して必要なポリシリコンは、Si単結晶の直接の競争相手ではない。量産におけるウェーハ寸法のほうが、いっそう多くの懸念があるようにみえる。

SI:装置は供給可能か?

Abell:いくつかの装置メーカーは450mmについてそう熱意をもっているわけではない。彼らは前の移行が非常に苦痛であった理由によってこれを正当化している。我々は1990年代中ごろに300mmの計画を開始した。そのとき何もかも楽観的に見えた。サプライヤーは景気のサイクルが継続するという期待をこめてR&Dにかなりの投資をした。しばらくして、半導体メーカーがダイ内のコスト低減よりキャパシティを増加する方法でのコスト低減にさらなる興味を示し始めた。なぜなら工場の建設があまりにも速かったためである。9.11に続くドットコムのバブルが弾けたとき、半導体メーカーはR&Dの投資で丸損し、不満足な株主の対応に苦慮した。

SI:450mmへのスケールアップに対するその他の懸念は?

Abell:300mm移行時、プロセスのスケーリングに対する困難についての懸念があった。サプライヤーはモデル化にかなりの量のコンピューティングを行った。α装置は驚くべきほどモデルに近かった。そして多くのことを学んだ。1991年に私が見た最初の200mm装置といくつかのプロトタイプの装置の間には驚くべき違いがあり、サプライヤーがどれほど設計のやり方を学んだかが示されていた。このことは次の400mmへの移行が克服できないほど困難ではないと、私は確信した。確かにそこには、たとえば多きな面積のプラズマの均一性など物理的な挑戦がいくつも横たわっているが、克服できないほど困難ではない。

SI:移行時の違いは?

Abell:200mmから300mmへの移行時の主要な相違は、工場内が完全自動化された搬送システムではなかったこと。かなりの新規開発と新規技術が工場内インフラに対応する必要性があった。現在我々はそれを作り上げており、基本的にゼロから始めなければならないものは特にない。いくつかの変更とアップデートが効率性を改善する上で必要ではあるが、工場内レイアウトの一体化の観点からすると、450mmへの移行は200mmから300mmの移行に比べて、理論的には簡単であり、単に現有するインフラを改善するのみである。


ウェーハの大口径化に移行するよりは、人々は65nmから45nmそして32nmへのプロセス技術にお金を使いたいと思っているようだ
米eSilicon社COO
Jim Kupec氏

 米eSilicon社COOであるJim Kupec氏は、450mmへの移行は遅れると考えている。

SI:450mmは2012年導入に向けて用意ができているか?

Kupec:現在の300mmウェーハ技術の妥当性とコストのため、わたしは移行には長い時間を要し、最初はもたもたすると考えている。ユーザーとしての我々に対して、より大きいウェーハは受注の最低数量を下げることを推し進め、小規模な会社にとっては複雑な事態を招く。450mm工場の単位あたりのコストは安くなるが、それは大規模な量を流す、たとえばマイクロプロセッサやメモリーなどのごく一部のデバイスのみとなるだろう。私は一般的なロジックを使用したデバイスがコストを牽引するとは思っていない。移行に伴う高いコストと大規模な量のため、より厳しいものになっていく。

SI:300mmが好ましい?

Kupec:大口径のウェーハによる高価な移行期を通過するよりは、歩留まりを上げ、かつ維持されている微調整された300mmプロセスがもっとコスト効率が高いようにみえる。かなりの量の300mmのキャパシティがアジアで増えており、この競争と稼働率維持が300mmのウェーハ価格を推進させる。これは次の5~10年を超えて450mm導入時期がさらに遅れていく。

SI:ウェーハの安定供給について懸念がある。

Kupec:ウェーハ供給については、たとえば太陽電池のようなその他の市場によるSi需要の急騰にかかわらず、根本的な限界はないと言われている。しかし450mm工場には根本的な限界を感じる。装置価格と装置開発者の意欲を見て、450mm装置はできないと思う。300mm装置が長期に渡って継続して売られることを装置メーカーは知っており、これは450mmに移行することを促すものではない。半導体メーカー側では、たとえば米Texas Instruments社が発表したように、コスト低減のためプロセス開発をファウンドリに移管するようなことが起きている。これは450mmの移行に直接の関連性はないが、現有の300mmウェーハの先端技術開発コストですら懸念していることになる。

SI:スケーリングに対する懸念は?

Kupec:これらの問題は、十分な時間とエネルギーをかけて解決できる。疑問点は、現有するウェーハ寸法を継続使用することに対して、達成するための十分な時間、エネルギーそしてお金があるかということである。望みだけではなくそこにはお金がいる。もし業界がこれらの問題の解決を望むなら、克服できないような技術的な壁は見当たらないが、ウェーハの大口径化に移行するよりは、人々は65nmから45nmそして32nmへの移行にお金を使いたいと思っているようだ。

 450mm移行には非常に懸念を抱いている。忘れてはならないのは、業界の主力300mmウェーハ工場は現在非常にうまく機能していることだ。今お金を儲けることが重要であり、450mmやさらには675mmウェーハに向かうことを心配する状況ではない。



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