Movers&Shakers

河合 秀樹 氏 
エム・エフエスアイ株式会社 代表取締役社長

[2007年08月号]

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 エム・エフエスアイ(m・FSI)代表取締役社長河合秀樹氏が、独自の多角化戦略を推し進めるために大きく舵を切った。同社は、日本では稀な経営陣と従業員による企業買収(MEBO:Management Employee Buyout)により資本構成を新たなものとし、河合氏そして同社従業員が志を一に、ビジョンと戦略の実現のための一歩を踏み出した。同社は、三井物産51%(うちクロリンエンジニアズ26%)、米FSI International社49%の資本構成で1991年に設立。FSIの洗浄装置をコアにスタートし、その後同社独自の多角化戦略を推し進めた。岡山に技術センターを設立。さらには日曹エンジニアリング半導体製造装置部門を買収。そして2007年に同社経営陣と社員、FSI、みずほキャピタル、安田企業投資の参画でMEBOを実施した。さらに今後は同社選択のもと、同社企業理念に沿った技術系ベンチャーの受け皿として、また、内外で独自展開が可能な企業として新しい形態の企業に生まれ変わる。同社社長河合秀樹氏に話を聞いた。

Semiconductor International 日本版(以下SIJ):MEBOを実施した経緯は?

河合秀樹:m・FSIは、設立から16年。当社を取り巻く環境としては、技術をよく理解してFSI Internationalの製品を販売することから始まったが、単にFSI Internationalの技術を理解するだけでなく、独自のR&D的な要素も当社で有するようになっていった。これによりFSI Internationalの戦略と当社の戦略とがずれてきた。また、三井物産も事業を資源やエネルギー、社会インフラに重点を移した。当社は三井物産およびFSIの傘下である必要がなくなったといえる。当社単体で考えると、アジア市場を含めグローバルに活躍できる体制を構築しなければならないと考えた。今までの支配株主からの独立が企業の発展には望ましい。製品の多角化、そしてアジア地域も含めた地域の多角化が必須だ。いろいろな方法を検討した結果、MEBOの実施を決めた。そしてファンドの協力を得て、MEBOに動いた。

SIJ:FSI Internationalとは戦略の相違があった。

河合:洗浄工程は特別かもしれない。日本市場では多くの日本の競合メーカーがしのぎを削る。一方、国内半導体メーカーは30社前後ある。設備投資が大きいのはトップの3社。経営学の教科書ならばトップ3社のみをまず対象とするべきことになる。それがFSI Internationalの戦略だった。しかし、当社は30社全部のニーズに応えたかった。この戦略の違いはストレスが伴う。今回のMBOでFSIは資本比率20%となり、リスクを負わずにm・FSIと協働していくことが可能となった。

SIJ:FSI Internationalの製品の開発・販売体制は変わるのか?

河合:当社とFSI Internationalは長期の販売契約も改めて締結しており、今までと体制は変わらない。米国におけるプロセス評価なども引き続き可能だ。

SIJ:多角化は相当な負荷がかかる。

河合:技術に立脚した会社として高付加価値なものを提供していきたい。当社はハードウェアではなく、物理反応化学反応を提供している。その実現方法に当社ハードウェアが適している。当社はクリーンルームを持ち、研究ラインを持つ。国内でも有数のR&Dセンターを有していると自負できる。

SIJ:日本の半導体メーカーは装置のカスタムメイドを求めすぎると聞く。

河合:当社ではニッチなカスタマイズも可能だ。ユーザーのニーズに合わせていくことを否定しない。一般論で言えば、米国系の企業は標準仕様を販売したい傾向にあるだろう。FSI Internationalの商品についてはFSIの標準仕様が好ましい場合もある。しかし、それ以外の製品はテイラーメイドを受け付ける。ニッチなニーズを我々自身が発掘して提案することが重要だ。

SIJ:多角化に向けてはプロセスソリューションの提供を考えていく必要がある。

河合:これこそが当社の強み。ハードウェアだけを提供するメーカーではソリューションは提供できない。装置の使い勝手や安定性は当たり前の条件だ。ユーザーの抱えている問題に対する解決策、物理反応、化学反応のブレークスルーを提供するのが当社のビジネスコンセプトだ。

SIJ:洗浄工程以外のどこまでカバーできるのか?

河合:プロセスソリューションを提供するためには前後工程の知識が必要だ。洗浄工程以外にも前後のプロセスに対応するハードウェアを提供することが理想だが、それができるメーカーは限られる。しかし、当社でも対応できる手段はあると考えている。

SIJ:M&Aも選択肢に考えられる?

河合:当然考えられる。方法論はいろいろある。しかし、当社独自で前後プロセスを開発することは無理だろう。

SIJ:その答えはこれからでてくる?

河合:ユーザーからプロセスの問題点を聞ける関係であれば、前後のプロセスに関する知識は当社でも保有できる。一番重要なのはユーザーとタッグが組めることだ。

SIJ:今後、半導体以外のアプリケーションに参入する計画は?

河合:当社は半導体分野で成長してきたメーカーだ。今回のMEBO以降、エレクトロニクス分野全般へとその対象を広げた。しかし、低付加価値な領域に参入する考えはない。付加価値を提供できる分野は何か、見極めることが重要だ。

SIJ:それはCMOS技術の延長線上にあるのか?

河合:CMOS技術の延長線上の方が付加価値は高くなるだろう。

SIJ:先端プロセス開発は世界いくつかのグループに集約されつつある。

河合:当社のこれからの課題だ。今まではFSI Internationalの意向に従ってきた。独自にコンソーシアムなどに参加することはなかった。今慎重に考えているところだ。

SIJ:今回のMEBOではファンドの力を借り、ベンチャーの受け皿となる?

河合:ファンドやベンチャーキャピタルが台頭している。ファンドの狙いは最終的に上場させ、キャピタルゲインを得ること。しかし、株式公開ができないベンチャー企業も多数ある。ファンドはそのポートフォリオの中で運営しており、埋もれているベンチャーが沢山ある。企業は、開発技術そして製品を生産する製造技術、販売する営業力、さらにはアフターサービス、そして経営戦略といろいろなものがパッケージされて構築される。これらの要素のうち1つが欠けても成功はできない。当社はこれからのベンチャーの引き受け先のような存在になりたい。ベンチャー企業の発展に足りない何かを満たせる存在になりたいと考えている。今までファンドはCFOや営業などの人材の投入で企業再生を図ってきた。しかし、ベンチャー企業の成功の可否は、経営者だけの問題ではない。CFOや営業だけでは企業はできない。技術屋でなければ技術系ベンチャーを企業として実現させることはできない。このベンチャーの受け皿としてm・FSIという企業が機能したい。人材を入れる、斡旋するビジネスモデルは沢山あるが、組織としてチームとして対応できる企業はまだ当社しか存在しないのではなかろうか。5年ぐらいを目標に、企業を新しい形態に変えていきたい。5年後は技術をコアに置いたモザイク状の新しい形態の企業に生まれ変わっているかもしれない。技術、製造、物理、化学、表面処理などのキーワードにリンクしたベンチャーサポートもしくはアライアンスが本筋だと考えている。

SIJ:ベンチャーキャピタルの抱えている案件の受け皿となる。

河合:そうともいえるが、下請けになるわけではない。

SIJ:河合社長の眼力が問われる。

河合:選択権はこちらにあると考えている。すでに持ち込み案件はあり、話を進めている案件もある。経営のこと、そして技術のことを議論する必要がある。

SIJ:MEBOを行う必要はあったのか?ストックオプションや持ち株会とどう違うのか?

河合:インセンティブとは違う、社員一人一人の志を求めたい。また、5年前後の中期的な経営の中で、当社の経営方針に共感してもらいたい。経営陣と従業員が一体となった新しい創業となる。FSIおよび三井物産からの影響を希釈化すること、経営陣と従業員が志を一にして新しい事業に取り組むこと、これらが結果として顧客の利益につながると信じている。

(聞き手:高橋 潤)


かわい ひでき

1972年に横浜国立大学工学部を卒業。同年、三井物産に入社。化学機械部無機化学工業課に配属される。1973年にクロリンエンジニアズ営業部への出向。その後、ブラジル三井物産などを経て1991年にエム・エフエスアイを設立し取締役営業部長に就任した。1994年に同社代表取締役社長に就任し、2007年5月にMEBOを機に三井物産を退社。現、エム・エフエスアイ株式会社代表取締役社長。



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