大気中のヘイズは、レンズもしくはマスク上にあるヘイズと同じく、パーティクルからの光散乱の原因となる。おおよそ大気中にある微小パーティクルの50%は、空気中に浮遊する二酸化硫黄(SO2)とアンモニアから作られた硫酸アンモニウムである。10)SO2は天然(火山活動とか植物性プランクトンからの放出)および人工(化石燃料の燃焼)の源から大気中に放出される。アンモニアは自然界における生物の廃棄物である。太陽光、オゾン、水蒸気からのエネルギーと組み合わされて、気体の硫酸アンモニウムは大気圏上層部に形成され、パーティクルを作ってすぐさま下に落ちてくる。これらと同じAMCがマスク周りに存在し、ArFの光子は硫酸アンモニウムの形成を導くエネルギーを供給する。大気中SO2とアンモニア濃度は、地域的および季節的に顕著に変化し、ファブからファブそして長期的にそのような種の変化を管理することは大変である。11)硝酸アンモニウムは、大気中に存在する第2の最も一般的な無機の微小パーティクルであり、硫酸アンモニウムと同じようなパーティクルを形成する。大気中にある有機微小パーティクルのうち、カルボン酸は一般的な成分であり、シュウ酸はこれらのうち最も一般的なものである。12)
有機のヘイズは、マスクの最初の露光の間に引き起こされる微小な欠陥として現れる。欠陥密度は最初は高いが、追加露光により減少する。欠陥の寸法は、リソグラフィにより露光したものより通常は微小であるが、歩留まりを悪化する原因になる。スモッグは有機物ヘイズに最も良く似た物質である。空気中の揮発性有機物は紫外線(UV)とオゾンの放出により一体化し、半透明パーティクルを形成して堆積する有機化合物をつくる。レチクルの場合は、有機化合物の源は、ファブ内で起こるプロセス起因の源と同様で、ペリクルと保存用容器の材料である。硫酸アンモニウムと同様に、参照用のプレート試験においてファブのなかの露光しない条件下で、フォトマスク上の有機物汚染が顕著に増加した。これらのテストでペリクルとマスクケースからのガス放出マテリアルが確認された。ケースの供給者は汚染レベルを低減したが、特にレチクル用の容器とストッカにさらなる改善が必要とされる。
大規模ウェーハファブでのヘイズの管理は重大な懸念事項である。ヘイズは通常マスクの検査で検出されるが、最悪の場合には結果的に歩留まりへの損失を与える。ArFリソグラフィにおいては、ヘイズは固有の問題であるため、多くのファブは汚染に対して、たとえば時間経過もしくは露光ベースのマスク検査などいくつかの対策をとった。ファブにとっては物流に対する懸念が生じるが、疑いのあるレチクルは、洗浄のためにマスクショップに返却される。量産ラインを維持するため、同一レイヤーの複数のレチクルがしばしば作られ、それはコストと複雑さを増加させることになる。
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フォトマスクの欠陥と
洗浄における新境地
[2007年11月号]
リソグラフィの分野では、フォトマスクの欠陥検出および除去プロセスが革命期を迎えている。
新たな欠陥に対しては、革新的な洗浄装置およびプロセスが必要とされる。
ArF (193 nm)露光装置は、ヘイズと呼ばれる新たな欠陥をもたらした。ヘイズには2つの特徴がある。1つは、露光後にヘイズが検出されること。もう1つは、その原因がマスク表面付近の分子レベルの汚染であることだ。マスク洗浄技術は、分子レベルの汚染欠陥を効果的に除去することであり、ヘイズに対しては実際に効果があった。しかし、今後ヘイズ除去作業は、マスクメーカー、ウェーハ製造メーカーと材料メーカーとの協力が必要とされる。
ここでは主にヘイズに注目し、最新のマスク欠陥について、その欠陥の検出および除去について、そしてウェーハファブ内でのマスクの有効寿命を検証し、無欠陥マスクを維持する方策の最新動向を解説する。
マスク欠陥
図1 ハード欠陥。マスク上のCrベース吸収層の伸張
図2 ソフト欠陥。このようなパーティクルは通常マスク洗浄プロセスで除去される
マスク洗浄における動向
マスク洗浄は大まかに言うと剥離と最終洗浄の2種類の洗浄方法がある。剥離はマスクパターニング後のレジスト残渣の除去である。ポジ型レジストにおいては、ブランケット露光、それに続く従来の現像とリンス工程によって達成することができる。ネガ型レジストにおいては、現像とリンス工程前の露光を必要としない。二番目の方法は、すべての有機物に対して有効であり、濃硫酸と30%の過酸化水素(通常ピラニアエッチと呼ばれる、100℃以上で2:1から4:1の比率で、純水リンスが後に続く洗浄)を用いて行われる。この2つの洗浄は除去効果を最大化する上で重ねあわされる。
最終洗浄はパターニング、検査、リペア後のマスク上に残るレジストもしくはパーティクル汚染を除去する。工程内のパーティクル除去の効果(PRE:Particle-removal Efficiency)は、その後のペリクルの工程にとって実に重要となる。剥離と同じように最終洗浄は残渣の有機物パーティクルを除去するため、ピラニアエッチとリンスが通常使われる。特に効果をあげるプロセスは、残渣の酸を中性化するためのアンモニアのメガソニック噴霧(それによって除去が容易である硫酸アンモニウムが作られる)、硫酸アンモニウムを除去する純水リンス、そしてスピン乾燥工程からなるプロセスである。
ヘイズ
ヘイズの初期症状は、有機物(ペリクル材料からのガス放出によって引き起こされる)か硫酸アンモニウム結晶(劣悪なリンスと硫酸のマスク洗浄からくる化学反応の中和によって引き起こされる)のいずれかであった。2)これらの初期の問題は迅速に原因が突き止められ解決された。g線からi線リソグラフィへの転換時は、長らくヘイズに関連する問題は少なく移行し、マスクは非常に信頼性が高く、大まかに言ってレチクルの耐用年数は期待に添うようになった。
図3 過去5年間にわたってマスクメーカーは著しく硫酸アンモニウムの残渣レベルを低減した
ArFリソグラフィの出現により、業界は再びヘイズの発生とヘイズの種類の急激な増加に直面している。統計によると、ヘイズの発生率はKrFからArFへの移行に伴い10倍増加した。4)ArFリソグラフィでの初期には、光学系表面でのヘイズの形成による、露光装置光学系の透過率の低減、フレアの増加、極端に短いレチクルの寿命の問題を経験した。有機材料の二重炭素結合によってArFでは簡単に破壊された(表1)。それに追加して、酸素は193nmでは効率的にオゾンに分解され、ペリクルのパッキング材料はこの強烈な酸化性物質により損傷を受けやすい。
ArFリソグラフィに対して、硫酸アンモニウムはヘイズ形成に影響を与えるとたびたび報告されている。有機ヘイズで500 nm以下の欠陥部類は、マスクの最初の露光時にペリクル下の揮発性有機物の作用の後引き起こされる。ヘイズが硝酸アンモニウムで形成される場合があることが、ArFでは報告されている。
硫酸アンモニウムのヘイズ軽減は、硫酸とアンモニウムの残渣レベルを低減する洗浄を改善することに最初は注目された。フォトマスクの製造では過去5年間で2桁、残渣汚染物を低減した(図3)。これらの改善にもかかわらず問題は存続し、現在の傾向としてはマスク製造プロセスから硫酸を排除する方向に移っている。
図4 ウェーハファブ内のプレート上に積層した残渣は雰囲気中の硫酸とアンモニアの自然的なレベルによって引き起こされる
露光工程の加速試験では、硫酸アンモニウムの形成に寄与する複合経路が明らかになった。ウェーハ露光と保存の両方で引き起こされ、それぞれの場所でアンモニアと硫酸が検出された。7)〜9)保存と露光に対してAMCフィルタの導入はレチクルの寿命と信頼性を著しく改善したという顧客のフィードバックがあった。大気中の類似物質はフォトマスクのヘイズに対して、特に硫酸アンモニウムの形成に対してモデルを提供した(表2)。
従来のマスク検査は、レチクル使用者にとって問題となるヘイズの種類に対して適当な特性評価がなされていなかった。新しいペリクルで防止し、マスクは通常ファブに返却するために迅速に洗浄されなければならない。このことは、欠陥を評価し、根本的原因を理解し、そして是正措置を作り出す上での制限となる。なぜなら各々のヘイズの種類は独特の化学物質から作り出されており、いくつかの手法で欠陥の種類を同定することが必要とされる(表3)。ミクロン以下の領域で空間分解能を提供する飛行時間型2次イオン質量分析法(TOF-SIMS)とマイクロ・ラマン分光法が、欠陥の化学的性質を決定するのに使用される。より微小な欠陥に対しては、新たな手法が分子構造を同定するのに必要とされるだろう。
高度なマスク洗浄
図5 従来のピラニア剥離と洗浄(上部)そして硫酸なしの剥離と洗浄の比較
ArFマスク上の硫酸アンモニウムのヘイズを防止するため、マスクメーカーは、従来のピラニア洗浄から硫酸なしのレジスト剥離と、オゾン水(10〜100ppm O3)、水素添加水(1〜10 ppm H2、pHを維持するため少量のNH4OHを加えた)、O2プラズマアッシング、そして172 nmのUV露光を含む、最終洗浄プロセスに移行している。図5に、硫酸を基にした、そして硫酸なしのプロセスの典型的な剥離と洗浄フローを示す。14)15)先端の剥離/洗浄装置は、洗浄効果を最大化するための枚葉プロセスとスピン噴射機能を持つ。
この移行は重大な技術的挑戦をもたらす。オゾン水(O3:H2O)は化学反応により有機物の汚染物質を除去するが、剥離率は比較的遅い。通常化学反応を加速するのに使われる高温度は、単純にオゾンを分解する。したがって、O3:H2Oは薄い有機物層を除去することができるが、特にエッジビーズ(基板端面などに付着した)の厚いレジスト膜、もしくはドライエッチにより硬化したレジストなどのバルクのレジスト剥離に対しては適さない。
O3:H2Oへの露出の拡大は、Crレイヤーの反射防止膜層上部にダメージをあたえるため、オゾン濃度はダメージを与えないで適切なレジスト剥離率を保つよう最適化されなければならない。広い動作範囲を持つために、レジスト剥離プロセスは、O3:H2O(172 nmのUV露光が支援する可能性を持つ)によって除去できる薄いレジスト層を残したうえで、レジストの大半を除去するプラズマによるレジスト剥離が必要とされる。ペリクルの交換は、厚い有機物の除去等のその他の問題を有し、ペリクルへの密着性が全く頑強な場所で、完全に除去するために溶剤かピラニアが必要とされる。
O3:H2Oの遅い有機物除去率は最終洗浄においては、より小さい問題であり、その他の手法(例として高温の純水でのリンス、ベークもしくは172 nmのUV)が硫酸の濃度を低減するのに使われる。高温の純水はこれらの代替手法の中で最も効果の上がる方法であるが、O3:H2Oでピラニア洗浄の代替とすることは期待できない。
各技術ノードで許容できる欠陥寸法は微小化しており、微細な最小欠陥を除去する必要性も高まっている。なぜならSRAFは、特に棒状の欠陥が散乱してい、最大許容範囲の欠陥としてはおおよそ同じ寸法であり、PREを最大化する間、SRAFのダメージを回避することが重要である。メガソニック補助の洗浄(高度マスク洗浄分野では主としてスプレーを使用)はPREを高めるためによく使用され、そしてメガソニック補助の洗浄は微小寸法に対してダメージが少ない。より高いメガソニックの周波数(通常〜3MHz)は微小な亀裂を発生させ、それゆえにより小さい衝突エネルギーを持つ、より低い周波数(〜1MHz)が必要とされるので、PREは弱まることになる。洗浄装置メーカーはSRAFダメージを最低化(2重周波数を持ち、裏面からのメガソニック動作でスプレー角度を傾かせた装置)してPREを維持した高度な手法持つ洗浄装置を提供している。
枚葉式スピン/スプレーの洗浄装置の使用は、漬浸式をベースにした洗浄装置で見つかっていない、その他の課題を持つ。マスクのエッジは、化学薬品への露出が低いため除去が困難な有機物汚染の多くの問題を抱える場所である。問題解決のひとつの手段としては、ポリ酢酸ビニル(PVA:Polyvinylacetate)のブラシとO3:H2Oを重ね合わせて使う方法と、もしくはアッシング時にこの部分に直接プラズマをあてる方法がある。プレートの裏面は洗浄化学薬品に意図的にさらされないので、新しい装置は両面を洗浄するためプレートを裏返すようになっている。これはまた高温の純水で裏面をリンスすることができる。
問題の共有と解決案の共有
マスク上のヘイズ形成を導く複数のメカニズムがある。パーティクルからレチクルを保護するだけでなく、自然に引き起こされるAMCから保護しなければならない。大半のリソグラフィのサプライチェーンではヘイズを軽減する手順を共有するべきである。マスクメーカー、露光装置装置メーカーは、マスクケースやマスク保管を確立することで、解決案からの利益も得ることができるだろう。いくつかの半導体メーカーは、各種サプライヤーと協同して、ヘイズを管理する上での包括的な取り組みをすでに行っており、マスクの寿命に改善が認められる。
直面している課題に取り組むために、マスク洗浄装置メーカーとマスクメーカーはより緊密に一緒に作業しなければならない。パターンダメージと残渣分子状汚染を最低化し、PREを最大化するため、高度なクリーンルーム、検査そして評価用の施設が必要とされ、これらは一般的に洗浄装置メーカーには備わっていない。そして実際は数社の上位マスクメーカーのみが備えている。それゆえ協力的な提携が、マスク洗浄問題の解決を継続して成功に導くためには重要だ。
直ちにマスクに対する環境を、露光装置とファブ内のレチクル保管両方にかかわるいたるところでマスク寿命を管理しなければならない。これはレチクル保管と搬送に対して、工場内と保管場所での低いガス放出の環境が要求される。モニターの装置は、AMCの異常値がマスク汚染が引き起こされる前に検知できるように保障されなければならない。勇気付けられることとしては、商業用のマスク保管とAMC管理を提供するメーカーが現れ始めたことである。これらは、無機と有機物の汚染を許容レベルまで低減し、低ガス放出材料を備え、AMCのろ過機能を改善し、保管雰囲気をモニターできる。
過去において、露光装置のAMCのろ過は化学増幅型レジストに注目していたが、ArFリソグラフィの導入に伴ってマスク周りの環境をしっかりと管理するようになって来た。同様にマスク検査装置は、マスクへのAMC防止対策をとっていなかった。最近では、検査光の波長に257 nmを採用のマスク検査装置をArF露光装置に付随してヘイズの問題への対策がとられているが、これによって追加された要素がある。マスク検査装置の極度に高い光子の影響が、非常に短時間にヘイズを突発的に発生させることがある。次世代マスク検査装置は、200 nm以下の波長が使用され、マスクと光学系の劣化に対する管理を強めたシステムが要求されるであろう。
クリーンを保ち管理する上で、サプライチェーンのあらゆる点で無欠陥マスクに対して協力的な作業が要求される。この取り組みは、個々(そして必然的に重複する)の尽力によりコスト効率が高まることとなるであろう。
参照文献
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12. K. Crahan et al., “Oxalic Acid Production in the Coastal Marine Atmosphere,” 84th AMS Annual Meeting, January 2004.
13. S. Gough et al., “Reticle Haze: An Industrial Approach,” Proc. SPIE, 2007, Vol. 6533.
14. S. Hoyeh et al., “Non-Chemical Cleaning Technology for Sub-90nm Design Node Photomask Manufacturing,” Proc. SPIE, 2006, Vol. 6349.
15. S. Anzai et al., “Sulfate-Free Photomask Cleaning Technology,” Proc. SPIE, 2006, Vol. 6283.
16. Entegris Clarilite and RSPX.
17. Particle Measuring Systems IMS.
2004年4月からToppan Photomasks社CTO、フォトマスク製品の信頼性と歩留まり改善を目標にするR&Dと全社にわたるプログラムをリードする。KalkはRochester (N.Y.) 大学の光学の博士号を持ち、Emory大学(Atlanta)で物理のB.S取得。
Joseph Gordon
Toppan Photo-masksシニアメンバー・テクニカルスタッフ。フォトマスク業界で30年以上の経験を持つ。エンジニアリング、R&Dそして製造でのマネージメントの職を歴任。UCLA で物理のB.S、University of California, Berkeley にて博士号取得。
David Chan
Toppan Photomasksシニアーメンバー・テクニカルスタッフ。半導体業界で25年以上の経験を持つ。Memphis州立大学で化学のM.S、Southern California大学 (Los Angeles)で化学の博士号取得。
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