Industry Perspective

ファブレス躍進のかげに・・・

[2007年11月号]

By 服部 毅 Editorial Advisor ECS Fellow
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 米国市場調査会社iSuppli社が最近発表した2007年第2四半期(4〜6月)の世界半導体売上高ランキングで、ファブレスが史上初めてトップテン入りを果たしたが、これは、半導体産業に新たな潮流を感じさせるビッグニュースと言えよう。

携帯電話用チップで最高の成長
 快挙を果たした米国QUALCOMM社は、1985年設立のワイヤレス通信技術提供会社(本社は米国カリフォルニア州サンディエゴ市、日本法人はクアルコムジャパン)で、その半導体部門であるQUALCOMM CDMA Technologies(略称QCT)では「最新技術を駆使した3G携帯端末向け半導体、システムソフトウェア、開発用ツール、ネットワーク開発用の製品群を提供」1)している。

 CDMA(code division multiple access:符号分割多元接続)および関連携帯電話用半導体チップでは、世界的にほぼ独占に近いマーケットシェアを保持しており、このチップを提携している携帯電話各社に有償で提供して莫大な利益を挙げている。

 世界半導体市場全体では、2007年第2四半期の売上高は、前期(2007年1〜3月)比3.6%減の631億ドルだったのに対して、QUALCOMMは、8.6%増の13.7億ドルと、トップ10社の中で最高の成長率を記録している。この結果、前期は14位にとどまっていたが、今期は9位へと大きく順位を伸ばした。iSuppliによると、QUALCOMMは携帯電話機向け半導体チップの売り上げが好調で、この市場においてずっと首位だった米Texas Instruments社からその座を初めて奪ったという。

ファウンドリとはWin-Winの関係
 QUALCOMMは、今年8月2日(米国時間)に、「同社初の45nm半導体LSIがテープアウトし、台湾のTSMC社で製造を開始した」と発表した。CDMA技術開発を担当する同社の子会社(QCT)によると、高速低消費電力用の45nmプロセスを使っており、そのため、先端の液浸ArFリソグラフィと低誘電率(Low-k)層間絶縁材料を採用しているという。

 このようなQUALCOMM躍進の陰には、一心同体ともいえるファウンドリの存在がある。去る9月に横浜で開催されたISTF2007で、TSMCの製造担当シニアVPのM. Liu氏は「技術協業で差異化を図る」と題して講演し、「ファブレスが成長すればファウンドリも成長し、互いにWin-Winの関係になる。両者の関係は、従来の水平分業モデルから、企画立案・設計より量産にいたるすべての段階で技術提携する協業モデルへと変化してきている」と述べている。2)このビジネスモデルの変化については、すでに本欄でも紹介した。3

ファブレスがプロセス学会を援助
 私がフェローとして学会運営に参画しているThe Electrochemical Society(ECS、米国電気化学会)において、QUALCOMMは、毎年2回開催される技術講演会の有力スポンサーとなっている。ECSは、半導体設計とは縁遠い半導体プロセスの基礎研究に関する学会である。去る10月に米国の首府Washington D.C.で開催された第212回(2007年秋季)大会では、ドールドスポンサー(最高位のブロンズにつぐ資金援助企業)Atomic Layer Deposition セッションに資金援助している。最先端半導体プロセス技術をその基礎開発段階からくまなくウォッチし、積極的に採用しようとしているということだろう。

 もはや、成功するファブレスというのは、決して設計下請け会社などではなく、ファウンドリは決して製造下請け会社ではない。

 日本で語られているファブレスとかファウンドリ概念の多くはひと昔以上前の誰も儲からない下請けモデルではないだろうか。

参考文献
1.QUALCOMM社会社紹介パンフレット
2.M. Liu:「技術提携で差異化を図る」、SEMI/SEAJ共催ISTF2007講演予稿CD、基調講演2 (パシフィコ横浜、2007年9月4日)
3.服部 毅:「変化し続けるTSMCのビジネスモデル」、Semiconductor International 日本版,2007年 6月号, p.60



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