米スタンフォード大学ナノファブリケーション・ファシリティ(SNF)1)は、産学官の研究者に開かれた、共有装置を備える最先端の研究所である(図1)。スタンフォード大学のキャンパス内に面積1万500ft2のクリーンルームがある。600人以上の登録研究員がMEMS、光学、生物学、化学から従来の電子デバイス製作やプロセス分析に至るまで幅広い分野の技術を研究している。ここでは、プロセス装置の専門知識を持った人材が、アイデアを現実にして機能的なデバイスを作り出す過程を支えている。1985年の開所以来、SNFを利用して何百ものプロジェクトが行われ、カーボンナノチューブ(CNT)、FET、ナノ共振器アレイレーザーやシングルチップ3次元ICなど、最先端デバイスの実現につながった。
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ナノテク研究に開かれた施設
米スタンフォード大学 ナノファブリケーション・ファシリティ
[2007年11月号]
図1 米スタンフォード大学の集積システム研究所内にあるナノファブリケーション・ファシリティ
カーボンナノチューブFET
図2 輪郭がコーティングされたナノチューブの断面図
SNF所長の西義雄氏やHongjie Dai氏、同施設研究員らとの共同研究でLu氏が開発したソリューションは、まずCNTの外面をPoly-T-DNA分子で覆うことでCNTトランジスタ上に等角で均一な絶縁膜を成膜する(図2) 。2)「High-k膜と5nm以下の酸化膜を持つSWNT FETのほとんどで見られるいくつかのゲートリークやショートを避けるため、DNAを30分間純水に浸し、その後2分間超音波処理をする。そして、原子層蒸着(ALD:Atomic Layer Deposition)で薄い(2〜3nm以下)HfO2ゲート絶縁膜を成膜する。この構造の均一性により、ターンオン特性60mV/decadeやトランスコンダクタンス5000 siemens/mを確実に達成できるデバイスが作られる、とLu氏は述べる。研究者らは、PIN構造のようなデバイス設計でHigh-kゲート絶縁膜の膜厚を10nmから2〜3nmに薄膜化すれば、従来のFETの理論限界である60mV/decadeを打ち破るターンオン特性を持ったバンド間トンネルトランジスタの作成につながると期待している。
ナノ共振器アレイレーザー
フォトニック結晶ナノ共振器アレイレーザーは、SNFにて最初に実証された。垂直共振器面発光レーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)の代替品として開発された同アレイは、変調速度100GHz〜1THzを達成可能で、市販のVCSELより50〜1000倍も高速、とスタンフォード大学教授のJelena Vuckovic氏はいう。VCSELの変調を広帯域化させるには、より強力なポンピングにより光子密度を増加させることが可能だが、発熱により熱的に不安定となる。さらに、通常は半径10μmと放射口が広いので、マルチモード、非効率性、高しきい値がVCSELでは普通だ。一方、フォトニック結晶ナノ共振器アレイレーザーは、基本的に1辺10μmの正方形上に100個ものフォトニック結晶レーザーを置くことでこれらの制約を解決することができ、ミリW程度の光出力が可能となる(図3)。
図3 InPベースのフォトニック結晶共振器アレイレーザーのSEM像(左)と、ナノ共振器を複数組み合わせたものの概略図(右)
空孔配列はポリメタクリル酸メチル(PMMA)レジスト層で電子ビームによって定義され、その後SiO2プラズマエッチマスクを用いて転写される。Cl/Ar/BCl3プラズマエッチによるInGaAsP層のエッチングには酸化膜マスクが使われる。そして、InP犠牲膜が取り除かれ、アクティブなフォトニック結晶の自立膜が得られる。空孔の間隔は500nmで、半径は共振器の共振周波数を変化させるため160〜230nmで変化する。
Vuckovic氏のグループは、Siを用いて最高3600の複合フォトニック結晶ナノ共振器アレイを、InPベースとGaAsベースの材料で最高81の共振器アレイを実証してみせた。ナノ共振器レーザーを超高密度に結合させることで、単一フォトニック結晶レーザーの低い発振しきい値を犠牲にすることなく、微分量子効率が劇的に向上することが示された。効率がよく、しきい値が低いのは、結合ナノレーザーの自然放出結合係数が大きいためである。つまり、そのようなレーザーでは放出光子のほとんどすべては発振モードへ向けられ、ポンプの動力を発振モード以外の発電で無駄にしないようにしている。3)2次元複合ナノ共振器アレイを使うと、レーザー出力は単一フォトニック結晶共振器レーザーの100倍以上に増加し、シングルモードVCSELと同程度になったが、これはしきい値の低いポンプ動力で行った場合である。これらの有望な構造は高速での直接変調も可能とし、THzに近づいている。複合ナノ共振器アレイは高出力で高速のシングルモードレーザー光源を達成する効果的な方法かもしれない。
シングルチップ3次元技術
SNFが行った3次元ICとマルチビット縦型フラッシュメモリー技術の研究は、ベンチャー企業である米BeSang社の設立につながった。「シングルチップ3次元プロセスは、製作における非互換性の問題を最小化するように行われる」と同社の社長兼CEO、Sangyun Lee氏は述べる。SGT(Surrounded Gate Transistor)構造がベースになっており、ソース、ゲート、ドレインが積層されている。その後、縦型メモリーセルがメモリーコントロールロジックウェーハ上に置かれ、フットプリントを効率的に削減し、セルの有効密度は8倍にもなる。マルチビット積層縦型SGTと3次元ICスキームの組み合わせを使うと、有効密度は32倍に達する、とLee氏は断言した。
CMPで表面処理された従来のCMOSウェーハと縦型メモリーセル用の定義済み不純物層を含むドナーウェーハからプロセスが始まる(図4)。その後、ドナーウェーハの裏面が取り除かれ、定義済み不純物層を含む結晶Siの薄膜単層がCMOSウェーハの最上層に移される。Si膜厚は光ダイオードの場合3〜6μmで、メモリーデバイスの場合0.5〜1μmである。
図4 10kbフラッシュメモリーアレイの縦型メモリーセルのSEM像(右)と、積層メモリーとCMOS回路を示した概略図(左)
BeSangのシングルチップ3次元ICの方法は、1つのCMOSウェーハをパターンなしのドープされたドナーウェーハに結合することでこの制約を取り除く。この2層間の電気的接続は標準的なフォトリソグラフィプロセスを使って行われ、10nm以下のずれに対してわずかなマージンを作り出す。最上層のメモリー層は通常1.0μm以下と薄膜なので、スーパービアは必要ない。それゆえ、Lee氏によると、ウェーハ上のリアルエステートを追加すれば、何百万あるいは何十億という配線が思い通りに実装でき、ICの高速化をもたらす可能性があるという。
参考文献
2. Y. Lu et al., “DNA Functionalization of Carbon Nanotubes for Ultrathin Atomic Layer Deposition of High k Dielectrics for Nanotube Transistors with 60 mV/Decade Switching,” J. Am. Chem. Soc., 2006, Vol. 128, No. 11, p. 3518.
3. H. Altug and J. Vuckovic, “Photonic Crystal Nanocavity Array Laser,” Optics Express, 2005, Vol. 13, No. 22, p. 8819.
4. D. Englund, H. Altug, I. Fushman and J. Vuckovic, “Terahertz Room-Temperature Photonic Crystal Nanocavity Laser,” Applied Physics Letters, 2007, in press.
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