Industry Perspective

液晶パネル交渉の陰にSamsungの疑惑

[2008年04月号]

By 服部 毅
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 日本ではほとんど報道されていないが、韓国Samsungグループは、創業者一族の不正蓄財疑惑とそれに関連した組織ぐるみの裏金疑惑で1)、将来に影を指すほどグループ全体の経営が揺れている。

S-LCDの役員も事情聴取
 Samsungグループの裏金疑惑を捜査している韓国特別検察(特検)の捜査班は、去る2月28日、同グループの李健煕(イ・ゴンヒ)会長の長男で、Samsung Electronics専務の李在鎔(イ・ジェヨン)氏に出頭を求め、経営権の継承に関する疑惑などについて深夜まで事情を聴いた。彼は、Samsungとソニーの合弁液晶パネル製造会社S-LCDの取締役としても名を連ねており、ソニーとの液晶製造交渉にも登場する人物だ。実力がともなわないにもかかわらず、2)3)世襲で次期社長になるのではないかとうわさされる人物でもある。2)

 それに先立ち、2月22日には、Samsung Elec-tronics半導体部門統括社長の黄昌圭(ファン・チャンギュ)氏はじめ系列会社の前・現職役員多数が検察の取調べをうけた。黄社長は「半導体メモリーの容量は1年ごとに2倍ずつ増加する」という「ファンの法則」を提唱し、Samsungの半導体メモリーを世界トップに導いた人物として有名だ。

 連日、Samsungグループに対して事情聴取や家宅捜査が行われ、グループ幹部1800名の所有する数千に及ぶ偽名銀行口座も差し押さえられたという。いよいよ、李健煕会長の召喚も時間の問題といわれ、事態は大詰めを迎えそうだ。

Samsung経営は空白状態
 このため、Samsung社内は検察対応に追われており、経営の空白状態が続いている。黄社長ら役員や幹部社員は、検察による出国禁止措置により海外企業との協議もままならぬ状態にあり、経営陣による意思決定にも支障が出ている。新年度の半導体および液晶投資計画も、以前に大枠が議論されただけで、細部は宙に浮いたままだ。こんな中、2月26日に「ソニーとシャープが第10世代液晶パネルを共同生産」のニュースが飛び込んできた。

 そんな状況を韓国の有力紙「中央日報」の東京特派員は「別れる準備をしていたソニーを説得して一緒にやっていこうとする余力がSamsungにはなかった。検察の捜査でSamsungグループ指揮部はまひ状態だ。ソニーとしては特検が良い口実となった。めまぐるしく移り変わるグローバルな競争から企業が落伍するのは一瞬のうちだ」とSamsungを手きびしく批判している。4)Samsung のLCD担当者は、液晶パネル合弁工場への追加出資をソニーと共同で行う交渉が大詰めを迎えていると盛んにマスコミにリークしているが、身動きできないトップへの直訴に聞こえる。この件に、ソニーは沈黙したままだ。

長期的にはプラスに作用
 韓国大手企業の経営トップの7割は、Samsung問題について、韓国経済にとって現時点ではマイナスだが、長期的にみればプラスに作用すると考えているという。4)Samsungに対しては、「国民に対する謝罪と経営の透明性確保に向けた決意表明」、「企業文化や支配構造の改善案の提示」をもとめている。4)

 すでに、ブランド力でソニーを抜き去ったSamsungが、韓国の世襲企業から真に世界企業へと脱皮するための試練の苦しみの中にいるように見える。(本稿は3月9日時点の情報に基づいている)

参考文献
1)服部毅:「誰も語らない躍進韓国企業の影」月刊クリーンテクノロジー、2006年6月号 p.25-27
2)服部毅:「躍進韓国企業の未来戦略」、月刊クリーンテクノロジー、2007年4月号p.48-50
3)朝鮮日報インターネット版、2008年3月3日付
4)中央日報インターネット版、2008年2月28日付



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