Industry Perspective

半導体と共に弱体化する日本人の英語力

[2008年05月号]

By 服部 毅
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 去る2月末に就任したばかりの韓国の李明博(イ・ミョンバク)新大統領が重要政策として掲げているのが、英語教育の強化だ。1)英語を話せる人材を育成し、対外的経済力を高めるという目的のため、「すべての授業を将来的には英語で行う」というかなり思い切った政策を発表した。新大統領は英語教育の更なる強化を考えており、5年間の任期内に4兆ウォン(4000億円)を英語教育強化のために費やすことが決定している。

 「変化しなければ韓国は生き延びることができない。中国と日本の間に挟まれている韓国が生きる道は、隣国よりも早く変わることだけだ。」「非英語圏の国家のうち、国民が英語をうまく操る国の方が、はるかにいい暮らしをしている」と、実業界出身の李大統領の発言は、常に実利的だ。

韓国—英語教育過熱で家族離散
 韓国では、数万人に及ぶといわれる「キロギアッパ」(雁の父)が社会問題になっている。当地では、雁は家族愛の象徴とされているが、子供の早期英語教育のため妻子を欧米へ送り出し、仕送りする父親のことだ。子供たちに本場の英語力を身につけさせれば、就職にも有利というわけだ。父親は給料のほとんどを海外にいる妻子に仕送りし、狭いアパートの一室で貧困生活をし、しまいには孤独死したり、精神異常で自殺する事件が頻発している。大統領側近も「離散家族問題はこれ以上放置できない。英語教育の問題点は国が責任を持って解決する」と明言する。国だけでなく、地方自治体も英語教育に力をいれており、各地に英語村と称する英語教育キャンプ場が雨後のたけのこのように開設されている。韓国の英語教育は過熱する一方だ。

日本——世界最低レベルの劣悪な英語力
 然るに、日本の状況はどうであろうか。TOEFL(Test Of English as a Foreign Language)は、英語圏以外の国からアメリカやカナダへの留学希望者に義務付けられている世界規模の英語能力検定試験であるが、このテストの受験者国別成績が毎年公表されている。2)最新情報では、日本人受験者の平均点は、世界203カ国中195位と世界最低レベル、アジア28カ国中では最下位というひどさだ。1900年代は、世界170カ国中150位、アジア25カ国中20位程度だったが、その後、スピーキングとライティングが加わったため、日本の順位はさらに低下してしまった。毎年のことなので、最下位を脱しない限り、新聞ネタにさえならない現状である。

 私が、1992年の発足以来、実行委員を務めてきた半導体製造に関する国際会議でも、最近、英語の同時通訳採用の要望が多数寄せられている。公用語の英語だけだと出席できないというのだ。主催者は、参加者確保のため、莫大な同時通訳費用を負担するか否か苦渋の選択を迫られている。

 かつて、わが世の春を謳歌していた日本の大手半導体メーカーは、欧米に製造子会社を所有して、多数の英語しか話せない従業員を抱えていた。そのため、九州の工場には、欧米からの実習社員が滞在していたし、技術標準も英語で用意し、毎日、電話会議やテレビ会議が英語で行われていた。それが、日本勢のDRAM敗退とともに欧米の工場は次々と閉鎖されてしまった。つい最近も、日立製作所が、シンガポールの半導体製造子会社を売却して英語圏から撤退してしまった。このため、製造エンジニアが英語を使う必然性もなくなってしまったようだ。

 「日本人も英語ができないけれども、日本経済は発展している」というのが、李大統領の英語強化政策に反対している人たちのせりふだが、ここまで書き終えて、今、手にしたばかりの新聞のヘッドラインは「(日本の)景気感、大幅に悪化」。3)今後も、英語はできなくても、島国日本の経済は発展を続けられるのだろうか。

参考文献
1)中央日報、東亜日報、朝鮮日報各紙、2008年1-2月の関連記事
2)TOEFL公式サイト(http://www.ets.org にて、TOEFL検索)
3)朝日新聞2008年4月1日夕刊1面



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