Profit Beyond Your Horizons

第1回新連載

今なぜCoOなのか

[2008年06月号]

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髙山 英紀 EIKI TAKAYAMA
株式会社 ユニスリー・システム
技術営業部 担当部長


図1 購入決定判断基準の変化
Wally Rhinese氏(元Texas Insturuments)

 コスト・オブ・オーナーシップ(CoO:Cost of Ownership)が半導体産業界に導入されてから久しい。現在、北米や欧州の先進的企業を中心としてCoOの活用は目覚しく、第1の目的として新装置購入における投資効果判断の指標に使用する事はもちろん、その後の活用として、プロセス装置改善の指標として、また、先端装置の開発を視野にいれたベンチマークとして、さらには競合他社との差別化をマーケットに強く訴える手法としてなどなど、多目的に広く展開されている状況だ。

 そもそも1980年代中頃、半導体生産工場全体の投資総額の5〜8割を占めると言われた装置費用の高騰に苦しんでいた米国が健全な投資を行うための評価指標として考案したCoOは、ユーザのみならず装置サプライヤにとっても福音的な効果をもたらした。1990年代に入ってからはSEMATECHの後押しを受けて世界的な普及活動期に入った。これにより、それまで取得の価格や性能・技術面に重点がおかれていた装置購入時の判断基準は、生産期間全体の運転コストを視野に入れたCoOへと大きく変化していった(図1)。

 CoOは、高額な生産装置の投資効果を最大限に引き出すための方法であり、Activity-Based Costing (ABC)の考えを取り込んだ解析アルゴリズムは、生産に係る全ての要素を把握し、最も合理的にコストを低減できる強力な手段として認められている。

 生産コストを、装置ライフタイムの全期間に及ぶ良品ウェーハ当りのコスト要素に結び付けて解析する事が可能になったことで、生産原価を押し上げる真の原因が何であるか判断できる。式1にCoOの計算式を示す。


式1 項目の意味  CF=固定費、CR=反復発生費用(変動費)、CY=歩留まり損失費用、L=装置のライフタイム、TPT=スループット率、Y=歩留まり率、U=稼働率


 欧米の半導体メーカーは、こぞってCoO解析を重要な戦略的オペレーション手法として全社的・組織的に導入することで巨額な資本の選択と集中を推進させていった。1990年以降、米国半導体産業界が半導体メーカーも装置サプライヤともに劇的な世界シェアの巻き返しを果たした背景には、こうした生産コスト合理化へのパラダイムシフトがあった。この事を顧みると、今日、低迷している日本半導体産業が国際競争力を復活させるために学ぶべきものは多いのではないだろうか。

CoOとは
 CoOとはどういうものか。SEMIスタンダードE35の定義を要約すると、装置のライフサイクルにおける良品等価ウェーハのコストを示すことにある。この解析は、ともすれば見過ごされる細かなコスト要素も正当に評価し、誤った判断を低減する。その結果は生産プロセスや装置設計における様々な意思決定に応用し、さらに装置サプライヤとユーザー間のコミュニケーションを改善する手段として使う事も可能になる。

 CoOでは同じ言葉、同じ手法を使って、類似したデータやコストを比較することができるため、サプライヤとユーザは互いに検証可能なデータを基にした解析を行い、中立性の高い判断やプロセス改善を支援する事ができる。

 戦略的にCoOを活用することが、企業経営の意思決定をサポートすることになる。半導体メーカーと装置サプライヤの視点が異なっていても、CoOを共有することで双方ともにWin-Winの関係を構築し、大きな利益を手にする事ができ、結果として最も投資効果の高いものを提供した企業が市場で勝利を収めることになる。

 次回は、CoO解析モデル、コスト要素をSEMIスタンダードとの関係において解説する。

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