Industry News

IBMが2層グラフェンでノイズ比を抑制

[2008年06月号]

この記事を :  印刷する プリントする ブックマーク  はてなブックマークに登録 この記事をクリップ! Buzzurlにブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 メールで送る メールで送る

図 米IBM社の研究者らは、単層と比べ、2層グラフェンのS/N比(信号対雑音比)が10倍すぐれていることを発見した

 米IBM社のT.J.ワトソン研究所の研究者は、2層グラフェンが単層よりはるかに効果的にノイズを抑制することを発見した。Si CMOSデバイス後の有力な材料として、グラフェンへの期待が高まっている。

 グラフェンは、炭素原子が2次元ハニカム格子を形成する単層の黒鉛(グラファイト)だ。グラファイトはキャリア移動度が極めて高く、nFETとpFETの性能に対称性があるので、研究者の間では「現代の材料」として考えられている、と同社フェローでNanometer Scale Science and Technology GroupのグループリーダーであるPhaedon Avouris氏は述べた。

 昨年末、2層グラフェンのノイズ抑制効果を発見した同社の研究員Ming-Yu Lin氏は、「グラフェンは電子とホールの移動度が非常に高いので、電子デバイスにとって大変魅力的だ。また、基本的に電子とホールの移動度は同じである。それらすべての理由によって、グラフェン研究が世界的に活発化している」。

 グラフェンはバンドギャップが0の半導体だが、研究者らは、外部電圧を印加して、室温での動作に十分な約300MeVもの整調可能なバンドギャップを作成することを発見した。

 しかし、単層グラフェンで作られたトランジスタは、単層チャネルのキャリアを散乱させる不純物が原因の外乱の影響を受ける、とLin氏は述べた。2層グラフェンの場合、ノイズは層間のカップリングによって減少し、そこでは2枚のグラフェンシートが、外乱を取り除くように互いに反応し合い、ノイズ抑制システムを形成している。

 「2層間の相互作用によって効果的なノイズ除去ができる」と同氏は述べた。この2層システムは単層デバイスに比べ、ノイズを1/10に抑える効果がある。

 Siも含めてどんな材料を積層したナノスケールデバイスでも、ノイズは大きな問題である。原子スケールのグラフェンではノイズが信号を上回るので、S/N比の有用性が制限される可能性がある。「トランジスタを微細化する上で、問題はノイズである」とAvouris氏は述べた。「ノイズは必然的に大きくなり、最終的にはすべてのナノスケールデバイスの有用性を制限してしまうだろう」。

 「フーゲの法則によるノイズの影響はナノスケールで強調される。なぜなら、寸法が微細化の限界に近づいて原子数個分にまで小さくなり、発生するノイズが有益であるべき電気信号を上回る可能性があるからだ」とAvouris氏は述べた。

 IBMは最終的にデジタルスイッチングをカーボンナノチューブ(CNT)とグラフェンで行うことを模索しており、バンドギャップ0という特性を持つグラフェンが、配線、センサ、通信アプリケーションの分野で初期のチャンスを広げるかもしれない。

 「S/N比は検出されうる最小信号という点で最も重要な性能指数の一つだ。2層グラフェンのノイズ抑制効果により、ナノスケールデバイスの性能や応用性が向上するだろう。グラフェンのバンドギャップは0である。それはどうやっても変わらない。これからも常に0だろう。それは特定のアプリケーションにとっては都合がよいが、ロジックでは大きなオンオフ比が必要となる」とAvouris氏は述べた。

 同社はCNTやグラフェンをバンドギャップがあまり重要視されないアナログやRFアプリケーションにまず応用しようとしているのかもしれないが、「我々は忍耐強く長期的に取り組んでいる。RFやアナログのソリューションを最初に見出すかもしれないが、デジタルへの応用をあきらめるというわけではない。また、既知の事柄に対し、今我々がやっていることは優位性を持たなければならないと考えており、そうでなければ我々の時間やIBMの資金を無駄にしていることになる」と同氏は述べた。

 グラフェンの高いキャリア移動度と望ましい有効質量は、「非常に期待されている。研究を進めてみると、確かに心躍る物質だ。しかし、現実世界の技術として実用化する前に、数え切れないほどの技術的問題がある」と同氏は述べた。

 Lin氏によると、グラフェンベースのトランジスタの最大の課題は、広い面積に渡って
均一にきちんと制御しながら材料を成長させることである。なかには、SiC基板を用いて、高温でSi原子を飛ばしCを残す研究グループもいる。この分解方法は「初期段階としては非常に有望な結果」を示した、と同氏は述べた。

 IBMでは、グラフェン層は基本的にテープで剥がされ、その後、直接Si基板上に搬送されるという機械的剥離方法が用いられる。Lin氏はこの方法が「常に成功するわけではないが、十分な研究サンプルは得られる」と言う。

 「現在、我々は単層と2層のナノリボンから単層トランジスタを製作できる。今後は、最高性能を目指して、材料の最適化や最良のパラメータの発見が必要だろう。このデバイスが実用化されるには、ノイズは問題の1つに過ぎない。他のパラメータも最適化されなければならない」と同氏は述べた。

(David Lammers)




この記事を :  印刷する プリントする ブックマーク  はてなブックマークに登録 この記事をクリップ! Buzzurlにブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 メールで送る メールで送る

SI Japan RESOURCE CENTER

アドバンスドエナジージャパン株式会社
金属材料のマグネトロンスパッタリングにおけるアーク抑制
JPN-ArcSputmetal-270-01.pdf
資料一覧を見る
この資料をダウンロード

EVENTS