媒質中に浮遊する微小物体を特定の場所に搬送するニーズは、マイクロアセンブルに限らず細胞操作など多くの応用分野がある。従来、最も一般的に用いられてきた光ピンセット法に対し、2005年にM. C. Wuが提案した光誘起誘電泳動法は、誘電体であれば光学的に不透明であっても操作可能で、必要とする光強度が光ピンセット法の1/1000オーダであるという特徴を有する。微小物体を分散した媒質を、透明電極とa-Siを形成したガラス基板と透明電極だけを形成したガラス基板との間の空間に挟み込み、透明電極間に交流電圧を引加して媒質中に均一電場を形成する。ここで a-Siに光を照射すると媒質中に不均一電場が形成され、これに伴って媒質中に浮遊する微小誘電体に誘電力が作用して搬送操作が可能となる。我々は、櫛型透明電極対を形成したガラス上に光導電性材料としてバッドギャップが2.4 eVの硫化カドミウム(CdS)を形成することで、もう一方の基板にシリコンやポリマーなど任意材料基板を用いることが可能で、青色を操作光、赤色を観察光として利用することで鮮明な画像と十分な操作力を両立可能な2波長光誘起誘電泳動システムを提案した。
最近出版されたMEMS関連書籍:
1)Comprehensive Microsystems、Elsevier Science、2008年12月
2)Reliability of MEMS、Wiley-VCH、2009年2月
MAGAZINE ARTICLES
このページをホームページに登録MEMS Innovator
セルフアセンブリ技術に注目、
DNAを使用したインテリジェントな
接着剤を完成
[2008年07月号]
工業化、量産を見据えた、各種プロセス研究・開発を行う京都大学 大学院工学研究科 マイクロエンジニアリング専攻 教授 田畑 修氏にMEMSビジネスの現状、そして田畑氏の取り組む未来のMEMSプロセスについて話を伺った。
マイクロエンジニアリング専攻
教授 田畑 修 氏
Semiconductor International日本版:MEMS産業の現状は?
田畑修:世界的にみて、利益を出しているMEMSビジネスは、現状ではボリュームを出しているメーカー、例えば加速度センサーを量産している一部のメーカーに限られている。これらのメーカーでは200mmウェーハ製造ラインの導入も進んでいるようだ。
SIJ:台湾のファウンドリもMEMSに参入している。
田畑:コストパフォーマンスを考えると台湾メーカーが有利といわれていたが、MEMS事業では利益を出すのが難しくなってきているようだ。
SIJ:問題点は?
田畑:ボリュームがなければ、台湾メーカーといえども価格競争に勝てない。
SIJ:元来、MEMSは多種多様な用途に合わせたデバイスであり、ボリュームを出すのは難しい。
田畑:大量生産されないデバイスをどう市場で生き残らせることができるか。高付加価値のものであれば市場で生き残れるが、高付加価値なものでもコストのことを考えなければいけない。MEMSデバイスの生き残る方策が見えにくくなりつつある。MEMSファウンドリもボリュームがないと厳しい事が分かってきた。多様なプロセスを許容できなくなってきている。多様なニーズがある少量多品種のMEMSデバイスを、どうやってビジネスとして成り立たせるかが課題だ。
SIJ:成功しているのは?
田畑:ボリュームマーケットに特化しているメーカー以外では,自社に社内ニーズがあって、社内ニーズのために自社製造を行うメーカーだ。そういった自社向け用途を持ったメーカーは事業を成功させている。
SIJ:次にくるMEMSは?
田畑:センサーでは、角速度センサーが市場で伸びる。ジャイロは多くのメーカーが製品化しているが、角速度も入ったほうが精度、動きが高精度で分かるようになる。角速度と加速度の組み合わせが今のセンサー市場のニーズの延長線上にあり、価格が安くなれば広範な製品に多用されることになる。
SIJ:環境や医療というのはMEMSにとって次のキーワードになる。
田畑:健康管理、医療用途での分析、環境計測、これらのモニタリング用途も注目される。創薬の際の膨大な量の実験、細胞レベルでの反応のモニタリングにはバイオMEMSが有効であろう。菌や微生物などのスクリーニングもMEMSが使用される。これが個人の健康を測る上での分析デバイスとなれば、数量はでるかもしれない。確実に進歩しているし、その流れは間違っていない。今までシャーレなどによる培養で見過ごされていた土壌中の微生物の発見などにもMEMSは使用できる。分離、抽出などの操作でもMEMSは有効だ。
SIJ:MEMS製造プロセスで研究室が取り組んでいるのは。
田畑:今はマイクロ・ナノアセンブル工程に注力している。ナノシステム構築のための知識を体系化し、統合するための方法論(SENS:Synthetic Engineering for Nano System)の確立で成果がでてきた。従来のトップダウンのLSI製造法に、従来の化学分野で行われているボトムアップの方法をいかに統合していくかの研究を進めている。アセンブル技術として、ナノスケールの部品を1個1個並べるのではなく、量産性が実現できる方法を考えている。
SIJ:ナノスケールの部品を並べる。
田畑:並列処理が可能なアセンブルプロセスとしてセルフアセンブル技術を研究している。ナノ部品のセルフアセンブル工程をソーティング、トランスファー、アライメント、配置、ボンディング、インターコネクションなどのユニットプロセスに分け、各工程で様々な方法を考えている。
SIJ:ナノレベルでの組み立てが必要となる。
田畑:部品の組み立てには順番もある。そこでDNAを使用することでインテリジェントな接着剤を実現する。相補的な配列を持った塩基でコーティングした部品同士を接着させる。組み立ての順番を決めるには、温度を用いる。温度で接着力を変えることで時空間的に制御された組み立てが可能だ。
SIJ:接着するにはナノ部品を搬送する必要がでてくる。
田畑:短時間で組み立てる場合には、部品を組付け場所のなるべく近くに持っていく必要がある。これは光誘起誘電泳動法を応用したマニピュレーションで実現する。我々が新しく提案した光誘起誘電泳動システム(囲み記事参照)では,シリコンやポリマーなど任意の基板上にある部品を観察しながら並列的にマニピュレーションすることが可能だ。
SIJ:量産を見据えた製造プロセスを確立した。
田畑:これらを理論としても確立したい。そのためにセルフアセンブル技術のモデリングも行っている。
SIJ:統合するために重要なのは。
田畑:システムには「複雑さ」が重要だ。例えば、メモリーは規則的に回路が並び、複雑ではない。対してLSIやMEMSは複雑なシステムである。これらを複合化したものには必ず複雑さが伴う。トップダウンの手法は複雑さを、例えばマスクパターンに含めることができた。一方で、ボトムアップの手法は、規則正しく並べることはできるが、複雑なパターニングはできない。しかし、システムを完成させるためには複雑性が実現できなければならない。この2つをどう融合するか。例えば電子ブロックのように、単機能なものを複雑に並べ統合することで、新しい機能を持ったデバイスが生まれる。
SIJ:DNAによるインテリジェントな接着剤が大きな意味を持つ。
田畑:接着剤にインテリジェンスを搭載することが可能になった。次はコンポーネントを自分の思った設計図どおりにボトムアップ、トップダウンの技術を使って複雑な形に並べる手法を作る必要がある。MEMSとLSIにナノスケールの機能コンポーネントを融合した新しい立体的なシステムが完成する。
SIJ:MEMSはますます複雑になる。
田畑:MEMSはSi CMOSとはそもそも異なり、今後、必然的に多様な材料を用いることになる。これをどうSiプロセスと融合していくかが重要だ。おそらく主流のプロセス技術というものはなくなり、さまざまなプロセス技術が使われていくようになるだろう。今よりも多様性が増していく。LSIの基盤技術は低コスト化、微細化のために共通した標準化された技術となるが、多様なMEMSプロセスと組み合わされ、多様な材料を適用した多様なコンポーネントが組み込まれていくことになる。
SIJ:MEMSの標準化は難しい。
田畑:材料や評価手法などでは、標準化が進むだろう。しかし、プロセスそのものの標準化が進むかというと、多様な技術から淘汰されて,いいものがいくつか残っていくことになる。
SIJ:注目する技術は?
田畑:2006年に「DNAオリガミ」という技術が注目された。その技術はさらに進んでおり、DNAやナノ粒子を部品として立体構造が構築できるようになっている。これはまさにボトムアップのナノ部品が従来よりも複雑になってきていることを意味する。トップダウンとボトムアップの双方の技術が歩み寄り、つながる時代がきている。今、課題なのはやはり「複雑さ」をどうやって実現するかだ。トップダウンとボトムアップの製造技術が出会ったところでどのように「複雑さ」を実現し、システムを完成できるのか、注目される。
田畑修:世界的にみて、利益を出しているMEMSビジネスは、現状ではボリュームを出しているメーカー、例えば加速度センサーを量産している一部のメーカーに限られている。これらのメーカーでは200mmウェーハ製造ラインの導入も進んでいるようだ。
SIJ:台湾のファウンドリもMEMSに参入している。
田畑:コストパフォーマンスを考えると台湾メーカーが有利といわれていたが、MEMS事業では利益を出すのが難しくなってきているようだ。
SIJ:問題点は?
田畑:ボリュームがなければ、台湾メーカーといえども価格競争に勝てない。
SIJ:元来、MEMSは多種多様な用途に合わせたデバイスであり、ボリュームを出すのは難しい。
田畑:大量生産されないデバイスをどう市場で生き残らせることができるか。高付加価値のものであれば市場で生き残れるが、高付加価値なものでもコストのことを考えなければいけない。MEMSデバイスの生き残る方策が見えにくくなりつつある。MEMSファウンドリもボリュームがないと厳しい事が分かってきた。多様なプロセスを許容できなくなってきている。多様なニーズがある少量多品種のMEMSデバイスを、どうやってビジネスとして成り立たせるかが課題だ。
SIJ:成功しているのは?
田畑:ボリュームマーケットに特化しているメーカー以外では,自社に社内ニーズがあって、社内ニーズのために自社製造を行うメーカーだ。そういった自社向け用途を持ったメーカーは事業を成功させている。
SIJ:次にくるMEMSは?
田畑:センサーでは、角速度センサーが市場で伸びる。ジャイロは多くのメーカーが製品化しているが、角速度も入ったほうが精度、動きが高精度で分かるようになる。角速度と加速度の組み合わせが今のセンサー市場のニーズの延長線上にあり、価格が安くなれば広範な製品に多用されることになる。
SIJ:環境や医療というのはMEMSにとって次のキーワードになる。
田畑:健康管理、医療用途での分析、環境計測、これらのモニタリング用途も注目される。創薬の際の膨大な量の実験、細胞レベルでの反応のモニタリングにはバイオMEMSが有効であろう。菌や微生物などのスクリーニングもMEMSが使用される。これが個人の健康を測る上での分析デバイスとなれば、数量はでるかもしれない。確実に進歩しているし、その流れは間違っていない。今までシャーレなどによる培養で見過ごされていた土壌中の微生物の発見などにもMEMSは使用できる。分離、抽出などの操作でもMEMSは有効だ。
SIJ:MEMS製造プロセスで研究室が取り組んでいるのは。
田畑:今はマイクロ・ナノアセンブル工程に注力している。ナノシステム構築のための知識を体系化し、統合するための方法論(SENS:Synthetic Engineering for Nano System)の確立で成果がでてきた。従来のトップダウンのLSI製造法に、従来の化学分野で行われているボトムアップの方法をいかに統合していくかの研究を進めている。アセンブル技術として、ナノスケールの部品を1個1個並べるのではなく、量産性が実現できる方法を考えている。
SIJ:ナノスケールの部品を並べる。
田畑:並列処理が可能なアセンブルプロセスとしてセルフアセンブル技術を研究している。ナノ部品のセルフアセンブル工程をソーティング、トランスファー、アライメント、配置、ボンディング、インターコネクションなどのユニットプロセスに分け、各工程で様々な方法を考えている。
SIJ:ナノレベルでの組み立てが必要となる。
田畑:部品の組み立てには順番もある。そこでDNAを使用することでインテリジェントな接着剤を実現する。相補的な配列を持った塩基でコーティングした部品同士を接着させる。組み立ての順番を決めるには、温度を用いる。温度で接着力を変えることで時空間的に制御された組み立てが可能だ。
SIJ:接着するにはナノ部品を搬送する必要がでてくる。
田畑:短時間で組み立てる場合には、部品を組付け場所のなるべく近くに持っていく必要がある。これは光誘起誘電泳動法を応用したマニピュレーションで実現する。我々が新しく提案した光誘起誘電泳動システム(囲み記事参照)では,シリコンやポリマーなど任意の基板上にある部品を観察しながら並列的にマニピュレーションすることが可能だ。
SIJ:量産を見据えた製造プロセスを確立した。
田畑:これらを理論としても確立したい。そのためにセルフアセンブル技術のモデリングも行っている。
SIJ:統合するために重要なのは。
田畑:システムには「複雑さ」が重要だ。例えば、メモリーは規則的に回路が並び、複雑ではない。対してLSIやMEMSは複雑なシステムである。これらを複合化したものには必ず複雑さが伴う。トップダウンの手法は複雑さを、例えばマスクパターンに含めることができた。一方で、ボトムアップの手法は、規則正しく並べることはできるが、複雑なパターニングはできない。しかし、システムを完成させるためには複雑性が実現できなければならない。この2つをどう融合するか。例えば電子ブロックのように、単機能なものを複雑に並べ統合することで、新しい機能を持ったデバイスが生まれる。
SIJ:DNAによるインテリジェントな接着剤が大きな意味を持つ。
田畑:接着剤にインテリジェンスを搭載することが可能になった。次はコンポーネントを自分の思った設計図どおりにボトムアップ、トップダウンの技術を使って複雑な形に並べる手法を作る必要がある。MEMSとLSIにナノスケールの機能コンポーネントを融合した新しい立体的なシステムが完成する。
SIJ:MEMSはますます複雑になる。
田畑:MEMSはSi CMOSとはそもそも異なり、今後、必然的に多様な材料を用いることになる。これをどうSiプロセスと融合していくかが重要だ。おそらく主流のプロセス技術というものはなくなり、さまざまなプロセス技術が使われていくようになるだろう。今よりも多様性が増していく。LSIの基盤技術は低コスト化、微細化のために共通した標準化された技術となるが、多様なMEMSプロセスと組み合わされ、多様な材料を適用した多様なコンポーネントが組み込まれていくことになる。
SIJ:MEMSの標準化は難しい。
田畑:材料や評価手法などでは、標準化が進むだろう。しかし、プロセスそのものの標準化が進むかというと、多様な技術から淘汰されて,いいものがいくつか残っていくことになる。
SIJ:注目する技術は?
田畑:2006年に「DNAオリガミ」という技術が注目された。その技術はさらに進んでおり、DNAやナノ粒子を部品として立体構造が構築できるようになっている。これはまさにボトムアップのナノ部品が従来よりも複雑になってきていることを意味する。トップダウンとボトムアップの双方の技術が歩み寄り、つながる時代がきている。今、課題なのはやはり「複雑さ」をどうやって実現するかだ。トップダウンとボトムアップの製造技術が出会ったところでどのように「複雑さ」を実現し、システムを完成できるのか、注目される。
光誘起誘電泳動技術
SI Japan テクニカルセミナー
最近のテクニカルセミナー情報
-
Semiconductor International日本版
第21回テクニカルセミナー
『太陽電池を輝かせる製造技術~究極のエコ技術の現在と未来~』
-
Semiconductor International日本版
第20回テクニカルセミナー
『MEMS ルネッサンス』
-
Semiconductor International日本版
第19回テクニカルセミナー
「32nmを描くリソグラフィの選択肢
?Double Patterningか?直描か?」
セミナー関連記事はこちらから -
Semiconductor International日本版
第18回テクニカルセミナー
「DRAM 1ドル時代の量産技術
?装置とプロセスをどう制御するのか??」
関連記事はこちらから
EVENTS
-
第1回アナログセミナー「アナログICを選ぶ、使う」
2008年12月03日ー2007年12月03日
東京コンファレンスセンター・品川(東京・品川) -
航空宇宙産業技術展2008(AITEC 2008)
2008年11月27日ー2007年11月29日
名古屋市国際展示場(ポートメッセ名古屋) -
計測展2008 OSAKA
2008年11月26日ー2007年11月28日
大阪国際会議場(グランキューブ大阪)










