シミュレーション作業の目標は、ロットの大きさ、装置のセットアップ時間/FWD、装置の稼働率、SWPなどの要因の変化を基にし、サイクルタイムと、少品種および多品種の製造ラインに対する、装置数の相対的なインパクトを報告することであった。多品種製造ラインは100品種の製品を生産し、少品種製造ラインは15品種の製品を生産すると想定した基準モデルが開発された。そしてそれぞれの想定は、今日の300mm工場とビジネスモデルを代表すると考えられる。それぞれの要因値を変え、そして適切な基準モデルと結果を比較する感度解析が次に行われた。図1に少品種の製造ラインにおける結果をまとめる。FWDとセットアップ時間の短縮が、817台の一定の装置数で、サイクルタイムは9.4%短縮した。5%の装置稼働率の改善を想定すると、サイクルタイムは10%短縮し、300mmファブの代表的な基準値と比較すると14.7%まで短縮した。装置稼働率10%の改善と、FWDおよびセットアップ時間25%の短縮を組み合わせると、サイクルタイムは18%短縮した。
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300mmプライム:
ファブ量産性の
障害に立ち向かう
[2008年09月号]
ISMIの300mmプライムのプロジェクトでは、製造のサイクルタイムを50%短縮し、プロセス終了後のウェーハのコストを30%低減するという目標を達成することは実証できなかった。しかし、モデリングとシミュレーションによりより、短い段取り時間、より高い装置の稼働率、枚葉プロセスへの転換でサイクルタイムとコスト削減の可能性が高いことを実証した。
Robert Wright
International Sematech
Manufacturing Initiative (ISMI)
www.sematech.org/ismi
ISMIのメンバー企業によって特定された工場で、28の量産性阻害要因の綿密な調査と、装置供給者によるコンサルタントの後、工場の量産性におけるサイクルタイムと費用影響を評価するために、チームは4つの主要なカテゴリーを選択した。
・1番目のウェーハプロセスまでに要する段取り時間(FWD)/セットアップ時間
・装置の稼働率
・少量ロットの生産性
・少品種/多品種両方のビジネスモデルに対する枚葉プロセス(SWP)
チームはその次に、特定の解決経路または解決方法を基にしない結果を保証するために、ファブ自身の業務成績の境界線を把握するシナリオを明確にした。それぞれのシナリオと感度解析に対する仮定は、実地経験、専門的な判断、知識に基づく推測を基にした。
工場シミュレーションと
モデリング
図1 サイクルタイム18%の短縮は、装置稼働率10%の改善と段取り(FWD)とセットアップ時間25%短縮の結果
シミュレーションもまたいろいろな要因の組み合わせを変えて行った。妥当なレベルの改善と最高レベルの改善らの、さまざまなレベルの改善の可能性を持っている要因を選んだ。最高レベルの改善要因を組み合わせた場合、さらにサイクルタイムの改善が見られた。装置稼働率を10%増加し、FWDとセットアップ時間を50%短縮した場合を組み合わせて、一定の装置数(たとえば装置数817台の場合)で図2に示すように、ロットあたりウェーハ12枚を使ったモデルでは、サイクルタイムは45.4%短縮した。ロットあたりウェーハ25枚では、同じ装置数で同じFWDとセットアップ時間の改善で、サイクルタイムは42.2%短縮した。
図2 一定の装置数で、装置稼働率が10%改善し、FWDとセットアップ時間が50%短縮した場合のサイクルタイムは、ロットあたりウェーハ数12枚のモデルで45.4%短縮した。同じFWD、セットアップ時間、装置稼働率の改善で、ロットあたりウェーハ25枚のモデルで同様のサイクルタイムの短縮(42.2%)が見られた
一方、装置処理性能の増加は、未使用の装置数の増加に変換される。ウェーハ12枚のモデルで、装置数を817台から714台に減らした場合、同等のサイクルタイムの短縮が得られた。全体の装置性能を改善することが、より短いサイクルタイムを達成し、少ない装置で同等の出荷数を保つ上で必要とされる。それに代わる生産性向上は、従来の装置でキャパシティを増やすことで得られ、この場合、以前の装置性能の改善が参考になる。
次に、装置稼働率が5%増加し、FWDとセットアップ時間が25%短縮した場合に、SWPを組み合わせたシミュレーションを行った(図3)。これらのシミュレーションは、SWPの装置がバッチ処理の装置に比べるとより遅いプロセス速度であると仮定した。それゆえ、すべてSWPに交換するのに必要な装置数の増加が見られた。この増加(865台の装置)と装置改善の組み合わせで、サイクルタイムは、ウェーハ12枚のモデルで54.9%短縮した。ロットのウェーハ枚数を減らし最小のサイクルタイムを選ぶと、ウェーハ12枚のモデルで、全体のサイクルタイムの短縮は最高で60.8%が得られた(マスク当たり0.707日)。
図3 少品種のラインで、SWPへの交換がさらに装置数を必要とするが、サイクルタイムは大幅に短縮される
多品種のラインは、少品種のラインと異なった生産戦略を持つと仮定した。少品種ラインのモデルは、最先端で最長のプロセスフローで最大の生産開始数量を持つと位置付けられるが、多品種ラインのモデルは、若干古くて短いプロセスフローが最大の生産量を持つ。
バッチ処理装置からSWPへ、多品種ラインのウェット洗浄、ウェットエッチング、ファーネスを変更すると、730台から780台に装置数が増加する結果となる。装置の稼働率を10%増加し、FWDとセットアップ時間を25%短縮した改良装置の導入で、ウェーハ12枚のモデルでサイクルタイムを58.4%短縮した場合に、従来の多品種ラインのSWP装置数780台を維持することができた。必要な変更をすべてSWPにする装置改善で、SWRに対する最低限の要求を上回って、装置数を増加することなしに、サイクルタイムは大幅に短縮した。ウェーハの待ち行列がほぼ同じぐらいだとして、ウェーハ25枚のモデルでは、若干低いサイクルタイムの短縮(55.9%)であった。
図4 適度な装置数の増加で、サイクルタイムの大幅な短縮を達成する
最終結果は
ISMIの経済分析作業の目標は、徹底的な調査および包括的なモデリングから、300mmプライムの生産性主導の定量的な費用便益の調査を提供することであった。それに追加して、チームは、生産性の障害を取り除くため、個別および全体の経済的な解決策を調査する方法を開発することであった。外部の情報源から作られた、技術ノード別および製品グループ別の300mmウェーハの代用ベースラインプロセスコストを構築することに対して、ISMIメンバー企業に守秘義務を保証した。1)それぞれの製品グループに対して最先端の量産を行う代表的な300mmの工場が地域ごとに選ばれた。2)さらにITRS(International Technology Roadmap)に準じた技術ノードを指針として選んだ。プロセス開始時の材料費は、歴史的にコスト対面積から導かれる時間軸対価値曲線を使って導いている。3)
コストモデリングは、ISMI工場モデリングの基本的な仮定を基に修正した。これは、どこに適用できるか、および他の典型的な業界の指標が必要に応じて定義されている。基準(ITRS)と時間的に前倒しになったロードマップ両方に対して、技術ノード別での将来のウェーハのプロセスコストを、履歴データのトレンドから抽出することができるようになった。
最先端の全ての製品が、将来のウェーハのプロセスコストを大幅に改善しなければならないことを示す(図5)。これらの結果では、テクノロジーロードマップを実現するために、ノードごとの複雑性の増加(ウェーハのプロセスコストに占める比率は、プロセス:9.4−10.7%、装置:8.7−12.4%)によって、より大きな設備償却費(ウェーハのプロセスコストの52.9−58.2%)が必要になって、装置の設備投資(償却費に対してプロセス:66.9−68.9%、計測:6.2−7%、自動化:3.7−3.8%、設備:7.3−7.6%)は増えている。
図5 ウェーハコストの上昇は、装置コストの増加とこれらの資産の早急な償却によって大半が占められる
これらの基準コストは、生産性の障害を取り除くため、工場のモデル化されたシナリオによって定義され、有効で実現性のあるコストを反映するために次ぎに修正される。このプロセスの最初のステップは、それぞれの生産性を主導し、実現可能なコストを達成するための手段を定義することである。生産性の障害を取り除くための明確な解決策は、未知であるため、予測するために定性的なアプローチを使った。シナリオは、最初にキーポイントになる必要性と、解決に向けた可能性のあるアプローチを網羅して、次に開発活動をもとにしたサプライチェーンの考えうる全ての局面と、実現可能な時期と導入の見込みを見積もった。実現にかかる関連したコストは、シミュレーションによって見つけ出した最初のコストをもとに、次にそれぞれの活動ごとに割り当てた。
プロセスしたウェーハコストの変動は、静的な工場モデルを入力し、次にそれぞれの生産活動からの費用便益に優先順位をつけることで計算した。ウェーハコスト対サイクルタイムの効果を次に究明する(図6)。
図6 サイクルタイム50%の短縮とプロセスしたウェーハコスト30%の低減目標に、どのシナリオも目標に達しなかった
まとめ
SWP装置では、より遅いプロセス速度を仮定しており、SWP装置には今後大幅なスループットの改善が、装置の追加を少なくするのに必要になる。多品種ラインのシミュレーションから3)、ロットのウェーハ枚数を制限することは、少品種ラインに適用したのと同様に装置改善に関係するサイクルタイムの短縮を少なくする。多品種ラインでの結果は、少品種ラインと似通っているが、製品の複雑性のため、サイクルタイムの短縮は少ないことが認められる。少品種および多品種のビジネスモデル両方に対して、少量ロット生産でのシミュレーション結果は、サイクルタイムの短縮を得るために、装置の改善が大きく寄与することが示された。
包括的な経済分析で、ウェーハコスト30%低減の目標を満足するシナリオまたは複合したシナリオを得ることはできなかった。サイクルタイムの短縮は、いくつかのビジネスモデルに利益を与えるとはいえ、大半のサイクルタイムの短縮がウェーハコストを上げてしまう。全体のウェーハコストの低減(10%以下)は、FWDとセットアップ時間の短縮および装置の稼働率を上げることによるサイクルタイムの短縮を相殺することが認められた。この解析の結果により、複数の生産性を主導する課題に注目したISMIプログラムの戦略的方向が、策定されている。
謝辞
著者は、Eddy Bass氏(ISMIに出向)とEmrah Zarifoglu氏(ISMIのインターン)によるISMIモデリングの貢献に対して特に謝辞を述べる。それに加えて、ISMIの工場シミュレーションと経済分析の重点チームのメンバーとISMI/SEMI共同生産性作業部会に感謝する。
参考文献
2. SEMI World Fab Watch, January 2007.
3. Sage Concepts, Silicon Industry Report 2005, June 2005.
Robert L. Wrightは、ISMIで不連続イベントシミュレーション活動を統率している。動的シミュレーションと静的コストモデリング両分野で13年の経験を持つ。彼は、米テキサス州立大学でテクノロジーの修士とマネージメントのBBAを取得。
※本記事は、2008年5月7日に開催された第19回Annual IEEE/SEMI Advanced Semiconductor Manufacturing Conferenceで当初発表され、会報に掲載されたもの。ここに許可により転載する。
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