Industry Perspective

50年前の2つの出来事

[2008年01月号]

By 服部 毅
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INTERFACE誌2007年秋号のカバーストーリーは、「FroschとDerickから50周年」。写真上から(1955年)FroschとDerickの2人、(1956年上)Shockleyのノーベル賞を祝うShockley研究所の人々、(1956年下)一環の終わり(Shockleyにあてつけのブラックユーモア)、(1960年)Shockley研を集団退職してFairchildを設立した「8人の裏切り者」、(1960年)世界初のFairchildロジックIC、(1968年)世界初のIntelの1k DRAM

 先月号で、還暦を迎えたトランジスタの発明にまつわる秘話を紹介した1)。もっとも、還暦というのは中国暦に由来する表現であり、60歳定年制もない米国では60年という長さは特別の意味を持たない。しかし、50年は半世紀ということで、ひとつの区切りとしての意味がある。

 トランジスタの歴史に関して、いま米国で話題になっている50年前の出来事が2つある。

 ひとつは、「Frosch and Derick」であるが、これでぴんと来る人は、よほどの「トランジスタの歴史」通だ。INTERFACE誌(The Electrochemical Societyの会報)2007年秋号のカバーストーリーとして大きく採り上げられている(写真)。ベル電話研究所のFroschとDerickが連名で書いた「シリコン基板への拡散時の表面保護と選択マスキング」という画期的な論文2)が1957年秋に発表されてからちょうど50年を迎えたということだ。選択拡散に関するこの基本的な論文は、今日の半導体産業の礎となっているプレーナ技術へと直結する最重要プロセス技術だ。

 もうひとつの出来事は、同じく1957年秋の米Fairchild Semiconductor社の誕生である。3)前回紹介したShockleyは、実は経営者としての素質に欠けていただけではなく、人格的にも問題があった。4)部下の研究テーマを思いつきでころころと変えたり、人前で部下を侮辱し罵倒する事件が日常茶飯事に起きた。これに嫌気をさしたShockley Semiconductor研究所の8名の部下が集団離脱した。「8人の裏切り者」(Shockleyは彼らを生涯このように呼んで恨んだ)は、米Fairchild Camera and Instrument社オーナーの出資で、小さな半導体メーカーを設立する。1957年は、彼らにとって生涯で最も面白いワクワクする年で3)翌年、業界を出し抜くプレーナ技術を開発する。「選択拡散に用いた酸化膜をPN接合の保護膜として最後まで残す」のがミソだ(Froschらは酸化膜を最後まで残さなかったので、残念ながらプレーナ特許の発明者になれなかった)。

 その後、Fairchildを飛び出した「フェアチルドレン」たちは総計65もの半導体企業を創設してシリコンバレー興亡史を形成してゆく。Fairchildの創業に関わった「8人の裏切り者」のうちの2人、Robert NoyceとGordon E. Mooreは、10年余り後に再び離脱して、新会社を設立した。それが、いまや世界最大の半導体メーカーに成長した米Intel社である。

 トランジスタ発明から10年後に起きたこの2つの画期的な出来事が、今日の半導体テクノロジーとビジネスの基礎を築いたと言えよう。

参考文献
1.服部毅:「60年前のクリスマスイヴに」本誌2007年12月号.
2.C.J.Frosch and L. Derick:“Surface Protection and Selective Masking during Diffusion in Silicon,” J. Electrochem.Soc., 107,547 (1957)
3.Financial Times 2007年10月31日付記事 「Silicon Valley’s Founding Fathers」
4. “Frosch and Derick: Fifty Years Later”, INTERFACE, vol.17, no.3(2007)



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