2000年代初頭、42型のプラズマ(PDP)テレビが市場に登場し、1万ドルを超える値段が付けられていた。今年は液晶ディスプレイ(LCD)がPDPを追い越し(図1)、3次元立体映像テレビが一般家庭に普及しようとしている。
1993年以来のこの進歩は、米国のディスプレイ技術開発のコンソーシアム(USDC:U.S. Display Consortium)によるところがある。新顔の3次元映像は「劇場向けに強い影響を与えており、家庭用のハイビジョン3次元テレビの準備も整った」とUSDCのCTOであるMark Hartney氏は述べる。
こうした技術革新は、USDCと米Insight Media社が最近サンフランシスコで開いた3-D Business Symposium & Exhibitionで発表された。米Texas Instruments社(TI)のDLP(Digital Light Processing)のような、より進化した立体視システム(図2)は新たな極みに到達し、米PureDepth社の多層ディスプレイのような方法は「真の」3次元映像を提供する、と米国のTFT-LCD市場調査会社DisplaySearch社ディレクターのJin Kim氏は述べる。
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3次元立体映像の実現に向けて
[2008年01月号]
図1 PDPテレビは2003年に初めて登場したが、今年初め、40型以上のLCDテレビの出荷台数が上回った
(出典:DisplaySearch)
図2 いかにDLP画像投影システムが、単体のDMD(Digital Mirror Device)を使って、2次元の光源から3次元映像の立体感を作り出すかを表した概略図
(出典:Texas Instruments)
立体映像
映画で最もよく使われる3次元立体映像の方法は、投影レンズの前にスイッチを置き、フリッカー(ちらつき)が感じられないほど高速に左右の画像を交互に偏光させる。ある映像の円偏光が別の映像のそれと180度位相がずれるようにスイッチで偏光させる。そして、それがスクリーンに届く。
視聴者は異極性のメガネをかけるが、そうすることで、それぞれの目が対応するカメラ映像を見るように左目と右目を効果的に分離する。その後、脳が分離した映像を統合し、2次元映像から立体感を作り出す。
DMDパネル
図3 DMDはMEMS構造で、入射光を投影レンズで屈折させるため、±10度傾く面外ミラーから構成される
(出典:Texas Instruments)
DMD(Digital Micromirror Devices)は、TIの3次元DLPハイビジョンテレビの心臓部である(図3)。MEMSベースのDMDは、今日使われている表面マイクロマシンに先立って、20年前に開発された。従来のMEMSプロセスと異なり、トランジスタとトランジスタ配線用のメタル膜は、完成したCMOSチップ上にMEMSを置く低温プロセスより前にプロセスされる。この2層構造には、入射光を投影レンズに反射させるため、±10°傾く小さな面外ミラーが備えられている。今日の典型的なDMDは100万個以上のミラーから構成されるが、1920×1080ピクセルの解像度を持つ200万個以上のミラーで構成することも可能である。
3次元DLP投影システムは通常3つのDMDを使い、それぞれ赤、緑、青色用である。各色は機械的に色分離プリズムに貼り付けられる。光源は各DMDを照射し、光は別のプリズムを通して再結合され、投影レンズへ向かう。
単一のDMDシステムは、3〜6色のセグメントから成るカラーホイール(ディスク)を用いた高度なシステムだ。このカラーホイールはガラスにダイカラーコーティングしたものから成る。6色のカラーホイールは赤、緑、青、シアン、黄色、マジェンタのフィルタを持ち、表示される画像は鮮やかな色彩によってより明るくなる、とTIのDLPテレビ部門プロジェクトマネージャKen Bell氏は述べる。カラーホイールはDMDの照射光路でスピンし、カラーシーケンスを出力する。単一のDMDは、1ミラーあたりスイッチング速度8マイクロ秒で、入力信号と同期させながら、単一のスピンホイールを通して、異なる6色を連続して出力することができる。この速度で、目は画像を統合し連続したグレースケールを見る。
DLPテレビ用に3次元効果を作り出すには立体映画と同じ要素が必要である。しかし、投影レンズの前に偏光フィルタを置く代わりに、動作中のシャッターをメガネ類に取り付け、片目1秒あたり60回左から右へ切り替える。DLPテレビからはメガネ類に伝えられる赤外線同期信号が出力され、ユーザーが3次元テレビを部屋のあらゆる角度から見ることができるようにする。
LCOSディスプレイ
LCOS(Liquid Crystal On Silicon)技術はLCD技術の1つで、2つの平行な面間に作られる液晶ギャップに電界を与えることで投影される光量を制御する。しかし、LCOSとLCDには2つの大きな違いがある。まず、LCDは光が伝わるガラス面間に結晶を挟むが、LCOSは光が反射されるところにSiバックプレーンを持つ。そして、もう一つの違いは、高コントラストの実現に不可欠な品質である「絶対的な黒」を表示する方法である。
典型的なLCDデバイスでは、黒は液晶セルギャップ全体に電界が与えられたときに作られる。しかし、ガラス基板の表面近くの分子は液晶の並び方に依存しているため制御することが困難である。それゆえ、暗い画像が表示されると、それらの分子は光を漏らしやすくなり、黒の特徴である不透明性を弱めてしまう。
対照的にLCOSデバイスはこの現象がみられない。なぜなら、電界が与えられず、表面の分子が正しい並びのときに黒が表示されるからである。
ソニーの3次元投影システム「SXRD」(図4)のようなLCOSベースの製品では、Siバックプレーンに独自の平坦化技術を適用し、セルギャップを2μm以下に減少させることで、1800:1という高コントラスト比が達成された。また、ソニーの開発者らは、通常はSXRDデバイス構造の平行面間に一定のギャップを保つために使用されている「スペーサ」を取り除く。散乱と反射光が減少する結果、高コントラスト画像の劣化を防ぐことになる。
裸眼立体視
しかし、それでも、これらは左目と右目が必ずそれぞれ意図された画像のみを見なければならない立体視システムだ。メガネをかけずに立体視するには、左目と右目にそれぞれ最適な光線が向かうように、レンチキュラレンズのような特別のフィルタをテレビ画面の前に置く必要がある。それらのレンズは解像度が半分の3次元映像を作り出す。なぜなら、それぞれの目はテレビの画素の半分を見るからだ。
部屋のどこから見ても効果的に3次元映像を作り出すことは大変困難であり、しばしば、3次元体験が最適化されるスイートスポットになる。
PDPであれ、LCDであれ、オーバーレイするレンズ技術はディスプレイの前に置くことができる。また、裸眼立体視であればユーザーはメガネ類を着用しなくてもよいが、そのためのテレビは現在大変高価である。
多層ディスプレイ
図5 メガネなどを装着せずに奥行き感が出るように不透明と透過型の2つのLCDパネルを積層する3次元立体視法に基づいた画像
(出典:PureDepth)
「現在、3次元の立体感を一番よく体験できる方法の1つは画像面の階層化をすることである」とKim氏は述べる。米PureDepth社がとった方法はこれであり、そのコンセプトはシンプルだ。透明、不透明の2つの異なるLCDパネルを階層化し、1つのバックライト光源を共有する。この方法はLCDだけに限定されず、光学的に制御されたOCB(Optically Controlled Birefringence)や有機ELを含むかもしれない。
各ディスプレイパネルは、表示される画像の調整を通して、独立した制御信号を受信する。光学積層ディスプレイパネル内に位置する、特許取得済みの侵入型原子は、ディスプレイ層間の干渉を取り除き、互換性を維持し、光学相関を行う。その結果、真の多層画像ディスプレイが生まれる。しかし、各パネルのコストはどうしても複合的にならざるを得ず、値段が高くつく。
3次元体験への興味は映画において明らかに確固たるものになりつつある。Dreamworksのような映画会社は、メガネなどの着用が必要にもかかわらず、すべてのアニメーションに3次元を取り入れることを目指している。同じように、ビデオゲームやその他のエンターテイメント媒体にも当然3次元が使われる。ユーザーが慣れている立体視技術が家庭でも広く受け入れられるのか、あるいは、より新しい技術であるメガネなどの着用が不要な裸眼立体視法や多層法に取って代わられるのか、今後の動向が注目される。
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