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フリップチップ技術に変化の兆し

[2008年10月号]

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図 フリップチップBGA SiPなど、フリップチップの需要が高まっている
(出典:シンガポールSTATS ChipPAC社)

 実は、60年代前半に米IBM社によって発明されて以来、フリップチップはあまり変化していない。フリップチップはチップのシンプルな実装方法だ。米FlipChips Dot Com社マネージングディレクターGeorge Riley氏はこう表現する。基本的なフリップチップ技術の概念は、チップを取り、導電性バンプをチップの接続点に置き、それを上下逆にして、直接、回路に取り付けるというもの。フリップチップは、高周波動作、低寄生容量、高I/O密度など利点をもたらしながら、すべての余分なパッケージングを不要とする。それらは携帯電話やポケットベルからMP3プレーヤー、デジタルスチルカメラまで、思いつくほとんどの製品に使用されている。

 しかし、いくつか非常におもしろい傾向がフリップチップの分野に現れ、変化の兆しが見えている。

 1つに、Auボンディングのワイヤ価格が上昇したせいもあって、フリップチップの需要が伸びていること。「Auワイヤの価格上昇によって大きな変化が起きている」と、シンガポールSTATS ChipPAC社でフリップチップおよび新製品部門のバイスプレジデントを務めるRaj Pendse氏は説明した。「従来からワイヤボンディング、3次元及び積層チップを使うモバイル製品は、現在、将来的な成長が期待される分野だ。また、性能面から見ても、フリップチップへの移行を助長している理由が2、3ある。フリップチップは小型化に有利であり、モバイルアプリケーションで使用されるSiは高密度化している(高密度I/O)。もっとも、Au価格の上昇がクロスオーバー点を押し上げ、ピン数を下げた。モバイル及び携帯端末は、通常、200~700ピンで、フリップチップのクロスオーバー点はかつて、ほとんどの演算機器やゲーム機と同じ、1000 I/O前後であった。しかし、それは現在、約500 I/Oに減っている。性能とコストの広い見地から言うと、携帯電話、デジタルカメラ、その他の携帯端末に使われるモバイルを皮切りに、200~700ピンのアプリケーションへ大規模なシフトが進行している。業界は、Auコストの上昇に対し、Cuワイヤまたはより細いワイヤを使ったボンディングへの移行で対応しようとしている。あるいは、ワイヤボンディングの代わりにフリップチップへの移行を視野に入れている」。

 米FlipChip International社も、ワイヤボンディングからフリップチップへの移行のトレンドを感じ取っている。「Auワイヤの価格上昇によって、確実にフリップチップへの移行が続いている」と同社CTOのTed Tessier氏は述べた。「当初ワイヤボンディングされていた製品をフリップチップするためには、やるべきことが多いので、移行による完全な効果はまだ見えていない。しかし、移行は進行中だ」。

 そして、Pendse氏は、ワイヤボンディングとフリップチップを比較すると、チップの設計方法が大きく異なると指摘した。「45nmプロセスで始まる新しいSi世代では、顧客の多くが同じアプリケーションに2種類の設計方法を維持する価値はないかもしれないと考え始めている。いずれにせよ、パッケージの総コストにわずかでも差があれば、顧客は、フリップチップ配線のエリアアレイ型レイアウトに直接、新しいSiを設計する方を選ぶだろう。それは2008年または2009年の収益には大きく影響しないだろうが、2010年の収益には影響する。このスピードはAuワイヤのコストによって、ある程度、加速されている」と同氏は述べた。

 しかし、別の新しい傾向は埋め込みチップの成長に関連している。「我々は埋め込みチップ技術をサポートする研究を行っている」とTessier氏は述べた。「現時点では埋め込みのためにダイをカスタマイズしており、今後1~2年以内で登場する最大容量のアプリケーションは、携帯電話とラミネート基板に使われる埋め込みデバイス(おそらく受動素子)に関係したものになる」。

Pbフリー、TSV
 フリップチップに変化の兆しが現れている。

 EUのRoHS指令によるPbフリー規則と新しいハロゲンフリー要求は、技術に関する重要な変化をもたらしている。「フリップチップのバンプは、近い将来、Pbフリーが要求されるだろう」とPendse氏は述べた。「フリップチップはRoHS指令が(2010年まで)免除されているので、バンプはPbフリーである必要はなかった。同免除の下、多くの企業はバンプをPbフリー化しなかった。フリップチップへ移行した企業は、代わりにCuバンプを使用している。バンプがPbフリーになれば、部品表(BOM:Bill of Materials)もハロゲンフリーになるだろう。(BOMは今日ハロゲンフリーでない基板を含んでいる。)Pbフリー化は多くの問題を生じさせている。たとえば、バンプのコストは異なるし、パッケージの信頼性は古い構造と同じではない。Pbフリーバンプの特性に合わせてアンダーフィルの材料を変える必要があるので、多くの新しい問題が浮上している。アンダーフィルの材料、基板などの開発を生じさせているのだ。そして、どのPbフリー成分が最良かを決定するのが大きな課題だ」。

 また、費用対効果に優れたフリップチップパッケージ用基板をどう作るかということも問題である。フリップチップへの移行には多くの理由があり、設計合理化の必要性もその一つだ。今日、フリップチップ基板はワイヤボンディング基板の約2倍のコストがかかる。より低コストの基板を作るため、業界は、チップと基板の効率的な配線方法や設計を模索している。「基板の最上層に信号ラインを配線することができないので、複数の層が必要となる」とPendse氏は述べた。「したがって、我々は微細なI/O配線を実現する方法を探って、基板の最上層に十分な配線スペースを確保し、ラミネート層を含んで2~4層にとどめることを目指している。基板はワイヤボンディング基板により近くなるだろう。これが2年以内に大きく変わる部分だ」。

 そしてもちろん、フリップチップはどのように3次元インテグレーションに収まるのか、という課題がある。「我々がハイブリッド・フリップチップパッケージと呼ぶ積層構造で、フリップチップとワイヤボンディングを組み合わせる方法を考案した。今日、4つのフリップチップを互いの上に置こうとしても、そのメカニズムがなく、不可能。ほとんどのI/Oの高密度領域をフリップチップに変換して、それを下部に置き、その上にワイヤボンディングしたダイを取り付けるため、我々はワイヤボンディングとフリップチップを結合した。しかし、それは独自の問題も生じる。どのように表面仕上げをするか?ワイヤボンディングをし、フリップチップもできるものとは?どのようにアンダーフィルとワイヤボンディングを結合するのか?これはパッケージの新しい課題だ。我々は、この領域で多くの研究をしている。Si貫通ビア(TSV)を持つ3次元パッケージへの移行は、実際、フリップチップに適している。なぜなら、TSVを作るとき、1つのフリップチップを別のフリップチップの背部に置くことができるからだ」(Pendse氏)。

 フリップチップがついに業界で広く採用され始めている。「ウェーハレベル・チップスケール・パッケージング(WLCSP)は、過去数年間、堅調に伸び、現在も成長し続けている。また、フリップチップは、ワイヤレスアプリケーション向けの大容量SiPに、より多く使われ始めている。そして、Cuピラーバンプのような新しいバンプ技術が確実に軌道に乗ってきた」(Tessier氏)。

 フリップチップ市場の動きに関して、米Gartner社バイスプレジデントJim Walker氏は、高密度化と高性能化による統合が引き続き促進されており、フリップチップベース・パッケージの需要増につながっていると述べた。「ICパッケージとフリップチップ配線の基板サプライヤの多くが、2008年後半に関しては楽観的」と同氏は言う。「PC市場の需要が今年初めに予想されたより堅調のようなので、フリップチップを使用するチップセットとグラフィックカードの市場は後半で伸びてくるはず。ゲーム機で使われるフリップチップ基板の注文と、デジタルテレビの継続的な成長は、今年後半、フリップチップの採用をさらに増加させるだろう。フリップチップCSPを使ったハイエンドの携帯電話とPDAの注文は、他のアプリケーションより堅調だ。そして、FPGAデバイスに使用されるBT(ビスマレイミドトリアジン)をベースとしたフリップチップ基板の使用は、第2四半期に増加した。今年後半も成長が続くだろう。この動向すべてがフリップチップ市場にとって幸先がいい。半導体業界では、過去2年間、パッケージ基板の容量があまり増加していない。その結果、供給が減り、価格はより安定するだろう」(Walker氏)。

(Sally Cole Johnson)



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