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半導体工場の環境対策:
進む工場の“グリーン化”

[2008年02月号]

米国の半導体業界は、維持継続や持続的発展性、いわゆるサステナビリティという新しい考え方からLEED認定(Leadership in Energy and Environmental Design)に準拠して設計した新規のファブ(およびラボ)の建設を開始している。これには有害廃棄物の廃棄・排出を最小限に、さらにはエネルギーと水の消費を低減する狙いも含まれている。


By Peter Singer
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図1 テキサス州リチャードソンに位置する米Texas Instruments社のファブは、当初からLEED認定を基に設計された

 半導体製造工場は1年間で1万世帯分(17万MW)の電気と、1日に300万ガロンの水を消費する。年間の公共料金は2000〜2500万ドル以上に上る。

 新規で建設されている半導体製造工場が、環境にやさしい“グリーン化”を進めているのには、これらの運営コストによるところも大きい。しかし、最近の新たなアプローチとしては、電気と水の使用を低減するのみならず、熱排出量、揮発性の有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)や有害物質を低減することも目標にかかげている。天窓からの自然光の取り入れ、太陽光発電、貯水池、反射用屋根板などの使用、そしてコスト低減を目的としたコンクリートの設営手法を設計者は取り入れている。エネルギーを節約するため、使用していない時に真空ポンプをスリープモードにするというようなことも考えられている。装置の稼働状況を最適化し、ネットワーク化された制御系を駆使し、賢い使い方を見つけ出すことが重要である。工場は、水と化学薬液のリサイクルや、そして有害廃棄物を低減するような新たな方法を模索している。

 コストの低減が、新たなグリーン化を推進するための唯一の理由ではない。それは企業文化の一部を占める経済的観点、環境、社会発展を含む維持継続、持続的発展性などといわれる“サステナビリティ”という新しい考え方として知られている動きの一部である。サステナビリティとは、資源を浪費することなくサービスを提供し、環境と経済
的な観点から、すべての資源を効率的に使用することである。

 グリーン化建築の基本は、米国グリーン化建設協会(U.S. Green Building Council)によって開発された評価システムを基にLEED(エネルギーと環境設計のリーダーシップ)認定によって定義されている。システムは、ヒューマンと環境、健康からなる5つ(維持継続のある地域開発、水資源の節約、エネルギーの効率化、材料の選択、室内環境の質)の主要な領域での実績を評価することにより、総合的建築物の維持継続を推奨している。これは新規の建造や現存する建物にも適用することができる。

 まだ稼働を開始していないが、米テキサス州リチャードソンにある米Texas Instruments(TI)社の新しい工場は、LEED認定の半導体製造工場として、世界で最初にグリーン化を基に設計された(図1)。300mmウェーハで45nmプロセスの量産用に設計されており、92エーカーの敷地面積に110万ft2の事務所、機械室、施設と製造工程のビルからなる建物が建っている(図2)。


図2 稼働はまだであるが、米Texas Instruments社の新規ファブは、92エーカーの敷地面積に110万ft2の事務所、機械室、施設と製造工程のビルからなる建物が建っている

 TIによると、建物は環境への影響を少なくするために特別の注意を払って設計された。他のTIの半導体工場と違った特に有効な施設を創造するために、TIの技術者は米Rocky Mountain Instituteの専門家と共同で作業を行った。いくつかの注目すべき要点として次のものが上げられる。

■水害を防止し、そして灌漑時に使用するための雨水を集める貯水池を施設内に設置
■自然のままの草原の草と植物を残す(水撒きが不要で育てるための手間がかからない)
■都市のヒートアイランド影響を低減するためのコンクリートと反射用屋根板を設置
■水を必要としない小便器により年間4万ガロンの水を節約
■センサー内蔵の蛇口は小型水力タービンによって充電
■室内オフィス区域で蛍光灯の代わりに自然光を取り込む
■風力発電をもつ池の通気装置
■光センサーと運動センサーの使用
■需要により制御された空調
■事務所用ソーラー温水
■建設期間中、TIは90%以上の廃棄物をリサイクル。建物の構造内や装飾物にリサイクル材料を使用した

 建物のグリーン化には、長期稼働からくる利益を実現するために追加投資が必要だが、それは建設予算の1%以内である。新工場から6マイル離れたところにあり数年前に建設されたTIの既存工場と比較して、見積りで30%少ないコストで成功裏に建設された。このことは結果として、海外の半導体製造工場と比較しても米国内の工場が競争力を持つことを意味するとTIは述べている。

 TIのバイスプレジデントであるShaunna Black氏は、最近のITPC(International Trade Partners Conference)の講演で、最初の1年間で100万ドルの操業コストを節約し、20%のエネルギー低減により年間400万ドル以上の費用を削減、35%の水使用の低減、そして50%の排出の低減を可能にすると語った。



図3 アリゾナ州チャンドラーに位置する米Intel社の新規45nm工場は、社内で最も環境にやさしい工場といわれている。Intel社は最初の公式なLEED工場として新規ファブに対して認定を求めると語った

 LEED認定を目標にするその他の工場として米Intel社のFab32(米アリゾナ州チャンドラー)の45nmプロセス工場がある(図3)。エネルギーと水保護対策が取り入れられた、Intel社内で最も環境にやさしい工場といわれている。この工場は全体で熱放出を15%低減。米アリゾナ州の水保護対策とプログラムに準拠しているとIntelは説明する。Intelは同社最初の公式なLEED認定工場として認証を求めると語った。

 LEED認定を取得した半導体製造の最初の工場は、米Sandia社の3階建てのMESAマイクロシステム製造工場(MicroFab)だ。エネルギー効率の向上はMESAプロジェクト設計の不可欠な部分であり、これはMicroFab(図4)と近接するMicroLabビルの両方に提供されているより高度の効率的な公共施設を含んでいる。MicroFabは、高能力を持つ超高純度の水(UPW)の供給、水のリサイクル、冷却と洗浄工程へ再利用する装置を取り入れている。



図4 Sandiaの3階建てのMESAマイクロシステム製造工場(MicroFab)で、業界で最初にLEED認定を取得している

 その他のグリーン化の特定評価項目としては、輸送手段を変えることによるアクセスのしやすさ、居住者が水を効率的に使用できる配管設備、少ない水使用に対応した造園設計などがある。リサイクル及び地元で生産された材料の使用と同様に、廃棄物の管理を通した資源保護がこのプロジェクトで強調されている。

 R&D施設もまたグリーン化に向かっている。米エネルギー省Lawrence Berkeley National Laboratoryに位置するナノ技術研究所であるMolecular Foundry(図5)は、LEED金賞の認定を取得した。Molecular Foundryの金賞に対する評価のなかで高い評価を得たのは、最適に設計された電気とHVAC装置、エネルギー効率の良い冷却機とボイラー設備、従来エネルギー消費が高いラボ、クリーンルーム、そしてサーバールームの革新的な設計などであった。Molecular Foundryは、すでに厳しい基準を持つカリフォルニア州の建造物エネルギー効率基準より28%少ないエネルギーの消費を達成している。Molecular Foundryは国のエネルギー基準より35%少ないエネルギーを消費しており、従来の施設より温室ガスの放出は85%少ない。

 「LEEDの等級のなかで、建物の維持に対しての全体的な外観の項目があり、これはエネルギー効率の項目より高い等級である」とMolecular Foundry のプロジェクトマネージャであるJoe Harkins氏は語る。「このファウンドリがBerkeley Labを建設して以来、最もエネルギー効率の良いビルの一つであり、また優秀な作業環境を提供している。日光の広範囲にわたる使用、可動可能な窓、低VOC材料を使った室内空気の質の保護、クリーンな建造に対する実行、すぐれた作業環境に寄与するすべてのものが提供されている。



図5 米エネルギー省Lawrence Berkeley National Laboratoryに位置するナノ技術研究所であるMolecular Foundry社は、LEED金賞の認定を取得した


グリーン化プロセスと 装置の変更
 半導体工場の建物のグリーン化の域を超えて、日々何をすれば環境にやさしくなるかを検討する必要がある。10月に開かれた製造の効率化に対するISMI国際シンポジウムでは、数社がCO2排出と廃棄物処理を減らす試みについて紹介をした。  米Applied Materials(AMAT)社のAndes Chan氏は、炭素の痕跡をさらに知る必要があると述べる。「たとえば炭素そして有害ガスの放出を低減するための解決策を計上し実行をする、既存のそして計画中の数え切れない法律が必要とされる。それがカリフォルニア州温暖化ガス規制法(California Global Warming Solutions Act)、ニュージャージー州温暖化ガス規制法、世界半導体会議PFC低減委員会であろうとなかろうと、企業はガス放出低減のための方策を見つけ出すことに挑戦しなければならない」と語っている。  「エネルギー消費の最大の要因は、施設と半導体装置の使用によって通常引き起こされる。炭素痕跡の主な原因は、工場の生産レベル、ガス、ウェーハプロセスから、そしてその他の直接的な排出による。資源の保護、CO2排出の低減には、直接的もしくは間接的に、広範囲の技術を見直すことが必要とされ、そして各企業のプロセスと施設に対して最適な解決策を適用する必要がある」とChan氏は語る。  エッチング工程のレシピを改善してプロセス効率の最適化、CVD装置に対するリモートプラズマクリーンによりペルフルオロカーボン(PFC)排出の低減、たとえば選択性エッチングの応用におけるC4F6、そして最終的にPFCを破壊もしくは変化させる代用の化学薬品使用などを提供することが、AMATの戦略である。  韓国Samsung Electronics社においてPFCは、NF3の代替品として、たとえばCF4、C2F6、C3F8にCVDのチャンバのガスを切り替えることにより低減された。Samsungはまたin- situでリモートプラズマクリーンの切り替えが可能な装置へと変更を行った。

廃棄物を富に

表 コスト効果ーファブ25

 いくつかの実例のなかで最大の成功例としては、米Spansion社でのグリーン化の成功例が挙げられる。ISMIの講演で、Mike Frisch氏とMarcel Montalvo氏は、Spansionはごみの流れの運営を廃棄処理の代わりに再利用とリサイクルをすることにより環境性能を改善し、危険廃棄物の量を低減することでコスト低減を図るというゴールに2006年初期に切り替えたと語った。  環境パフォーマンスは、最終的に生産活動(例としてフラッシュメモリー)の結果として作られた汚染量を測定する。Frisch氏は、汚染を少なくすることは、ゴミの流れを処理からリサイクルへ、リサイクルから再利用へ、再利用から低減へ、そしてプロセスを置き換えることにより廃棄物もしくは副生成物を発生させないようにすることであると述べる。Spansionにおける取り組みは、ゴミ処理のなかで処理よりは再利用とリサイクルに焦点が置かれた。  <b>事例1</b>−−Spansionファブ25は、年間で約290万ポンドの使用済硫酸を発生している。この化学薬品は80%が硫酸で残りは低レベルの金属と有機物が混ざっている。この取り組み前は、未使用の硫酸を作るのに使用する原材料のなかに酸を戻しリサイクルする、硫酸の再処理工場に酸は輸送されていた。Spansionはリサイクルを行う運送費として1回当たり1140ドル使っていた。亜鉛めっきの企業が、未使用の酸の置き換え原材料として使用した酸を再利用する望ましい候補者として特定されたが、亜鉛めっきの企業は輸送に対する責任を負いたくなかったため、取引は成立しなかった。Spansionは、酸の再利用と輸送責任を負う工場を特定するために、製品管理の企業に接触した。工場のあるオースティンから100マイル以内で、全部の廃棄物を再利用できる、硫酸鉄を生産する工場を見つけ出した。Spansionは、年間4万2000ドルの輸送費を節約できるだけでなく、酸1t当たり10ドルが支払われている。それに追加して、Spansionは、分析にかかるコストで1回当たり400ドル削減し、認定のための鉄や薬品の分析が必要でなくなった。このプロジェクトに対して、節約、売上げ、コスト回避を合わせると年間で8万5000ドルになった。Spansionの環境パフォーマンスは、最終使用の工場への輸送距離の短縮、硫酸の再処理と製造プロセス両方、そして未使用の硫酸の輸送の削減によって生まれたエネルギー使用と汚染発生の削減の結果改善された。  <b>事例2</b>−−Spansionファブ25は、ウェーハ乾燥工程で75%のイソプロピルアルコール(IPA)約20万7000ポンドを発生させている。この取り組み前は、IPAは他の廃棄溶剤と混合し、有害廃棄物としてオフサイトに輸送され、そしてヒューストンの化学製造工場で燃料として燃やされていた。Spansionは、工業用洗浄剤であるIPA廃棄物の分離、再梱包、再利用するため他の企業と協力した。このプロジェクトの結果Spansionは、廃棄処理コストを年間約1万2000ドル節約し、概算で年間1万5000ドルの売上げが、IPAの実際の売却により生み出された。追加として同社は、危険物廃棄で年間20万ポンド以上の材料に対して報告するものがなくなった。また、同社は、廃棄処理工場への輸送、廃棄処理のプロセス、未使用の材料の製造によって発生する、エネルギー消費と汚染を削減することによって環境パフォーマンスを改善した。  ファブ25は、モーター機器のメンテナンスから、毎年使用済みオイル約5000ポンドを発生している。この取り組み前は、使用済みオイルは廃棄溶剤に混ぜられ、危険廃棄物としてオフサイトに輸送されていた。オイルのリサイクルメーカーは、無償で使用済みオイルを集めることに合意した。これでSpansionは年間250ドルの廃棄処理のコストを節約し、危険物廃棄報告のうち年間5000ポンド分を削減した。  <b>事例3</b>−−Spansionファブ25は、新規のCu配線フラッシュメモリー技術の量産の結果として、2006年度に硫酸銅の排液を年間約8万2000ポンド発生させた。硫酸銅と硫酸廃棄物は、廃水処理工場へ危険廃棄として流れ出る。この特殊な廃水処理方法は、Cuを含んだヘドロを発生させ、危険廃棄物の埋め立てゴミとして処理される。同社は、廃棄物からCuを含む、価値のある金属を除去するための多段階のプロセスが使用できる、金属のリサイクル工場を完成した。硫酸銅の硫酸は、他から流入してくる水を中和するために使用され、使用されたバスは未使用の硫酸で置き換えられ、もはや危険物として報告もしくは評価をする必要がなくなった。  プロジェクトに対するコスト削減の細部を表に示した(<b>表</b>)。廃棄処理の代わりに再利用とリサイクルにより、Spansionは、環境パフォーマンスにおいて大きな一歩を踏み出し、液体の廃棄コストを92%低減し、危険廃棄物を年間29万4000ポンド削減した。企業における継続した取り組みは、リン酸とエッジビード除去の再利用のような、さらなる機会を生み出し、年間15万ドルの節約と毎年発生する危険廃棄物を最大で50万ポンド削減した。





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