Advanced Research

原子レベルの制御が導く未来

[2008年02月号]

By Ruth DeJule
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 45nm技術では、新たな材料がすでに製造ラインで使われ始め、高性能デバイスにおいては原子3〜5個分という極めて薄い層が使われようとしている。1個の原子(直径2Å以下)の位置が適切でないと、デバイスの不具合を引き起こす可能性が生じる。そのため、材料やインテグレーションの課題とともに、1個の原子を特定して認識できる評価技術が必要だ。それは、米国内のどこかにある1台の車の中から1本の針を見つけるような作業である。

 原子レベルでの理解を深め、界面の電子的特性を制御するための研究は、電子・スピン輸送をよりよく操作するために、新規材料を探求し、診断法を見つけ出すことである。こう述べるのは、米コーネル大学の応用・工学物理学部教授で、同大のCornell Center for Material Research(CCMR)でチームリーダーを務めるDavid Muller氏。

 CCMRは、米国立科学財団(NSF)のMRSEC助成金と大学の援助を通じて、4つの学際的研究グループ(IRG)や小規模なシード(seed)研究グループなどを支援している。12学部、4大学から構成されるメンバーと共に、世界中の産業界および大学の研究者らと連携し、10年間に渡って半導体業界に影響を及ぼすような研究を行っている。

 その中でも特に、希土類材料に焦点を当てている3つのプロジェクトが興味深い。予想もしていないような結果を得ること、分子電子デバイスを開発すること、また、今後の次世代デバイスを実現するために必要となる可能性のある電子顕微鏡検査の向上といった研究が行われている。

電子顕微鏡検査

図1 電子顕微鏡検査の画像。金色はTa/TaN膜の外表面を示す。赤い線を含む面はビア全体の断面で、TaとTaN層を示している

 最新式の原子レベルでの画像化の手法、つまり電子顕微鏡検査は50年前から使用されている技術である。真空中の電界と磁界の性質から、電子顕微鏡の円柱状に対称なレンズは大きな球面収差をもつ。波長ごとに、標準的なレンズ系は基本的にビール瓶と同じ光学特性を持ち、ゆがみのない画像を得るため、0.01以下の極めて小さい開口数(NA)が必要である。理論的には、電子顕微鏡の空間分解能は、球面収差を解消できるレンズ系を用いると50倍向上する。

 電子顕微鏡の登場から50年が経った今、光学的ソリューションをもたらす革命が進行中だ。新世代の電子顕微鏡の解像度は2〜4倍高くなり、使用可能な電流は10〜100倍増加し、10〜100倍高速化する。これは円柱状レンズ系内に置かれた80以上の多重極レンズで構成される補正光学系により実現した。

 高速かつ高品質の画像処理が可能になったことで、CCMRの研究者は、デバイスの不具合についての研究や、固有限界もしくは不完全な結晶成長であるかを区別することなどが容易になった。ゲート酸化膜へのドーパント拡散、意図しないチャネルドーピング、バリア膜ブレークスルー、ラインエッジラフネスといった劣化の調査についても、米Semiconductor Research社(SRC)が支援する学生らと共同研究を行った。これらの領域を画像化するため、集束イオンビーム(FIB)を用いてデバイスの一片を切り分ける。図1では、Cuが充填される前のTa/TaN膜がはっきりと見られる。同様に、図2では、Cuが充填された4つのトレンチの壁面のラフネスと厚さばらつきが3次元画像で示されている。

 濃度が1019atoms/cm3を超えると、2〜3個の原子の中から1個のドーパント原子を見つける確率はとても高くなり、それらを組み合わせたり、入手可能な電子を共有したり、電気的に不活性化することが可能になる。これら「ドーパント・クラスタ」は、小さいジオメトリ内で低い抵抗率を維持するためドーパント密度が増加するにつれて、問題になる可能性がある。現在、それらがデバイスの不具合へ及ぼす影響について電子顕微鏡を使って研究が行われている。

 これまで、電子顕微鏡は常に強力なツールであったが、光学的に向上することで、実験ごとではなく日常的な不具合の分析に診断技術を活用できるようになる。


図2 Cuで満たされたトレンチの3次元電子顕微鏡検査の画像。側壁にラフネスが見られる。赤い部分はラインで切断したときの密度を示しており、側壁厚さを測定することができる


2次元界面層

図3 SrTiO3上で成長したLaAlO3膜の高角度環状暗視野画像。コヒーレント界面を示している


 将来を考えてみると、おそらく、10nm以降に向けた3〜4つの技術ノードにおいては、現在よりもはるかに大規模な新材料の開発とデバイス設計戦略が必要になるだろう。それららのジオメトリでは、新たな現象が生じ、それらは界面相で起きると考えられる。材料におけるこれらの構造と特性はバルク材料には存在しない。しかし、バルク絶縁材料が同様の材料と結合すると、安定した2次元導電膜が界面に形成される可能性がある。

 CCRMの研究者らは、東京大学のHarold Hwang教授や独アウクスブルグ大学のJochen Mannhart教授などが行った、絶縁膜であるペロフスカイト型酸化膜、希土類チタネート、そしてSrTiO3、LaTiO3、LaAlO3のようなアルミン酸塩の界面における高移動性電子系の分析に協力している。

 超高真空内、770℃で、パルスレーザー成膜で成長させた薄膜LaAlO3上に、SrTiO3の薄膜(原子5〜100個分の厚さ)を成膜してサンプルが作られた。コンタクトは標準的なリソグラフィプロセスを用いて形成され、構造はバイアスされた。そして、予想もしなかった結果がもたらされた。原子2個分の深さがある界面で、非常に高濃度の伝導電子が測定されたのだ。これは、最も高濃度ドープしたSiデバイスより20倍も高濃度だった、とMuller氏は述べる。それでも、界面にある1つの原子層を切り替えることで、それは絶縁体になった。

 ジュネーブ大学との共同研究で、アウクスブルグ大学のグループとフランスの研究者が行った同様の実験では、原子2〜15個分の厚さのLaAlO3膜を、TiO2終端(001)の上のSrTiO3膜の表面に成膜して、パルスレーザー成膜で成長させた(6×10-5mbar O2、770℃)サンプルが作られた(図3)。同構造が200Kまで冷やされたとき、同サンプルは抵抗がない状態に変化した。この2次元超伝導体は、薄膜に閉じ込められており、厚さは10nm以下、界面にて発生した。

 この結果を受けて、伝導膜が生じた原因について多くの議論がなされた。SrTiO3結晶の酸素欠損が原因か?それとも、クリティカル膜上での電子再構成のきっかけとなる、膜が成長する間に電位が発生するLaAlO3構造の極性と関係するのだろうか?

 絶縁体であるペロフスカイト型酸化膜は、Siの代替物と考えられているわけではないが、Siにはない性質(特に磁力と強誘電性)を具現化しており、おそらく、強誘電体メモリーやスピントロニクスデバイスといった全酸化物デバイスに役立つだろう。

 原子レベルの制御で結晶を成長させることや、新たな材料の探求は始まったばかりである。「我々は便利なものを作り出す最初の段階に立ったばかり」とMuller氏は述べる。

分子電子工学

図4 ブレイク接合ベースの単分子トランジスタの単分子を捕えるために使われるギャップ形成を示した概略図

 「局所環境における電子感度は、電子的機能性を分子アーキテクチャに組み込む基礎となる」と、化学の教授で、Dan Ralph氏(物理学教授)とIRGの共同議長を務めるHÈctor D. AbruÒa氏は述べる。同グループは、この感度を利用しようと、界面で電子と光子を輸送することで、ナノスケールでの物質の輸送挙動を理解することに重点を置いている。これは2つのコンタクト間に単一分子を置くことで行われる。

 ブレイク接合(BJ:Break Junction)は分子と接触する電極として使用される(図4)。ナノファブリケーション技術を用い、極小のメタル(多くはAu)でちょうネクタイ構造が作られる。2つのコンタクト間にあるのは、いくつかの分子の単層が吸収される狭い領域である。電流がちょうネクタイ構造を流れるときに分子が吸収され、中間領域が局所的に熱せられ溶かされてギャップが形成される。運がよければ、単分子がそのギャップ間に落ちる。

 機械的なブレイク接合は跳ね橋のようだ。そこでは、圧力量に応じて2つの電極間のギャップが開閉し、その結果、真ん中に存在するものの結合を変化させる。この場合、真ん中に存在するのはC60分子である。CCMRの研究者は、電界効果トランジスタ(FET)ジオメトリを使って2コンタクト間の単分子接合を可能にした。また、ゲート電圧を利用することで、良い状態の分子コンタクトと悪いショートの区別を容易に行うことができた。さらに、IV曲線はゲート電圧に依存し、分子事象の明らかな形跡を示している、とAbruÒa氏は述べる。ただ、それらは実験をより難しくする。なぜなら、いつ分子がギャップにあるかは疑いの余地がないからだ。

 通常、3重結合と結合しているベンゼン環のようなシンプルな有機分子がこうした実験に使われる。問題は、これらの構造からの電子を追加あるいは除去することで、それらが不安定になることである。また、分子は約5Vのバイアス電圧が必要で、数Åまで落ちると、巨大な電界が形成される。

 有機分子の限界を乗り越えるため、CCMRのグループは遷移金属錯体を使用している。それは、中央に金属原子を持ち、複数の酸化状態で安定している分子である。つまり、分子は安定しており電子数は制御可能であり、常磁性あるいは反磁性物質から磁場効果の研究を可能にする。

 分子電子工学の分野において進歩が遂げられているが、応用の段階では制限を課すことになるかもしれない内在的問題がある。たとえば、どうやってこれらのデバイスに増幅作用を得るのか?むしろ、センサーアプリケーションへの応用などの方がこれらの長所から大きな利益を得る。おそらく、驚くほど独特な方法で機能性を加えることができるだろう。


参考文献
1. N. Reyren et al., “Superconducting Interfaces Between Insulating Oxides,” Science, 2007, Vol. 317, p. 1196.

2. S. Thiel, G. Hammerl, A. Schmehl, C.W. Schneider and J. Mannhart, “Tunable Quasi Two-Dimensional Electron Gases in Oxide Heterostructures,” Science, 2006, Vol. 313, p. 1942.

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