Industry Perspective

グローバル化で地域産業振興

[2008年02月号]

By 服部 毅
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 ベルギーの片田舎に、フランダース州(日本ではフランダースの犬で有名なベルギー北部)政府の資金で、同地域にあるいくつかの大学の共同利用施設(クリーンルーム)として、Inter-university Microelectronics Center(IMEC)が誕生したのは、今から20年あまり前の1984年のことである。ルーベンカトリック大学(KU Leuven)のOverstraten教授を初代プレジデントに迎え、所員は同大学を母体にわずか70名ほどだった。フランダース州政府は地域産業振興と半導体人材育成に期待をかけて、同研究所設立に6200万ユーロを出費した。

 はじめの10年ほどは、世界からほとんど注目もされなかったが、研究開発と人材育成両面で地道な成果が実り、1990年代後半からは急成長をとげ、今では、独立系の研究開発組織としては世界最大規模にまで成長した。1)

世界中の研究者で国際色豊か

IMEC全景(中央左手はオフィス棟、手前が本館、その奥に2号館と3号館。中央右手は200mmウェーハプロセス用4800m2クリーンルーム棟、右手奥は新設の300mm用3200m2クリーンルーム棟。その手前で木立に隠れて屋根だけ見える細長い建物は、増加し続ける研究者を収容するために新たに増設されたオフィス棟、4号館。手前左下に、ルーべンカトリック大学工学部キャンパスの一部が見える)

 総収入額は2億4000万ユーロ(2007年)で、そのうち、州政府の補助金は3900万ユーロと全体の16%しか占めていない。残りはIMECが世界中の企業との研究契約や研究成果の対価として稼ぎ出したものだ。2)発表論文数は年間1600件を越え、直近のISSCCやIEDMでもそれぞれ10件以上の発表を行い、日本勢を尻目に世界トップグループに位置する。所員1500名余りのうち、ベルギー人が900名余で最多であるが、この中には修士や博士号を目指す大学院学生が多数含まれる。外国人研究者は世界56カ国から500名を超え,きわめて国際色豊かな陣容となっている。国別では、隣国のオランダ106名、フランス64名についで中国本土から54名という数字は注目に値する。私が初めてIMECを訪問した1986年にすでに中国からの留学生を受け入れていた。「どうして隣国の日本に留学しなかったの?」の質問に、「日本の大学では半導体プロセスの実用的な知識は身に付けられないから」との明快な返事が返ってきたのを今でも覚えている。日本からの研究者は31名で、米国の22名よりも多い。松下電器産業は、IMECのコアパートナーとして2桁の研究者を派遣して主体的に活躍している。

エルピーダがIMECを選んだ理由
 エルピーダメモリも、最近、IMECの研究プラットフォームに参加したが、その理由について、同社社長兼CEOの坂本幸雄氏は、本誌の姉妹誌のインタビューに答えて次のように述べている。3)

 「IMECには、韓国のSamsungや米国のMicron Technology社、ドイツのQimonda社など世界のDRAMメーカーから見識のある技術者が集結している。そこに当社の技術者も参画すれば共同研究を通じていい刺激を受けるだろう」。さらに、日本の半導体コンソーシアムにも言及して、「国内にも政府主導の半導体共同開発プロジェクトなどがあるが、これには当社から一人も派遣していない。開発プロジェクトの目的が明確で無いからだ。当社は資金を調達している。キャッシュフローは企業の生命線であり、大切な資金を無駄遣いすることはできない」と付け加えた。

 最近、IMECだけではなく、欧米のいくつものコンソーシアムが日本への売り込み攻勢をかけてきている。まるで黒船来航を思わせる光景だ。鎖国日本のコンソーシアムは太刀打ちできるのであろうか。

参考文献
1)鉄井亮一:「グローバルなコラボレーションで着実に成果を上げるIMEC」 本誌2007年5月号、pp.9-11.
2)IMEC Executive Seminar 2007 配布資料 (2007年11月、東京)
3)「Q&A 坂本幸雄氏」EDN Japan 2007年5月号、p.30.



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