Industry Perspective

太陽光発電の「不都合な真実」

[2008年03月号]

By 服部 毅
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 地球温暖化の警告書として知られる「不都合な真実」の著者であり、地球環境問題への取り組みでノーベル平和賞に輝く前米国副大統領のアル・ゴア氏が、テネシー州ナッシュビルの自宅での電気浪費を地元民によって暴露されたのは、昨年2月末のことだ。

 ゴア氏宅では、2006年1年間に米平均世帯の20倍以上の電力量を消費していたという。1)ゴア氏お抱えの報道官は、「太陽光発電などのグリーンパワーを買っているはずだ」などとあいまいな言い訳をしていた。しかし、その後あわてて自宅改築にとりかかり、屋根に太陽電池パネルを取り付けるなどして、環境に優しいグリーンハウスが完成したことを3ヵ月後に明らかにした。2)

確実に儲かる売電は投資バブルではないか
 ここで再三にわたり温暖化対策の切り札としてゴア氏側の言い訳に使われてきた太陽光発電は、いまや世界的な大ブームだ。それもそのはず、このところ1桁成長に甘んじている半導体市場を尻目に太陽電池の世界生産量毎年40%を超える成長率で急伸している。3)かつて日本は、長年にわたり太陽電池の生産量、導入量ともに世界トップだったが、すでに2005年にドイツにトップの座をうばわれてしまい、生産量でも欧米にその座を脅かさてしまっている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、太陽光発電の啓蒙書を無料で配布して、国民に関心を呼びかけてはいるが4)、この本をいくら読んでも、太陽光発電が環境・コスト両面で採算に合うとの印象を受けないのは私だけだろうか。

 特にドイツでフィーバーが起きているのは、ひとえにドイツ政府が2004年に「再生可能エネルギー法」を制定して、その一環として、各家庭からの太陽光発電システムからの電力買い上げ価格を通常の電力代の4倍につり上げて、太陽光発電を奨励したためだ。4)「フィードイン・タリフ」と呼ばれるインセンティブ制度が、世界規模の太陽光発電ブームの火付け役になっているのだ。3)NEDO本には、老夫婦が農家の大きな屋根の上に太陽電池を載せて、年金がわりに売電に励む話なども紹介されている。4)ドイツをはじめ、欧州では太陽光発電が確実に儲かる投資対象になっている。そこには、個人はもちろんのこと、半導体製造装置メーカーからの転向組や新興太陽電池メーカーが、インセンティブを山分けしようと群がっている。ブームが去るまでにノーリスク・ハイリターンで一儲けしようと、バブルさながらの光景だ。

本当に地球環境にやさしいか
 太陽電池は、ほんとうに地球環境にやさしいのだろうか。しかし、太陽電池の原材料であるシリコンを電気炉で精製するには莫大な化石燃料を消費する。高純度シリコンはいわば電気の塊だ。太陽光発電自身は、炭酸ガスを排出しないクリーンエネルギーだとしても、電池の原材料を製造する段階ですでに莫大な化石燃料が消費されており、このため、結局は既存の発電によるコストよりはるかに高くついてしまう。いったい何年たったら損益分岐点に到達するのかも明らかではない。装置の故障や素材の劣化も考慮する必要がある。最近は半導体LSI用途のシリコン基板の確保もままならぬほどシリコン結晶の需要が逼迫しており、価格も高騰している。

 太陽光発電技術研究組合のトップは「購入時に単に補助金を出すだけではなく、税制優遇策の導入なども検討すべきだろう」といっている。3)太陽電池ビジネスは経済合理性に乏しいため、補助金や税金にたよらねばならぬ苦しい台所の事情があるのだろうが、むしろ従来の連続線上にはない破壊的な(disruptive)研究を真剣に取り組むべきであろう。5)つまり、これまでのシリコン太陽電池の論理限界を打ち破る新技術開発へのチャレンジである。

参考文献
1)2007年2月28日付け AP電、共同電など
2)2007年6月8日付け AP電、共同電など
3)「脚光浴びる太陽電池」、EE Times Japan 2007年 6月号、pp.44-54
4)「なぜ、日本が太陽光発電で世界一になれたのか」、NEDO (2007)
5)小長井誠、「2050年を見据えた太陽電池技術開発」、SEMI News 2008年2-3月号pp.14-15



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