2006年01月吉日
バッチ式縦型熱処理と90 nm技術ノード以降の アプリケーション向けのBTBASを使用したシリコン窒化膜
ole Porter, Helmuth Treichel, Thierry Lazerand, Martin Mogaard,
Scott Decker and Jeff Bailey
Aviza Technology, Inc.
440 Kings Village Drive, Scotts Valley, CA 95066
Cole.Porter@avizatechnology.com
要約
シリコン窒化膜及び低圧化学気相成長(LPCVD)技術は何十年もの間半導体プロセスの重要な一分野となっています。これらの技術は両方とも進化を続け、ULSI製造の増大の一途を辿る需要と要求に適合してきました。今日のアプリケーションの新たな難題に対応するために、装置、プロセス、及び材料(薬品)は、当初から大きな進歩を遂げてきました。この論文では、縦型熱処理システムでのシリコン窒化膜の成膜について、クロスフロー・ガス・ディストリビューション・システムに焦点を当てて発表します。
90 nm以降の技術ノードでのサーマルバジェットの要求は、サイクルタイムと温度を低減する新しい処理手法を求めています。枚様式装置のサーマルバジェットは、バッチ式システムよりも低いですが、コスト・オブ・オーナーシップ(CoO)では、本来枚様式システムよりもバッチ式システムのほうが低いことが知られています。in-situクリーン、クロスフロー、小又は可変バッチサイズ、及び加速昇温等のバッチ式熱処理の概念に適用されている新しいアイデアは、従来枚様式でしか実現できなかったアプリケーションに枚様式よりもはるかに低いCoOのバッチ式技術を採用することを可能にしています。低温プリカーサーと組み合わせることで、これらの新しい需要に対応できる新型プラットフォームが実現しました。
低温シリコン窒化膜の成膜については、Bis(第三ブチルアミン)シラン、[BTBAS]、及びNH3 を使用して解説します。フローダイナミクスとウェーハ温度のモデリング、反応力学案、及び実験結果を提示します。より完成度の高いLPCVDアップフロー式縦型熱処理システムも解説します。最新装置と今日の半導体製造装置に提供されている各種技術革新のメリットについても解説します。
データはクロスフロー機能を特長とする縦型ミニバッチ熱処理装置がULSI技術のウェーハ間及びウェーハ内均一性に適合していることを示しています。同様に、ウェーハ間での条件を満たしている膜組成特性と均一性は、それ以降の処理ステップや操作に結果としてメリットを提供しています。
はじめに
図1. クロスフロー設計
10年を越す長い間,バッチ式装置は次世代半導体処理の要求を満たすことができない装置と考えられてきました。多くの人々は、300 mmウェーハサイズでは、全ての熱処理(酸化、CVD膜)は枚様式システムで行われるだろうと期待していました。バッチ式システムのデザインが進化しない限り、これは真実かもしれません。しかし、高速昇温エレメント、降温用の強力冷却、及びモデルベースの制御戦略を基礎とする最先端温度制御等、デザインの大幅な変更により、バッチ式システムの能力を予想以上に高めています。90 nm以降の技術ノード向けにBTBAS/NH3 で成膜したシリコン窒化膜のアプリケーションと性能は、縦型熱処理装置のクロスフロー(図 1)能力が、ウェーハ間及びウェーハ面内均一性の要求に適合していることを示しています。
ウェーハ間での膜組成特性と均一性は、ドライ又はウェットエッチング等、それ以降の処理ステップや操作にメリットを提供します。 縦型の大型バッチ式システムは、引き続き今日の90 nm技術ノードでの多くのアニール、酸化、及びLPCVDアプリケーション向けの標準装置であり、FEOL及びBEOLの両方で、大型バッチ式システムは、90 nm以下の形状サイズでも費用対効果が依然として高いと考えられます(図 2参照)。
フローモデリング
図2. アップフローとクロスフローのCoO比較(枚様式装置4 ch)
コンピュータ流体力学(CFD)シミュレーションは、ウェーハ中央部に向かう高流量のプロセスガスに対する要求を確認し、ウェーハ表面上のプロセスガスの流れのパターンを最適化するために、徹底的に活用されました。プロセスガスが直ちにシリコン窒化膜を形成しない場合、時間依存性があるように思えます。ガスがウェーハ上を流れる時、より高い成膜速度が観察されます。ウェーハ上での流れを遅くしてウェーハエッジの周囲に流さないようにすることで、均一性の問題を解決できることが観察されました。この改善に最も貢献したのは、クロスフロー・リアクタです。
標準アップフローの説明
標準の大型バッチはアップフロー・リアクタです。アップフローは、外側の真空チャンバチューブと上部が開放している内側のチューブ・ライナーで構成されます。ウェーハキャリアは処理のために内側のチューブの内部に置かれます。外側のチューブは、フォアライン部品とのプレナムインタフェースに対して密封される真空チャンバを含んでいます。プロセスガスは、内側チューブの下部に導入され垂直方向にウェーハスタックを通って流れます。残りのプロセスガスは内側チューブの上部へ流れ、外側の真空チャンバ/プレナムを通って排気されます。ガスの流れの力学は、圧力降下(下部から上部チャンバ)と拡散(ウェーハエッジからウェーハ中心)によって影響を受けます。 ウェーハ表面での成膜の大部分は、ウェーハ間の反応物の拡散を介して行われます。表面反応ではなくむしろ質量搬送によってより大きく制限されるプロセスでは、膜厚と組成の均一性は、チャンバ圧力(平均自由行程とガスの速度)と表面積(ウェーハの枚数とウェーハ間のピッチ)によって影響を受けます。これらのパラメータを組み合わせて調整することで、半径方向と軸方向のプロセスガス減損を最小限にとどめます。下部から上部への昇温を使用して、膜厚均一性に対するプロセスガス減損の影響を補正します。これは、同様に、温度チルトの大きさに依存する膜組成の非均一性に影響します。
Avizaのクロスフローの説明
アップフロー・リアクタと同様に、クロスフローは、外側の真空チャンバとウェーハキャリアをその内部に置いた内側ライナーを内蔵しています。クロスフロー・ライナーは上部で密封され、ガスの流れの方向を操作できる内側チャンバを構成します。インジェクタアセンブリは、ライナー上に縦方向に置かれ、反対側の排気口は180℃でライナー壁面内に位置しています。プロセスガスは、これらのインジェクタを通ってチャンバに導入されるので、チューブの上部から下部に均等にガスが分配されます。圧力降下は、アップフロー設計では軸方向なのに対して、クロスフロー設計では半径方向です。これによって、インジェクタからガスを排出させ、ウェーハ表面を横切って、排気口を通して内側ライナーから出ることを可能にしています。ウェーハ表面全体だけでなく、リアクタの縦軸に沿って、一定のガス濃度が維持されます。リアクタに沿った軸方向の圧力降下がないことで、温度チルトを必要とすることなくウェーハ間で均一な成膜速度を提供することができます。その結果、クロスフロー・リアクタでは、全てのウェーハは同一条件で処理されます。排気口は、分配インジェクタアセンブリの反対側、ウェーハキャリアに隣接して配置されています(図 1参照)。
実験及び結果
全ての実験で、BTBASはベーパードロー(vapor draw)によって供給されました。代表的な成膜条件は、35-l00 sccmのBTBAS流量、2:1から8:1のアンモニアとBTBASの混合比、及び300-500 mtorrの総圧力で構成されました。シリコン窒化膜の成膜温度は525℃-650℃でした。
活性化エネルギは、55.4 kcal/moleと計算されました。ジクロールシラン/アンモニアによる成膜の同様の分析では、活性化エネルギは36 kcal/moleとなります[3]。結果として、クロスフロー・アーキテクチャは優れた膜の均一性(図 3)と成膜速度(図 4)を提供することがわかりました。
図3. BTBAS 窒化膜の300 mmウェーハ上での 均一性結果(アップフロー対クロスフロー)
図4. BTBAS 窒化膜の300 mmウェーハ上での 成膜速度の結果(アップフロー対クロスフロー)
図5.成膜速度とウェーハ面内均一性に対するNH3 /BTBAS混合比と圧力の影響を示すDOE動向プロット
シャロージャンクションとゲート長の低減によるサーマルバジェットの制約によって、多くの幅広く使用されているCVD膜は低温を必要としています。当社のクロスフローBTBAS 窒化膜の開発作業でも、成膜速度を他のプロセス変数を使って最大限に高める一方で、成膜温度を最低限にとどめました。ウェーハ面内及びウェーハ間の膜厚均一性と成膜速度は、いくつかのDOE作業で評価しました。圧力、総流量、及びNH3 とBTBASの混合比は最適化されました。図 5に示すように、成膜速度とウェーハ面内均一性は、NH3 とBTBASの混合比と圧力に対して同一の応答を示しています。NH3 とBTBASの混合比が増大すると、ウェーハ面内均一性と成膜速度が低下します。一方、圧力が上昇すると、ウェーハ面内均一性と成膜速度の両方が増大します。
図6: クロスフロー・バッチ・システムのウェーハ間及びウェーハ面内均一性。<1% 1σ 均一性
これらの応答はバッチ式熱処理システムでは、様々なレベルで正常です。クロスフロー・リアクタでは、NH3 とBTBASの混合比と圧力に対するウェーハ面内均一性の応答はアップフローと比較して最小となります。 このクロスフロー属性を利用して、ウェーハ面内均一性を改善する一方で、成膜速度を従来のアップフロー・リアクタをはるかに凌ぐレベルに最大化することができます。従来のバッチ式熱処理システムでの BTBAS窒化膜の成膜速度は、2-4 Å/分です。一方、Aviza のクロスフロー・リアクタの成膜速度は12-14 Å/分と大幅に向上しています。 図6 のチャートは、300 mmウェーハでの均一性の結果を示しています。
最適化されたプロセス成膜温度は570℃です。5ゾーンヒータの設定値はクロスフロー・リアクタでは均等に570℃に設定されます。1.86 ±0.004の均一なRIがバッチ内の全てのウェーハ上で測定されます。応力は引張応力で、通常1.4 GPaです。カーボンと水素の濃度は、各々RBSとHFSを使用して測定されました。>10 at. pct.の水素濃度が測定されました。カーボンは10 at. pct.存在していました。
従来ウェットクリーニングには、8-16 時間のダウンタイムを要していました。従って、In-situ クリーニングは、石英壁面に堆積した高応力を持つBTBAS窒化膜では不可欠です。枚様式チャンバと同様に、チャンバ壁面から剥がれ落ちる膜のパーティクルを制御するには、頻繁なクリーニングが必要になります。チャンバの定期クリーニングのフッ素ソースには三フッ化窒素(NF3)を使用します。NF3は、安全とCoOの両面で、多くの熱により活性化されたクリーニングに最適なケミカルであることが確認されています[6]。堆積した膜をチャンバ壁面から迅速にエッチングすることで、良好なエッチング選択比が達成されます。
結論と展望
本論文では、バッチ式熱処理リアクタが90 nm技術ノード以降でも引き続き使用できることを実証しています。改善されたガスの分配機能と温度制御を組み合わせることで、バッチ内の各ウェーハで同一の膜質を提供することができます。この重要な成果によって、最先端処理においてもバッチ式システムを引き続き使用でき、そして枚様式システムのメリット(短いサイクルタイム、in-situクリーニング、ウェーハ間均一性、及び低サーマルバジェット)をバッチ式リアクタ(内)で達成することができます。現在のハードウエア設計では、良質のDCS窒化膜を630oC(以下)で、BTBAS 窒化膜を550oC から575oCで成膜することが可能です。このプラットフォームの固有の利点を活用して、Aviza TechnologyはDCS窒化膜の膜質の利点を組み合わせ、BTBASとHCDベースの窒化膜で各々観察されるカーボンと塩素の存在を解消する新しいプリカーサー(Satin™)の使用も提供しています[4, 5]。このプロセスは、515oCから600oCの温度範囲で>2 から >18 Ang/分の成膜速度で使用することができます。これは、90 nm以降の量産向けCVDアプリケーションで最先端(クロスフロー)バッチ式システムの大きな可能性を実証しています。
謝辞
著者は、Aviza Technology の技術スタッフの献身的な努力と支援に対して深く感謝の意を表明します。
Satinは、Aviza Technology, Inc.の商標です。
著者略歴
Cole Porter : Aviza Technologyのアプリケーションラボのマネージャー、主にアップフロー及びクロスフロー製品のBTBASに関する開発活動の管理を担当。縦型熱処理プロセスの開発で16年の経験を有する。SVG Thermco 部門と ASML Thermal 部門で各種技術職を歴任。
E-mail: Cole.Porter@avizatechnology.com
Helmuth Treichel :ドイツのイスナーにあるAcademy of Science and Technologyで化学工学の学士号を取得、現在Aviza Technologyでプロセス技術担当取締役。
Thierry Lazerand : フランスのリモージュにあるUniversite des Sciences で材料科学とセラミック材料で学士号を取得、現在Aviza Technologyのプロダクトマネージャー。
Martin Mogaard :カリフォルニア州アルカタのフンボルト州立大学で環境資源工学の学士号を取得、現在Aviza Technologyの研究開発技術者。
Scott Decker :ジョージア州アトランタにあるジョージア工科大学で宇宙工学の学士号を取得、現在Aviza Technologyのプロセスエンジニア。
Jeff Bailey :バークレーにあるカリフォルニア州立大学バークレー校で材料科学と工学で博士号を取得、現在Aviza Technologyの技術研究開発部門のマネージャー。
参考文献 >>
A.K. Hochberg, D.L.O'Meara, "The LPCVD of silicon oxide films below 400oC from liquid sources," J. Electrochem. Soc., Vol. 136, p. 1843, 1989.
R.K. Laxman et al., "Low-temperature LPCVD silicon nitride using a chlorine-free organosilicon precursor," VMIC Proceedings, p. 568, 1998.
K.F. Roenigk, K.F. Jensen, "Low-pressure CVD of silicon nitride," J. Electrochem. Soc., Vol. 134, p. 1777, 1987.
"Turning the heat down," H. Treichel, C. Porter, K. Williams, B. Jurcik, A. Misra, European Semiconductor, 02/2005.
"Advanced Materials Batch Processing," H. Treichel, J. Owyang, T. Lazerand, EMPI, Korea 03/2005.
D. Foster et al, In-Situ Process for Periodic Cleaning of Low Temperature Nitride Furnaces, ECS Conference, 10-14-2003.