環境半導体で世界に貢献する日本半導体産業

ジェイスター株式会社 代表取締役 豊崎 禎久

[issued: 2008.10.03]

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    地球温暖化防止の切り札は、環境テクノロジー
     地球温暖化は、自然の生態系などに悪影響をおよぼし、人類生存の危機にも直面する深刻な問題である。この地球温暖化の最大の原因とされるのが、二酸化炭素(CO2)である。ある統計資料によれば、日本全体で排出されているCO2の1割が、自家用自動車によるものらしい。産業革命の当時の1886年に、ドイツのダイムラーとベンツにより、現在のガソリンエンジンとほぼ同じ形式が完成し、フランス、イギリス、米国などで、今日に通じるガソリンエンジンの自動車の生産が始まった。自動車の歴史は、120年を過ぎた。2007年に、日本の自動車メーカーは世界一となり、実質的に自動車大国ニッポンとなった。その隠れた立役者は、高品質の環境半導体を提供する日本の半導体企業である。グローバル化する自動車産業界は、更に発展をするだろう。今後、自動車の消費市場の主役は、中国・インドなど資源保有国の新興国であり、その背景には、著しい経済発展と人口増加がある。そして、新興国の政策は、単なる消費市場の創出でなく、将来を見据えた自国内での開発・生産拠点として、新興企業の育成に余念がない。これら新興国の企業は近い将来、日本の自動車産業界にとって、脅威の存在となろう。

     また、自動車産業界は、地球温暖化という環境問題とバイオエタノール燃料に起因する食料危機など大きな問題にも直面している。日本は、2008年7月に開催される主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)の議長国である。世界の温室効果ガスの排出量を2050年までに半減させるには、先進国は60~80%の大幅削減が求められている。最新の国際エネルギー機関(IEA)の「エネルギー技術予測」に報告書によれば、世界各国の政府が現行の経済・産業政策を維持した場合、2050年までに世界のCO2排出量は130%、原油需要は70%増加する可能性があるという驚くべき見通しを示した。この報告書には2050年までに、CO2排出量を半減させるためには総額5兆米ドルの投資が必要となり、具体的には今後15年間にCO2排出抑制技術開発にかかるR&Dの試算費用は、年間100~1000億米ドルである。CO2排出量を減らすため各国政府は、地球温暖化に対する取り組みの協調と地球規模のエネルギー技術革命を実現しなければならない。地球温暖化という地球規模のピンチは、環境ハイテクの先進国である日本には、大きなビジネスチャンスとなろう。

     自動車大国ニッポンが世界に、貢献できる事は何か? これは、日本のハイテク産業界にも問われている命題でもある。地球温暖化を改善するためには、当然ながら、次世代自動車と環境半導体への期待が高まることになる。既に、ハイブリットカーやバイオエタノール自動車は、投機マネー化している原油価格の高騰を追い風に急速に普及が進んでいる。トヨタ自動車が、世界に先駆けて開発・販売したプリウスは、名実ともに、ガソリンと電気のハイブリッドカーの代表格である。ハイブリッド自動車は、アイドリングがないことや、停止する際に発電モーターを回して発電し運動エネルギーを再利用するなどにより、燃費は従来型のガソリンエンジン自動車の2倍である。そして、地球温暖化の原因であるCO2を半分にし、酸性雨の原因となる窒素酸化物を10分の1に抑えたハイテク低公害自動車なのである。ハイブリットカー・電気自動車の環境テクノロジーを多く保有するのは、日本企業である。日本企業が持続的成長かつ発展に、世界の自動車市場をリードして行くためには、世界に尊敬され、貢献出来るビジネスモデルを構築することが急務であり、レアメタル・レアアースなど資源確保と節約する中核の技術となる地球に優しい環境半導体は、電子機器/自動車産業界には必要不可欠である。

    地域~食糧~エネルギー~自動車/電子機器~半導体のサプライチェーンが繋がった
     世界中に、食料危機の懸念が広がっている。これも、地球温暖化の影響である。中国・インド・ブラジルなど新興国の経済成長や発展途上国の人口増加で食料需要が増加している上に、トウモロコシなど穀物をバイオエタノール燃料に、振り向ける動きが強まっているためである。地球温暖化が食料生産に与える影響も心配である。食料の自給自足率が39%と先進国中、最下位である日本は、将来に向け安定供給のための戦略を迫られている。

     2008年5月、果汁飲料の値上げ発表が相次いだ。オレンジの産地である米国フロリダ州が、ハリケーン被害に遭い、ブラジルでバイオエタノール燃料用のサトウキビを生産するためオレンジ畑が、次々に転作されているからである。2007年1月、米国大統領は、トウモロコシを原料にしたバイオエタノールなどの代替燃料を年約1300億リットル供給する国家の目標を掲げた。原油の中東依存からの脱却を目指す安全保障戦略である。全米では、約200カ所を超えるバイオエタノール工場が稼働しており、バイオエタノール燃料産業は、米国の農業を支えている。トウモロコシのバイオエタノール燃料の使用量は、2002年の10億ブッシェル(約2540万トン)から、現在は収穫量の24%に当たる31億ブッシェルへと急増しており、初めて燃料用が輸出を上回った。米国は、貿易量の6~7割を占める世界最大のトウモロコシ輸出国であるが、55~60%に今後低下すると見ている。これが、トウモロコシ価格上昇のメカニズムの大きな要因の一つである。実際に、シカゴ商品取引所のトウモロコシ価格は2月に前年のほぼ2倍に達し、その煽りは諸外国にもおよんでいる。トウモロコシを主食とするメキシコでは、抗議デモや暴動が起きるなど社会問題に発展している。家畜飼料の穀物価格も上がり、日本の畜産農家や一般家庭の食卓も直撃している。オーストラリアは、大干ばつに見舞われた。その結果、小麦の生産量は前年比57%減の不作となり、国際価格を大幅に引き上げ、干ばつに強い遺伝子組換えの食用小麦の栽培も容認されつつある。

     地球温暖化の問題は、干ばつ、洪水、海面上昇などを招き、食料生産にも大きな打撃を与え、国家安全保障にも影響する。最近の穀物価格高騰を背景に、バイオエタノール燃料に逆風が吹き始めた。欧州連合(EU)は、2020年までに輸送用燃料の10%をバイオエタノール燃料とする目標を再検討し、燃料より食糧を優先する方向の議論が前向きに進んでいる。一方、米国は中東原油への依存度を引き下げエネルギー安全保障の強化を図っており、食糧価格への影響は軽微と真っ向から反対している。米農務省は、ブラジル、アルゼンチンなどでトウモロコシを増産する市場調節機能が働くため、2010年以後の価格高騰は一段落するとしている。
     過去、電子機器/自動車産業界とエネルギー問題は、直接的な相関関係は存在しなかったが、現在は食物連鎖のサプライチェーンとして、繋がってしまったのである。人類は、まさにパンドラの箱を開けてしまったと言えよう。このように、世界のマクロ経済と諸外国の情勢を冷静に判断すれば、高付加価値型の環境半導体は、新産業が創出できるのである。今まで、世界のマクロ経済の好・不況に、「一喜一憂」してきた半導体産業界は、地球温暖化の問題を背景に、安定成長が期待できる自動車産業分野に、環境半導体に期待を寄せる日本の半導体企業は多いだろう。

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