2008年は、2001年ネットワーク・バブル以来の景気後退(リセッション)の時期に入り、世界半導体の情勢は、混沌としている。従来の産業構造モデルの電子機器/半導体の予測シナリオでは、半導体企業の巨額な投資リスクは回避は不可能である。その1つの証明として、米国マイクロソフト社の新OS(Windows Vista)に期待したDRAMメモリ企業は、メモリ価格の暴落によってダメージを受け、メモリ業界はグローバルの業界再編まで進んでいる。
このような事が何故起こっているのか?半導体産業界を取り巻く環境とシリコン・サイクルと言われるメカニズムが変調をきたしている。米国のサブプライムローン問題は、エネルギー市場にも飛び火し、世界的な余剰資金がウエスト・テキサス・インターミディエー(WTI)などへ巨額な投機マネーが流れ込んでいる。世界経済の状況から判断すると原油価格は、1バレル45ドル程度が適切であろう。2008年米国の経済全ての経済指標は、下降気味である。米国GDPの低下は、欧州や日本などの経済にも影響をおよぼしている。
しかしながら、経済のデカップリングをもたらすような要因がいくつか挙げられる。それは、中国・インド・ベトナムなどの新興国の経済は痛手を逃れられ、予想以上に世界経済を下支えする可能性が高いが、米国は、依然世界経済の最大の経済消費大国であり、世界経済への影響が無くなることはない。既に、デカップリングが生じているとしても、それはいくつかの特殊要因であり、米国経済の景気後退が穏やかな場合のみに、「限定的に生じる」と考える方が正しい判断だろう。図1と表1は、当社(ジェイスター)の考える2008~2011年の世界半導体産業界のメカニズムと予測シナリオを示したものである。
環境半導体で世界に貢献する日本半導体産業
ジェイスター株式会社 代表取締役 豊崎 禎久
[issued: 2008.10.03]新たな市場原理の理解と市場メカニズムへの対応を
図1 2008~2011年の世界半導体産業界のメカニズム(出典:ジェイスター株式会社)
ポジティブ要因 |
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ネガティブ要因 |
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表1:2008年世界マクロ経済と情勢のシナリオ(出典:ジェイスター株式会社)
2008年世界半導体市場は、1桁台前半の穏やかな成長率となると当社では、予測している。2008年は、「潮目の変わる年」である。2006~2007年世界半導体市場は、NAND型フラッシュメモリの設備投資バブルとWindows Vista OSとデジタル家電への対する過剰な期待による生産と高い需要が背景にあった。電子機器/半導体業界のサプライチェーンにおける半導体の在庫水準は、今年に入りさらに悪化している。当社予測では、2008年世界半導体売上高は、2007年World Semiconductor Trade Statistics (世界半導体市場統計:WSTS)実績2566億米ドルに対して、ポジティブサイドの成長率は、前年比4.4%増の2670億米ドルとなると見ている。電子機器産業を俯瞰すると金額面では、パソコン分野が半導体の最大市場であり、生産台数面では、12億台の数字が見えている携帯電話である。中期的視点では、エンタープライズ向けパソコンは情報セキュリティー強化のためシンクライント化が急速に進み、エンタープライズ向けパソコンのDRAMメモリの搭載率は低下するものと見ている。NAND型フラッシュメモリは、デジタル家電であるデジタルカメラ用カードメモリが主要な市場であり、価格圧力は継続して続く。新しい需要創出アプリケーションは、SDDである。今後については、2009年世界半導体の売上高(ポジティブサイド)は前年比4.1%増、2010年は同3.8%増、2011年は同3.8%増と予測している。
図2:世界半導体市場予測(出典:ジェイスター株式会社)
次に、半導体製品別の予測(ポジティブサイド)では、どうだろうか? 2008年の対前年比の半導体製品別成長率は、トータル・アナログ前年比6.1%、トータル・ディスクリート前年比4.8%、トータル・ロジック前年比4.7%、トータル・モスマイクロ前年比4.4%(MPU、マイコン、DSP)、トータル・モスメモリ前年比2.9%と見ている。図3のグラフから見ても分かるように、一番の振れ幅が大きいのはトータル・MOSメモリ(DRAM、フラッシュなど)であり、リスクの高いビジネスモデルである。逆に、手堅いのはアナログ、ロジック、MOSマイクロ、ディスクリートである。
図3世界半導体製品別売上高成長率 出典:ジェイスター
図4は、半導体用途別構成比率を示したものである。2007年のWSTS半導体用途別比率(実績)を評価すると汎用メモリなど含む汎用半導体が53%、特定用途半導体が47%となっていることが分かる。さらに、特定用途別半導体を市場セグメントと半導体製品別で見ると、無線通信、情報機器、民生機器、車載機器、有線通信の順でシェアが高く、半導体製品別でMOS特定用途ロジック、MOSマイコン+MOS DSP、特定用途アナログ、MOSスタンダードセル/MOS FPLDの順となり、その中でもマイコン分野は比較的投資リスクも低く、持続的な成長も見込める。
図4:半導体用途別比率(出典:ジェイスター株式会社)
図5:パテントスコアを用いた出願人ポジションマップ(出典:株式会社アイ・ピー・ビー)
図6:パテントスコアを用いた出願人ポジションマップ2(出典:株式会社アイ・ピー・ビー)
何故、世界1位のマイコン企業になり得たのか?それは、2003年4月1日に日立製作所と三菱電機の半導体部門の統合によって誕生した強者連合体の企業だからである。日本半導体企業の大型再編の走りでもある。図6は、横軸を「出願日の中央値」に変更して、ポジショニングマップの形成をした。近年のルネサステクノロジのマイコン分野に対する開発の注力度の高さが新製品開発に現れている。この分析結果から分かることは、ルネサステクノロジが2008年5月に発表した「RXシリーズ」のマイコンの新戦略が明確になるだろう。RXシリーズは、旧日立製作所/三菱電機時代の16ビット/32ビットCISC(complex instruction set computer)マイコンであるH8S・H8SX/M16c・R32を統合するアーキテクチャとして開発されている。製品は、RXファミリ化され32ビットの「RX600シリーズ」と16ビットの「RX200シリーズ」のラインナップ化される。ターゲット市場は、RX600シリーズが高速、高処理性能が要求されるOA機器やデジタル民生用機器、車載アプリケーション。RX200シリーズは、低消費電力化を追求する。RX600シリーズで、R32Cを置き換えるために独自のMONOS(metal oxide nitride oxide silicon)型フラッシュメモリをマイコンのエンベデッドメモリとして提供される。このように、知的財産の正しく技術評価する企業戦略と将来象が浮き彫りになる。
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