環境半導体で世界に貢献する日本半導体産業

ジェイスター株式会社 代表取締役 豊崎 禎久

[issued: 2008.10.03]

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    新たなマイコン需要を創出するFlexRay
     今、最も注目されている車載LANインタフェース規格の1つであり、マイコンの有望市場がFlexRayである。自動車の走行に直接かかわる制御を従来のように機械的ではなく電気的に行う。具体的には、ブレーキシステムやステアリングシステムのbrake-by-wire、steer-by-wireなどいわゆるX-by-wireの実現に向かって、不可欠なネットワーク技術を実現する。FlexRayのデータ伝送速度は、最大10Mビット/秒である。この規格策定を進めているのがFlexRay Consortiumである。

      FlexRayは現在,事実上の業界標準規格になることが確実視されている。既に、多くのメーカーが支持しているためである。実際、FlexRay Consortiumには日米欧の大手自動車メーカーや半導体メーカーなどが数十社以上加盟している。2007年にFlexRayを採用した自動車、ドイツBMW社X5が登場した。FlexRay Consortiumとは別の自動車関連の標準化団体として、AUTOSAR(The Automotive Open System Architecture)とJasPar(Japan Automotive Software Platform and Architecture)がある。AUTOSARは、自動車のソフトウェアを部品化し共通化するためDaimlerChryslerやドイツBMW社、Bosch社などの欧州企業が中心となって2003年7月に設立した組織である。マイコンなどハードウエアの違いを吸収する仕組みHardware Abstraction Layerを設け、ドライバ、ソフトウェアやOS上のアプリケーションを構成するソフトウェア部品を再利用することを狙っている。

     これに対して、JasParは、主に日本の自動車メーカーやエレクトロニクスメーカーが2004年9月に立ち上げた組織である。実際にはトヨタ自動車と日産自動車が中心となって設立した。ECUのソフトウェア基盤や車内LANインタフェース規格の標準化を推進するのが目的である。このように、FlexRay Consortium、AUTOSAR、JasParの3団体が目指しているところは、非常に近い。各団体が勝手に活動すると、お互いに似てはいるような仕様になるものの、別々の仕様が策定されてしまう可能性もある。例えばダブル・スタンダード化すると供給先を増やしやすいというサプライヤー側にとってのメリットが薄れてしまう。この3団体は、お互いに協調し合う方向で、仕様策定を進めている。規格争いに走ってしまう電機業界とは違い、非常に良いことである。標準規格が1つという適切な方向に持っていって欲しいというユーザー重視の姿勢である。

     FlexRayでの日本企業の差別化はどうすべきなのか?その答えは、自動車の設計開発の段階で、ものづくりの経験など現場の意見を出来るだけ反映させ、グローバルでの陣営作りを積極的に行うことである。地球温暖化以外にも自動車産業界が直面している問は多い。その中でもエネルギー効率の改善と車載組込みソフトウェア開発の効率化である。増加するECUは、制御プログラムとソフトウェア開発コストの増大となり、ソフトウェア技術者の確保も極めて難しい。多くの電子機器には組込みソフトウェアが入っており、最も進んだ分野がデジタル家電分野である。電子機器に組込まれるソースコードの行数が100万ステップを超えている。ソースコード行数の増加は、2000年以降加速しおり、2007年モデルの3.5G世代携帯電話では1000万ステップ超えている。これは、携帯電話が単機能ではなく、システムの複合化によるものである。自動車産業も例外ではなく、1995年は車両全体で50万ステップであったソースコードが2005年には500万となり、2010年の予測では、1000万ステップになるという。ECUの開発は、ソフトウェア開発工程が全工程の約8割以上を占めている。今後、ECUやマイコン開発は、ソフトウェアの開発量が肥大化し、この問題を乗り越えていかねばならない。

    半導体産業の未来予測図
     従来型の半導体産業は、既に成熟期に入り、2012年以降に新産業が創出される時期がダイナミックな成長サイクルに入ると当社では見ている。日本の半導体企業は、この成長サイクルの大波にいか乗るか?それは、新アプリケーションとデバイスを見つけ出し、新市場を構築していくことである。
    ・地球温暖化問題に対応した環境半導体デバイスの創出
    ・電源効率のよい新パワー半導体(SiC-SBD 、SiC-MOSFET、GaNデバイス)
    ・低消費電力照明(LED、有機EL)
    ・高効率型光デバイスと電磁波フリーの次世代可視光通信
    ・発電効率のよい太陽電池(多結晶型、薄膜型)と新型インバータ
    ・医療機器システム、メディカルデバイス
    ・3次元実装型(TSV、SiP)とハイブリッドMEMSデバイス
    ・デジタル・サイネージ
    ・ASSPを超えたアルゴリズム組込み型AoC(アプリケーション・オン・チップ)

     日本の半導体産業は、デジタル偏重であったが、アナログ半導体、パワー半導体についてはプロセス依存の部分と技術者の経験の依存が大きく、この領域は人材育成が急務である。日本の半導体産業は、微細加工と大量生産モデルだけに頼った産業の時代から、創造的半導体デバイスに環境テクノロジーを知恵として付加し、新しい時代へ方向転換しなければならない。これこそがグローバルで勝つ半導体の戦略であり、環境半導体で世界に貢献出来るビジネスモデルである。

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